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第百十話 彼女は何処へ消えた

 誰も、何も話さなくなってしまったがそれは甲斐のせいでは無かった。

 世界魔法防衛機関がどういったものかを知らない者こそ、この世界では余りいないだろう。


 全世界を守り、何かあった場合にはこの学校を運営している統制機構へ報告し、処理するように指示を出すのもこの防衛機関である。

 圧倒的な力を持ち、この機関のおかげでこの世界は守られていると言われている。

 防衛統括指揮長官、通称『防衛長』と呼ばれる最高権力者には、代々ナヴァロ家が就任している事もまたよく知られた事実である。


 現防衛長は甲斐の言う通り、ビスタニアの父であるサクリダイスが就任していた。



「サクリダイスは昔から頭の切れる男だった。彼もこの学校の出身でな。……思い出話は今度じっくり語り合おう。その彼は、カイを従来通りの方法で消してしまう事を望んでいる」

「それで断れなくてカイを日本に強制的に送った、って事だろ? 校長、あんたまさか言い逃れしようとしてないよな? だとしたら、俺はこの場でカイを連れて学校を出て行くぜ。時間の無駄だ」

「若いというのは短気なものだな、もう少し話を聞いても君の無駄にはなるまい。忍耐力を付けるのも大切な事だ、なあミカイル」


 ここに来た時から微笑みを絶やさずに、ランフランクの話を聞いていたエルガは名を呼ばれても微動だにしなかった。



「いえいえ、忍耐力がある彼など気味が悪くていけませんね。僕の様に気品漂う余裕も無いと」



 このやり取りを一人緊迫した面持ちで聞いているのはルーカスだった。

 シェアトの発言にも肝が冷やされるが、エルガの笑顔の裏を読んでいるランフランクにもやはり油断が出来ない。

 更に気を引き締めさせられる。


「さて、そこでだ。もう一人のカイについての調査を私が請け負った。そしてここにいるカイへは注意を外さぬようにとの条件が付され、情報を集めるようにと。そして私は、しばらくもう一人のカイについて調べていた。その間にどうにか君を帰すことが出来ないか尽力していたのは本当だ。しかし、その方法よりも先にもう一人のカイを見つけてしまうのが先だった」

「どうだか! そんなの何とでも言えるよな! おいカイ、あんまりなんでもかんでも信じるなよ」



 ランフランクに犬歯を見せつけるようにして、攻撃的に噛みつくシェアトに甲斐は驚いている。



「どうしたのシェアト…… 捨てられた子犬の心理状態なの? この薄汚ぇ犬が!」

「なんでお前は俺に対してだとあの手この手を使って罵倒してくるんだよ」

「ああもう、シェアトもカイも静かに!」



 唯一の良心となっているルーカスが場を静め直さないと、この二人はいつまでもこの調子だろう。



「続けよう、見つけたと言ったがそれはあくまで情報としてである。住所、そして年齢、名前さえもここにいる彼女の物と一致していた。だが、彼女はどこにもいなかった。……この意味が分かるか?」



 エルガの口の両端が上へと伸びていく。

 ランフランクの質問に答えたのは彼一人だった。



「もう一人のカイは、この世界から消えていた。という事でしょうか?」

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