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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百六十話 大人の君は

 映像は、突然終わった。

 大人になったシェアトが、ぶっきらぼうな口調と表情で受け答えをしている映像が途切れたのだ。

 これは、未来なのだろうか。


 少しの間を置いて、荒れた映像が壁に再び映し出された。

 先程よりも小さなテレビか何かを映しているのだろう。

 一瞬見えたのは雑然とした部屋の中と、外からの光を一筋たりとも許さない下ろされたブラインドだった。


 そして、何故か妙に緊迫感が伝わって来る。


 カメラを手に持ってテレビ映像を撮っていたのか、手ぶれが酷い。

 テレビ内では重厚な建物の中から現れた人物がいた。

 

 それはやはり、先程のシェアトだった。

 

 だが、先程の様な毅然とした態度の彼はそこにはいなかった。

 顔も酷く汚れ、黒い染みが制服に付いている。

 その上を何かが群を成して飛んでいるのか、影に時折全てを飲み込まれていた。


 彼は下を見ているのか、目が虚ろで何の感情も読み取れない。

 インタビュアーやカメラマン達が一斉に彼に駆け寄るのが見える。

 急に、耳を塞ぎたくなるほどのボリュームで音声が入った。


『戦況はどうなっていますか!? セラフィム大佐! 現場の状況は!?』

『……ここから離れろ、命令だ』

『ゼータの行っていたとされる大量殺戮兵器開発は事実だったということでしょうか!?』


 突然、シェアトの目が見開き目の前にいた美人リポーター達の頭を掴んで下へ叩き付けた。

 直後にカメラマンにも掴みかかり、床に組み伏せる。

 転がるカメラが最後に映したのはあの重厚な建物が、爆発し、そして周囲全てを光で飲み込んだ所までだった。


 耳が痛くなるほどの砂嵐の機械音の後、テレビ画面には何も映らなくなった。

 あれも中継だったのか、ここでこちらの映像も終わった。



「……シェアト……? えっ、どっきり?とかじゃなくて……?」



 それきり、指輪は光を発する事も無く映像をもう一度見る事も叶わなかった。

 寝不足のせいでこんなにリアルな幻覚を見たのではないか。

 それほど信じられない、信じたくない内容だった。


 シェアトが数年後、どこかの部隊の大佐になる。

 これは彼の言っていた特殊部隊なのだろうか。

 制服はまだ思い出せるので、調べようはありそうだ。


 もう一つ、気になるのは『ゼータ』という名称だ。

 爆発したとみられるあの建物が『ゼータ』なのだろうか。

 そこで大量殺戮兵器が研究されていた、と言っていたはずだ。


 これが未来の映像とするならば、過去となる今この時にもその会社はあるのだろうか。

 そして、あの後シェアトは生きているのだろうか。


 この全てを誰かに知らせた方がいいのかもしれない。

 映像を再び見る事は出来ないが、この二つは何か重大な事に思える。


 疑問が、甲斐の行動に歯止めをかけた。

 この指輪は自分に宛てられ、贈られたものだとエルガは言っていた。


 ということは、他の者には話さない方がいいのではないだろうか。

 皆に知ってほしいのであれば、もっと他のやり口もあったはずだ。


 今、一つでも行動を間違えると取り返しがつかなくなりそうで怖かった。

 まずは自分自身で調べてみよう。

 結果次第でまた考えなくてはならない。


 制服のまま外れない指輪を見つめ、ベッドに入る。


 今日も眠れそうにない。

 そう思っていたが、目を閉じると成長したシェアトが浮かんでは消えていき、そしてそのままゆっくりと眠りの波に飲まれていった。


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