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乙女ゲームのヒロインになったようです~死が2人を分かつとも

作者: みかん

 普通の専門学校生だった私は驚愕していた

 事故にもあっていない、死んだ記憶もない、魔法陣も白い部屋もなかった




 たぶん乙女ゲームのヒロインではないかと思うこの状況

 どうしてこうなった




 私はいま、貴族の通う学校にいる

 目の前には顔の美しい男性がいっぱい


 そしてちょっと懐いただけで簡単に群がる美しい男達

 チョロすぎる

 まぁ【お貴族様】とはいえ若い男だからなー

 刺激に弱いのであろう


 うーん


 個人的には渋いオッサンが良いんだけどなー

 男は30歳から!

 笑いじわとか、白髪まじりの髪とか、眼鏡とか。眼鏡とか!

 大事な事なので2回言いました


 イケメンと周りの呼び声の高い先生も20代だろうし

 カッコいいと聞いた校長先生も見た目20代……そりゃないだろう

 私の期待を返せ


 年輪を重ねた円熟した大人の余裕とか

 その余裕を私が崩して溺れさせた時の可愛いリアクションとか

 そんなギャップが良いんじゃないかー!


 でもそんな人がいないなら仕方ない


 イケメンはイケメンで目の保養になるから周りにいるのは良いよね


 イケメン1は王子様らしい

 キラキラ金髪、アクアマリンの瞳に白い肌

 ちょっとワガママだけどぼっちゃんだから仕方ないよね


 イケメン2は侯爵の御子息様らしい

 サラサラ銀髪、ブルーグレーの瞳に白い肌

 影があると言えば聞こえが良いけど要は中二病だと思う


 イケメン3は隣の国からの留学生らしい

 ツヤツヤ黒髪、黒い目と浅黒い肌

 イケメン1に輪をかけた俺様。ワイルド系だね


 イケメン4は宮廷薬師の御子息様らしい

 やわらか茶髪、トパーズの瞳に病的に白い肌

 子犬系ですね。それもキャンキャン吠える方じゃなく気弱なほう


 イケメン5は騎士の御子息様らしい

 ツンツン青い髪……青い髪?! 本当に地球じゃないんですね

 エメラルドの瞳と少し日に焼けた白い肌

 典型的なスポーツマンて感じの人ですね。


 乙女ゲームなんてやった事がないからよくある小説のように

 「ここは××の乙女ゲームの世界ね」

 とはならないけどね。


 チヤホヤされていたある日、きましたきました


「ちょっとあなた。少し図々しいんじゃありません? 」


 たくさんのお姉さまがた登場です


「あの方達には婚約者いらっしゃるのよ」

「品性に欠けると思いませんの」

「複数の男性と仲良くなさるなんてやっぱり庶子は」


 こんな時は反論しないのが一番です

 女の集団に口ではかないません


「申し訳ありません。この中に婚約者の方がいらっしゃるんですね」


「「「「「っ?! 」」」」」


 あーいないんですね。あれですね、

 ××ちゃんが可哀想と正義感を振りかざす事で、本当は自分の不満をぶつけるアレ


「当事者同士のお話なので、私はこれで失礼します」


 にっこり笑って退散です。



 それにしても良いですね乙女ゲームは平和で



 これが地球なら便器に顔を突っ込ませようとしたり

 他の男を使って私を便器にさせようとしたり


 自分の正義を貫こうとする方々は本当に残酷ですからね


 自分の正義に添わない人は悪で

 悪に対しては何をしても良いという傲慢

 本当に反吐が出る



 とりあえず自衛の為に出来るだけ1人にならないようにしましょうか





 イケメン1が癇癪を起こしてますそっと手を取ります

 振り払おうと一瞬考えた様子があったようですが、王子様として身についた紳士的な行動がそれを許さないようですね。こんな時は言葉は不要です。悲しそうな表情で黙って手を握って寄り添えばオッケーです。リアルなら過剰なスキンシップは身の危険があるのですが、乙女ゲームバンザイです。

 癇癪が別の感情に変質したのを見届けて、にっこり微笑みます。イケメン1が真っ赤になって可愛いですね。


 10代男子のリビドーを煽るのは基本です。



 イケメン2が相変わらずの中二病を発揮してます。憂いのある表情が素敵とか遠巻きに見て言ってる女の子もいますが、ただ自分に酔ってる根暗なだけです。こんな人には理詰めでいくのと褒め称えるのが一番です。

 話を聞くと父親や兄弟と自分を比べて暗くなっていたようですね。長所をたくさんあげて、あなたはこんなに素敵なんだから、他の人と同じになる必要がないと遠まわしな言い方をしてみます。少し立ち直ったようですね。



 イケメン3は笑顔でいっぱい。何も問題は無いようですがかなり策士な匂いがします。なんでそう思うかって? 女の勘としか言いようがないのが難しいところですね。こんな雰囲気の人は心の奥底に大事なものを隠し持ってます。探り出す事はできそうだけど、もしそんな事をしたら結婚までいきそうで怖いです。なので触らないように気をつけながら会話をします。

 この人だけはDT臭がしないのでスキンシップはアウトです。当たり障り無く接しましょう



 イケメン4はおどおどさんですが、こんな人が実は誰よりもプライドが高かったりします。自分の世界を壊される事を恐れているんですよね。やり方としては強引に引っ張り回すか、相手の領域に入るかですね。引っ張り回すのは幼なじみとかが定番の許される行動だと思うので相手の領域に入りましょう。

 にこにこしながら、イケメン4の話をまるで宝物のように聞きます。実際、知らない知識を聞くのは興味深いです。薬学って楽しそうですね。

 上っ面で聞いてるのでは無いことがわかるのか満面の笑みで語る語る。



 イケメン5は脳筋ですね。とてもシンプルです。強くなる事に9割の力を費やしてますね。女性に関心がないわけではないし、付き合うと大事にしてくれるだろうけれど、女が全てにはならない。

 品の良い可愛らしい家庭的な子が好きなタイプですね。手作りのお菓子をあげたり、掃除をきちんとする仕草を見せたり、真面目そうであれば好感度があがる。

 要は、そばにいてくれる女が私ではなくても良い人。好きな人がいてもその人を忘れて近くにいる女を大事に出来る人。一番落としやすくて、一番落とす気持ちがおきない人。好感度だけあげておこう





 身の危険を避ける為に出来るだけイケメンさん達のそばにいる日々を過ごしていたある日

 イケメン先生から呼び出しを受けました

 先生の事務用個室に向かいます


「あー他の生徒から苦情がだな」


 それですか、先生も大変ですね。

 先生の容姿は白っぽい金髪、セルリアンブルーの瞳に眼鏡。眼鏡!

 知的な顔に浮かんだ苦悩

 ごちそうさまです。本当にありがとうございます


 私としてはお友達のつもりであって男女の関係にはなっていない事と、

 身の危険を感じたのでボディーガード感覚もあると訴えてみた


「お前な、王族や高位の貴族をボディーガード代わりって……」


 先生に苦笑されました。


「それなら先生、代わりにボディーガードして頂けます? 」


 一歩近づいてニヤリと微笑みながら、先生の太ももにそっと手をかすめさせます。


「大人をからかうんじゃない」



 効果は抜群だ



 壁ドンです。眼鏡を外して壁ドンです。

 淑女として良くないと説教しながらこの距離ですか、そうですか

 垂れ目と長い睫毛がセクシーです先生


 この状況……味見……出来るな。ごくり。


 出来るけどこの世界でそれをやったら先生と結婚コースか、それは勘弁


 イタズラっぽくチュッとして驚いた所にキュッとしてサワサワってして、生徒に手を出したらとか悩んでる所に畳み込むようにセクハラしていけば火がつくだろうけど……惜しいけど我慢我慢

 禁忌って燃えるんだよね先生。いけないって思えば思うほどね。



「先生こそ生徒をからかっちゃダメですよ」


 ニコニコしてその腕の下からスッと抜ける。





 教室に戻ってから考える。



 この世界って乙女ゲームだよね?

 18禁のエロゲとかじゃないよね?


 その気になったらやれた。あれはやれた。

 実は私はヒロインじゃなくて攻略対象だったオチとかは無いよね?


 

 不安になってきた所にやってきたのはイケメンその1

 あら、珍しく従者もいないんですね



 夕陽が刺すオレンジ色の教室に2人。なんか青春ですね



 イケメン1は私の前に片膝をつけて腰を落とし手を取った


「ミリア……ぼ……私と結婚してくれないだろうか」

「婚約者がいらっしゃるんじゃないんですか」

「彼女との婚約は解消する」


 なんですと!

 戸惑う私にイケメン1は言葉を重ねる


「君といると安らげるんだ。王族は激務だ。私は君を守るから僕の安らげる場所になって欲しい」


 ほうほう、婚約者はかなり出来た人だと。

 王妃になる為にとても努力している

 家の為には頑張ってくれるけれど、王子に対しての愛情を見せてくれない……と


 要約すると

 女はそんなに出来なくて良いから可愛くしていれば良いと


 完全な男性優位社会の考え方ですな 


 そりゃあ親に決められた結婚だし、貴族ともなれば家が優先なのは仕方ないだろう

 淑女教育された人が自分からアプローチなんてはしたない真似はしないだろうし

 王子から何かしてこなきゃ愛情を感じるリアクションを返さないのは当たり前だ

 そして婚約者が王子らしくあれと望むのは当然である。そんな事もわからないのか



 ぼっちゃんなんだなーと、可愛らしく感じた



「私は庶子です。とてもじゃないけど正妃は許されません」

「どうにかする」

「100歩譲っても愛妾にしかなれません」

「ミリア以外は嫌だ」


 本当にわがままだ。でも可愛いわがままだと思う。

 年がそう変わらないのに自分がお母さんにでもなった気分だ。


「それならこうしましょう」


 イケメン1が、私の言葉を待って息をのむ


「もし王子様が周囲に何も言わせないほどに立派な人になって、私がまだ嫁いでなければ……」

「私のものになってくれるんだなマイレディ」


 最後まで言わせろと思いつつニッコリ微笑む。

 イケメン1は私の手に舐めんばかりのキスをする。

 勘弁してくれやめてくれ


 普通に考えれば私が正妃なんて無理な話だ。

 彼が立派になる頃には私は嫁いでる事だろう

 王子もまともにして、国が決めた結婚も破らずに終わる。



 いい仕事をしたぜ


 

 まだ見ぬ王様、王妃様、褒めてくだされ

 幻の汗を拭ってその場から立ち去ろうとすると後ろから抱きしめられた。


 うひゃあ


 油断していたのでそんな声が出そうになる。女として台無しだ。


「愛してる」


 そう言いながら結い上げた髪の後れ毛が残る首筋にキスを……背中に電流が走る

 ゾクゾクッとして変な声が出そうになる。マジヤバい


「お放し下さい」


 私を解放したイケメン1を見ると挑戦的な顔つきをしてニヤリと笑って言った


「これは約束のしるしだ」


 あれ?

 私の方が優位だった筈だよね?




 釈然としないまま寮へ帰宅すると、メイドが私の首筋の赤い痣に気が付いて指摘してきた。

 やられた……しばらくは髪を結えないなとため息をついた。





「髪も結わずに見苦しい」

「まるで庶民の子供のよう。だから庶子は」


「おやめなさい」


 振り向くと、以前に絡んできた女達と知らない美しい女がいた。

 美人さんは青白いと言えるぐらいの白い肌。絹のような淡い金髪は後れ毛ひとつない程に完璧に結われていた。きっちりとしたスキのない完璧な装いをしている。

 どうやら陰口を止めさせたのは彼女のようだ。なぜか緊張した表情を見せている。


 周囲がこちらに注目していた。なぜだ


 美しい彼女はこちらを見ると外見に似合わない柔らかな声で語りかけてきた


「はじめまして。私はアルス殿下と婚約をしているアリス=マキナ=ランドゥルスと申します」


 アルス殿下って誰だ?



 少し考える。



 おぉ、イケメンその1がそんな名前だった。

 しばらく考えている内に周囲がシーンとしている。ヤバい。

 すぐに返事をしないと不敬罪とか言われそうだ


「はじめまして。私はミリア=ロゼ=ファルスと申します。レディファルスとお呼び下さい」


 アリス様の眉がピクリと動いた。周りの女性達もざわざわしている


「子爵の庶子じゃなかったの? 」


 後ろの方からそんな言葉も聞こえるけれどスルーさせて頂こう

 庶子で間違いではないですよ、うん。


 アリス様は何か言いたそうにして、少しためらって……やめたようだ。

 別れの挨拶をしてその場を去っていった。


 参ったなあ

 イケメンさんも観賞用として好きだけど、美人さんも好きなんだよね。

 美人さんの悲しむ顔は見たくないんだよねー。


 出来そうもない条件付きと言えども

 イケメン1とあんな約束するんじゃなかったなと、アリス様の優雅な後ろ姿をぼおっと見送りながら考えた。





 一年後



 イケメン4と楽しく薬のお話をしていたある日の放課後、イケメン先生から呼び出しされた


「王がお呼びだ。迎えの馬車が来ているから正面門までいきなさい」


 思い当たる事は何もない。

 イケメン1が何か言ったのだろうか


 急いで寮に戻り身支度を失礼のないものに整える。

 いざという時の為にと書いた遺書を文箱の一番上に載せて、もし帰って来れなかった場合に家へ持って帰るようにメイドへ言い含める。


 お城について案内された部屋に入る


「申し訳ないが婚約は解消させて頂きたい。責任を持って新しい婚約者をこちらでも探させて頂く」


 おおアリス様じゃないですか。


 そこにいたのは王様、王妃様、イケメン1、アリス様、それぞれの従者たちがいた。

 アリス様を見ると、青ざめてはいるがどこかホッとしたような表情をしている。 

 王妃様はにがにがしい表情をしている。婚約解消に反対なのだろう。


 王様は……うは。ストライクゾーン

 髪と目の色はイケメン1と同じだけど年齢はアラフォーぐらいか?

 少し細身で渋い感じ。眼鏡はかけてないけれどチョイ悪な感じだ。

 この王様を見る為だけに城に日参していいほど素敵


 イケメン1は私を見るとパアッと笑顔に変わった


「ミリア! 」


 その場にいた全員の視線が集まった。

 思わず一歩後ずさる。


 イケメン1は犬のしっぽがついていたらブンブン振られていたであろう勢いである


 どうやら婚約者を変える為に、一年の区切りでどこまで頑張れるかを見せる約束をしていたらしい。姿を見ないなと思ってたら……。少し引き締まった顔は痩せたと言うより、絞った感じだ。

 余計なものを削ぎ落としたような表情には知的ささえ感じる。背も少し伸びた気がする


 10代のリビドーと成長の伸びしろを舐めていたのは私のようだ。


 王妃様は今でもアリス様の方が正妃にふさわしいと思っているけれど、私じゃないと息子をここまで変えることが出来なかったと渋々認める事にしたようだ。

 王様は、過去の王には庶民と結婚した者もいるから最初から気にしていないようだった


 それにしてもアリス様がまだいるのに新しい婚約者の話をするのは無神経じゃなかろうか


 恐る恐るアリス様に話しかけると、どうやらアリス様も転生か何かでこの世界が乙女ゲームだと知っていたらしい。逆ハーコースなら、みんなの前で断罪されて牢屋コースか追放コースだったのでビクビクしてたとか。


 そりゃあ私の行動見てたら逆ハーレムを築いてるとしか見えないわな。

 ただ単に顔が良い人が周りにいると、目の保養になるからやってただけだったんだけどね。


 イケメン1も落とすつもり無かったんだけどなーと思いながら見ると、全く曇りの無い瞳で見つめ返された。



 今後はずっと周囲の人からアリス様と比べられ続けるんだろうなと溜め息をついていると、イケメン1がそっと手を取った。


 大丈夫、君を守るから。公務はしなくていいから。公務の為に妃を娶るのではないから。何の為に外交をする人間がいるのかと。暗殺や権力闘争で明け暮れる貴族社会で君だけが安らぎの場所であって欲しいからと熱く語るイケメン1を見て……うん、まぁ良いか。腹をくくろう。


 あの王様の子供だし、30年計画で私好みの男にしよう。

 仕事が過酷な分、2人の時は甘々に甘やかそう。

 今の時代には流行らないけれど、この男の為だけに生きるのも悪くないかも知れない。


 病める時も健やかなる時も死が2人を分かつとも。








 結婚式の後、私はあの決意をさっそく後悔した。


 これ本当に乙女ゲーム? 

 やっぱりエロゲじゃないの?


 運営なに考えてるんじゃ~ 



 私の心の叫びは閨に消えた





※子爵家の女性をレディ+家名呼びするのは、××子爵の娘ではなく、その女性自身が子爵である場合です

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