第百三話 見つけました、姫
東館の前にはもう、ルーカスとシェアトが地図を数冊持って待っていた。
どうやら目当ての物はこれで全て揃ったようだ。
早速シェアトの部屋に戻り、知書室から借りてきた日本地図を広げる。
そしてその上にエルガが持ってきた校内の地図を載せ、作成者であるルーカスが詠唱を始めた。
「主は何処へ消えた・この空続く大地・根付くもの全てに問おう」
皆息を呑んで見守っている。
三人は夜通し作戦を練った結果、まずするべき事は甲斐の安否を知ることで一致した。
その為には以前甲斐にポイントを合わせた地図が無くてはならなかった。
本人にも追跡魔法を掛ける必要がある為、追跡マップを作成することが出来なかったからだ。
もしもこの日本地図に人影が現れなかったら、日本ではない場所に飛ばされているはずだ。
その可能性も考え、一応世界地図も持って来ている。
しかし、世界地図にも人影が出ることが無かった場合、それは無事ではないという事となってしまう。
息を呑んで結果を待つ。
すると何処にもいなかったはずの小さな人影が日本の上部にある離れた大陸に現れ、歩くモーションで中央から少し左へと移動していく。
ようやく立ち止まり、手を振っている都市を急いで詳細地図で探す。
甲斐の無事が分かり、思わず笑顔がこぼれた。
次は今いる場所を探さなければならない。
彼女が前の世界で住んでいた場所は日本としか聞いていなかった為、住所を知っているのはランフランクのみとなってしまっていた。
まさかランフランク張本人に聞くわけにもいかないので、こうして地図の範囲を日本全体から、その都市へと狭めていき、特定しようとしているのだ。
「はい、次はこの地図だ! 区が分かれまくってるね……」
「どんどん特定出来てるぞ! 西区だ! ほら早く範囲拡大かけろ!」
シェアトが急かし、それにルーカスが必死に応える。
「さあ、カイが無事なのも分かったしそろそろ二人とも、遠慮無く僕の苦労に対しての労ってくれてもいいんだよ! 甲斐の為だから仕方ないにせよ、 絶対に逃がさないようにって言うから二時間もフルラが現れるのを外で待たされたんだ! 初デートの待ち合わせでも多少心が折れるよこれは!」
「おい、カイが無事だったんだ! どこにいるか黙って人影を目で追えよ! それにこれから連れ戻しに行くんだ、あいつに直接今の台詞を言ってキスでもハグでもしてもらえ」
「ええ!? ディープキスに夜のハグだって!? いいのかい!?」
どんどん会話のボリュームが上がっていく二人に、ルーカスの我慢は限界だった。
「詠唱に君の声が入り込むんだよ! 邪魔しないでエロガ!」
「る、ルーカス!? 今、君僕の名前間違えなかったかい!? それも凄く悪意に満ちた形で!」
「よし……住所は書いた、この家だ! 行くよ皆! シェアト、カイの事だし移動しかねないから地図持って!」
どたばたと部屋を出て、三人はスポットを使った外出の申請を上げに行った。