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第百四話 問題教師の使い方

「ストゥー先生、ちょっと急ぎでお話が!」


 朝食に向かおうとしているストゥーを呼び止めると、予想に反し、人の良さそうな顔でこちらに向かってくる。


「おはよう、どうしたんだい?三人とも、頭に雪が積もっているよ、手が冷えてはいけない。私が払ってあげよう! おや……?なんだ、いつも一緒の美少女達はいないのか。 頭のそれフケ?汚ないなあ……近寄るなよ」


 急に笑顔を引っ込ませると、だるそうに大きな欠伸をした。




 そう、ストゥーはこういう男である。




 女子には非常に甘いのだが、男子には妙に冷たい。

 ここまではっきりしていると逆に清々しい気もするが、今回に関しては一か八かだった。


 出来ればシャンのような、教員にしては少々頭の歯車が錆び付いているような人物を狙って頼もうとしていたが、一向に現れなかったのだ。



 今日一度目の帰省は朝食前には終わるはずだ。



 帰省させる為に全スポットに教員が配置に付いてしまうのは昼前、それまでにどうにか話をつけないと人前でこんな話が出来るはずが無かった。


「男子の顔を見ているなら嫌いな食べ物を見ていた方がましだよ、じゃあね。ああ、朝から男と話すなんておぞましい……。それにしてもどうして教員は生徒達の席に混ざれないんだろう……」

「お待ちください、ストゥー先生。クリスとカイとフルラの事で相談が」


 動きが、止まった。

 そこでエルガは饒舌に畳み掛ける。


「それがですね、最近彼女達の仲に亀裂が入ってしまいまして……。その理由というのが、非常に言いにくいのですが先生! 貴方のせいなんです!」

「それは……一体どういう意味だい?」


 食いついた。

 この瞬間をエルガは待っていたのだ。


「それがですね、先日カイに教材を渡しに行かれた時からなんです。食堂の時点でクリスは不機嫌になり、フルラもどこか浮かない顔をしていました。そしてカイが戻って来た後、喧嘩に発展したのです。それもこれも、先生の取り合いです。嫉妬からなのです! 二人きり、という点が火種になりまして……! 一度は仲直りしました、先生はやはり皆の先生だと……。しかしどうです、ちょうど昨日の夜に食堂であろうことかクリスマスの話になったのです!」

「そ、そんな事があったのかい……ああ、私は何も分かっていなかった。教育者として恥ずかしいよ。しかしそんな喧嘩をするなんて、やはり可愛いレディ達だ。キャットファイトは人生のスパイスだな。それで、クリスマスの話はどうなった?ん?」



 シェアトとルーカスは直感した。

 カモとはこういう奴の事を言うのだろう、と。



「誰が先生と過ごすか、です。皆さん先生方は帰省出来ないので学校に皆残りたがりました。しかし、クリスとカイの言い争いに熱が入り、カイは怒って日本に戻ってしまいました。ああ、フルラは諦めたようです。 しかし! 最も深く傷ついているのはクリスです。部屋に昨夜から閉じこもったままで、僕らではどうしようもないんです……。先生、僕達がカイを日本から連れ戻すのでクリスをお願いできますか?」


 ストゥーは貧血を装い、目元に手を当てて黙り込んだ。

 しかしそれはクリスと甲斐、どちらの方が可愛らしく、自分のタイプかを天秤にかけているのだろう。


「私が原因にあっては断る事などできまい! それで……その、クリスは部屋に閉じこもっているのだったね?」

「はい、仰る通りです先生。なので早く行ってあげた方がいいかと。おっと、その前に僕達を日本に送って下さい。住所はここです」


 ルーカスから受け取った住所を書いた紙を差し出すと目を通した。

 するとすぐに三人の足元に大きな魔方陣が浮かび上がる。

 そして一瞬強い光を放った後、三人は即座にまとめて日本へ送られ、そこには凛々しい顔をしたストゥーのみが残っている。


 そして身だしなみを整えると、クリスのいる星組の寮へと向かって歩き出した。

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