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声も姿形もそっくりな、偽物の家族に外の世界を奪われた。
あの日、家族みんなが寝静まった後、私たち家族が家に帰ってくる音がした。
確かに、私たち家族なのだ。話し声も、階段を上がる音も、家族のものと同じなのだ。
鍵が閉まる音がした。
私は息を殺して静かに気配を消すようにじっとする。
これは、夢なのだろうか。
家族はリビングでまだおしゃべりを続けていて、私の部屋まで来る気配はなかった。
気付いたら朝だった。夜中のことはすっかり忘れて、リビングへ行くと、家族がいた。
でも、おかしい。
母も父も姉も2人ずついるのだ。
まだ夢でも見ているのだろうか。
「おはよう、夢じゃないわよ。」
後ろから私の声がそう言った。
振り返ると、私がいた。
「今日から、私たちがこの家族として暮らすから、あなたたちは家の中にいてね。」
そう言って、偽物の家族たちは、それぞれ仕事や学校へ出かけてしまった。
本物の母も父も姉も私と同じで全く理解できてないようだった。
あの偽物の家族の目的は何なのか、彼らは一体誰なのか、何なのか、わからないまま、時間だけが過ぎていった。