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魔法学校に転送された破天荒少女は誰の祝福を受けるか~√8~  作者: 石船海渡
第6章 全ての始まり
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第百四十七話 これはもはや事件です

「……解除が間に合わなかった……。っしょ! っと!」


 まだ煙の上がる床の上で攻撃魔法を解除すると、大きく空いた穴の中へ落ちるように着地して制服を払う。

 後ろではシェアトが無表情で立ち尽くしている。


「わ、わざとじゃない! ……結果的に、穴が出来たってわけね!? もうここまで来たら最後までやっちゃおっか! あれれ、ちょっとどこ行くの。女の子一人じゃこれ深く掘るの大変でしょうが」

「……拳で床に穴を空ける奴の事は女の子とは言わない。離せ! 俺は退学になりたくねぇんだよ!」

「はぁー!? あたしなんて退学にでもなったらホームレスになるしかないんだぞ!? 分かるかこの身元不明・無職と報道される者の気持ちが!? いやむしろお前なんぞに分かって堪るかあああ」



 穴から這い出た甲斐はシェアトに突進すると逃がすまいとして組み伏せる。



「いけないなあシェアト。いくらカイと二人きりになったのが嬉しいからってこんな大暴れをしちゃあ」



 中々最悪のタイミングで月組コンビが参上してしまった。

 組み伏せられているシェアトは助けを求めて手を伸ばしたが、エルガは一直線に甲斐に向かっていく。

 唯一フルラだけが一瞬心配そうな顔をしたが、彼女の優先順位もやはり甲斐だった。


「あれ、どしたの二人とも。もうとっくに食堂行ってるかと思ってたんだけど」

「う、うん……カイちゃん……。どうしたのは私が言いたいよ……。凄い音がしたから、なんとなくカイちゃんかなって思ったら当たっちゃって……。悲しいやら嬉しいやらぁ……。先生を呼んでる子もいたし、ここから逃げるしかないかもぉ……」

「僕は君のいる所ならばどこでも駆けつけるよ! それを一つ証明出来たんじゃないかな!? それにしてもどうしてこんな事に?」



 ようやくシェアトを離した甲斐は、二人へ実に簡潔に以前ここに穴があったので気になったという話を告げる。



 するとエルガは誰も止める間もなく、美しく背筋を伸ばすと、手を華麗な動作で穴に向けた。

 するとダイナマイトだろうか、誰がどう見てもこれは爆弾だと答えるであろう、火薬の筒が束ねられた何かが数個出現し、導火線に火が付いたまま甲斐の作った浅い穴へ落ちていった。

 そして穴を塞ぐ形で透明な防御膜が出現したのと同時に、目の眩む激しい閃光と地響きが起きた。


「うん、上々だ。ここで良かったのかな? やってしまったなら中途半端よりも最後まで、そしてすばやく撤収さ!」


 ウィンクをするエルガに、甲斐はニヤリと笑うと拳を合わせまだ黒煙の上がる穴の中へと飛び込んで行った。

 フルラは慌てて中を覗きこむが、立ち上る煙にやられて激しく咳き込んでいる。


「あ~あ~あ~あ~。俺知らねぇぞ……。おい!面倒な事になる前に早く上がって来い! なんか見つかったか!? マジでシャレにならねえって!」

「ん~……あっ! なんか、あったかも……。なんだこれ……?」



 ざわつく声があちらこちらから近付いて来ている。

 このままでは現行犯で処罰を免れない。



 しかし、エルガは微笑んだまま腕を組んでおり、フルラは心配そうに穴の中を見ようとしてはまだ煙にやられているのか目を擦っている。

 痺れを切らしてシェアトが穴の中に上半身を乗り出してそこにいた甲斐に手を伸ばす。



「石でも土でもなんでもいいから、適当に見つけたもん持って上がって来い! 心残りがあるならまた夜にでも、この床ぶっ壊してやるから! ほら!」



 何かを手に乗せて観察している甲斐に、怒鳴りながら限界まで手を伸ばすとようやく何度か辺りを見回してから真っ黒になった手で握り返してきた。

 力を込めて引き上げるには甲斐は十分軽く、余った反動で後ろに倒れる。



 すかさずエルガがフルラに指示を出す。



「フルラはカイに、僕はシェアトに。自分を含めてステルスを。詠唱は分かる? 不安なら僕に続いて。念の為詠唱してあげるよ。いくよ…… 全てを約束の時に返そう・それまでは力を借りよう・その指には空との約束を」



 フルラの為に詠唱を破棄せず、ゆっくりと唱え出した。

 フルラがエルガよりも少し遅れて詠唱をすると、自分の指も、髪も色を失い、そして消えていく。

 どうやらうまくいったようで、互いが薄れていくのを甲斐とシェアトは同じような顔をして最後まで見つめていた。



「ふぅ……皆、お互いが見えないと思いますが気をつけて進んでくださぁい~。あとは人にぶつからないようにお願いします!」


 あちらこちらから集まってきた人を避けながら進む。

 外まで抜けると二人はそれぞれの魔法を解除し、ようやくお互いの姿が見えるようになった。

 誰からという事も無く、自然とハイタッチをしながら四人は少しばつが悪そうに笑い合った。

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