4.雪割草
Against ones will Ⅳ
雪割草
【1】
美咲は、職場のデスクにあるパソコンから視線をそらした。少し疲れた目を閉じてから席を立ち、窓の外に広がる景色を眺めた。
窓の外では、桜の蕾がふっくらと膨らみ、あと数日で咲きそうな気配を感じる。その景色を見て、黒崎雫と出会ってからもう一年がたとうとしているのに気付いた。
一年前は、雫と付き合う事になるなんて想像もしていなかった。そもそも出会ってなかったのだから、想像できなくても仕方のない事かもしれない。もし、人の出会いが「誰か」の意図だとするのなら、その人は何を意図に雫と私を出会わせてくれたのだろうか。
たとえばあの時、香月事務所に恋人のフリなんて依頼をしていなかったら、どこかで雫にすれ違っても何もなかったはずだ。
部屋の片隅に置いてある珈琲メーカーに向かうと、豆をセットと水をセットした。スイッチをいれると、コポコポという音と豆の香りがする。
豆の香りで珈琲を淹れてくれる雫の姿を思い浮かべて、ふっと笑みが自然に浮かぶ。
「あ、私も飲むー」
松本梨江は疲れている口調でそう言うと、自分のマグカップを持参してきた。用意のよさに呆れてため息を吐き出す。
この人は面倒くさがりだ。きっと、珈琲が飲みたくなったが自分で準備するのが嫌で、私が動くまで待っていたのだろう。コップを用意して。
「なに?」
「珈琲くらい自分で飲みたい時に、淹れたら?」
「んー…面倒」
そう言いながら、彼女はちゃっかり最初にコップに注いで一口飲む。
「普段より苦い、ちゃんと分量とおりに淹れた?」
「―…あなたが子供だから」
「否定はしないけど、黒崎さんが淹れた方が美味しいよ」
「そうですね、あたたかい気持ちになります。ニヤニヤしてどうしたの?」
「すごく優しそうな表情を浮かべているから。最近、表情がくるくる変わるから見ていて楽しいなって思って♪」
「人をオモチャにしないで」
「面白いから却下」
そう言うと、彼女は自分の席に戻っていった。珈琲メーカーの隣に置いてある自分用の紙コップに珈琲を注いで一口飲むと確かに、普段よりも苦く感じた。
自分のデスクに戻ると、隣にいる梨江が話しかけてくる。
「ね、やっぱり苦いでしょ?」
「……少しだけね」
「愛しの恋人の事を思い浮かべていて、豆が多すぎたんじゃないの?」
「そうかも」
「いいなぁ、仲がよくて。知らない事なんてないんじゃない?」
「それはない、かな。…しゃべってもいいけど、仕事して」
「はぁーい」
デスクに置いてある眼鏡ケースから、ブルーライトを遮断する眼鏡を取り出してかける。さっきまで作業していたパソコンファイルに視線を向けた。
キーボードに手を起きかけ、右手の薬指にはめた指輪を優しく撫でる。
気がつけば彼女は、蝋燭の灯りのような優しさで、じんわりと心をあたためてくれる。隣に居てくれるのが当たり前になった彼女の過去は、ほとんど知らない。過去に触れる事が、心の傷に触れてしまう気がして聞けない。しかし、話してくれない事が寂しく感じている。
目を閉じて深呼吸し、パソコン作業を開始する。何か作業に夢中になっていると、気が紛れるから好きだ。頭の中が整理されて、すっきりするから。
「梨江は、彼に過去が気になった事あるの?」
「んー…『過去』か、どうでもいいかな。今、彼がここにいてくれるが大切だから。過去の出来事があって、今の彼がいる。大切にしたい気持ちはあるよ」
「梨江って、意外と大人だったのね」
「私のこと、何歳だと思っているの?幼く見えても、神崎よりも少しだけ年上だよ。」
「そうでしたっけ?」
「そうです♪」
パソコンを操作する手はしっかり動かしながら、年上かぜをふかしている様子にふっと笑みが浮かぶ。
梨江はすぐに感情が顔に現われているから、子供っぽく見える。けれど、ここは外してはいけないところはしっかり押さえている。いい意味で肩に力が入らないタイプの人間だ。
「…雫さんの過去が気になるの?」
「気になるというよりは、寂しいかな。全部を知る必要はないのは、分かっているけど…なんで笑っているの?」
「可愛いなと思って」
「なんだろ、梨江にだけは言われたくないセリフのような…」
「どうしてよ」
「…さて、次はどれからやろうかな」
「ごかましたでしょ」
答えたくなくてごまかしたのがバレみたいだが、それっきり会話が途切れた。
なんとなく、彼女よりも子供っぽいと思われた気がして言われたくなかった。
あ、ルカが可愛いと言われることを嫌うのはこういう事なのかもしれない。
しばらくして、仕事を終えて眼鏡をはずした。時計を見れば定時まであと10分程度になっていた。
窓の外を見れば、夕日が町をオレンジ色に染めていた。
地面の近くはオレンジ色に染まり、空は夜の気配を感じる。夕日と空の境界線のところは、曖昧に色がまざりあっていて好きだ。
職場の人達は、帰宅する支度を始めている。その中でも梨江は、帰るのが一番早い。ちらっと視線を向けると、後片付けを終えて仕事のメールチェックをしているところだった。
彼が家で待っているから、なるべく早く帰宅したいらしい。一緒に住みはじめて一年になるようだ。
「美咲、今日家によっていい?」
「…いいけど、どうしたの?」
「美味しい紅茶が飲みたい。」
「うちは喫茶店ではありません。」
「美咲の家が落ち着くから」
ケンカでもしたのかな。この人が、こんな言い方をしてくるのは、いつもそんな感じだ。
「はいはい」
今日は、雫が帰ってくるのが遅いから少しのんびりしても平気だろう。
そう思い、美咲と家に帰る事にした。
自宅の玄関の鍵を開けて、ドアを開ける。久しぶりに、電気がついていなくて暗い部屋の中を見て寂しく感じた。一年前までは、暗いのが当たり前だったのに雫がいる事が、当たり前になっていたみたい。
「お邪魔します♪」
「どうぞ」
玄関の鍵を閉めて、台所に向かう。ドアを開けて照明をつけると、ハーブティーの顔入りがふんわりとする。雫が出かける前にポットに淹れてくれたのだろう。流しの三角コーナーには淹れたあとのハーブティーの茶殻が捨てられていた。
テーブルには、500ml入る水筒が置かれている。その中に淹れてくれたようだ。
「いい香りだね」
梨江はコートを椅子にかけると、食器棚に向かう。お客様用のマグカップを二つ取り出した。
「コップ、これでいい?」
「いいよ」
音がないと淋しいので、CDをかけた。昨のナツミのCDを聞いていて、そのままデッキから出していなかったみたいだ。
「懐かしい曲だね」
「そうだね」
もう、この曲が出たのは数年前になる。彼らがデビューする前から聞いていたから、もっと前になるのかもしれない。
「妹も、もっと、歌えばいいのに」
「…そうだね」
「誰に似たのか、繊細なところがあるから、うちの妹」
「そうなの…ん?」
「あ、言ってなかった?ソレ、妹」
梨江は、CDに視線を向けた。
確かに、梨江と夏実の性は松本で同じだったけれど、ありふれた苗字だから特に思いもしなかった。いや、少し前に妹は歌が上手いと言っていた気がする。
「今聞いた」
「そうか、じゃあコレも話してなかったかな。妹に好きな人ができたみたい」
水筒のハーブティーをマグカップ二個に注ぐ。ふわりと優しい香がする。
「ありがとう。最近、よく出かけるようになって泊りもあって親が怪しんでいて。何か知らない?」
「知らないな。路上ライブ関係じゃない?友達とよくやっているみたい」
「んー…なんか、違う。最近、恋している雰囲気」
「恋している、ね。ただ、新しく世界が広がって楽しみが増えただけじゃないの?」
「そうかなぁ、私としては、新山さんに恋しているのかと」
夏実がルカに恋しているなんて言いだすから、コップに手を伸ばす。
たぶん、それはない。当時からバンド内に彼氏がいるのではと噂があった事もある。それでも、相手はルカだから絶対にないとも言いきれない。
「どう思う?」
「どうって、なんともいえない」
私は、苦笑を浮かべた。ルカの友人としては、うまくいってほしい気持ちもあるが、夏美はルカにたいして恋愛感情はもてないだろう。勘だけど。
「知らないなら、いい。ただ、少し心配でさ」
「そう、お姉さんだね」
梨江は苦笑を浮かべた。
「一応ね」
【2】
その頃、黒崎雫は新山ルカの家にいた。
美咲とは同じマンションの同じ階の隣にあるため、数分で行き来ができる。今日は、仕事帰りにルカの家によることになっていた。
ルカと二人で会うはずだったのに、今感じているこの気まずさはなんだ?
部屋の片隅にかけてある時計を見上げながら、そう思った。時計はもうそろそろ美咲が帰宅してくる時間を示している。
視線を前に戻すと、ルカと夏美さんの二人が仲よさそうにしている姿がある。なんだろう、このお邪魔虫をしている感覚は。早くこの場から帰りたい気持ちになりながら、ルカの淹れてくれた珈琲を一口飲む。
「……そうだ、せっかくだから美咲も呼ぼうか?」
「いいですね」
「連絡とってみるから、待てて。雫もこのへんの好きに使っていいから」
ルカは携帯を片手で持つと部屋から出ていった。かすかに話声が聞こえてくるから、電話をかけたみたいだった。
「……」
夏美さんは、思い悩むような表情を浮かべて、ため息を吐き出した。彼女の前に置かれているカップを見ると珈琲がなくなっている。
「珈琲、淹れましょうか?」
「ありがとうございます。でも、やめときます。……雫さん、好きな人いますか?」
「えぇ、いますよ」
答えながら、嫌な予感がする。恋話なんて、ついこの間自覚し、経験も少ない私にとっては管轄外だ。
「好きって、どう判断したらいいのでしょうか?」
「……」
どうしよう。なんて答えたらいいのか、まったく分からない。ルカが早く戻ってきてくれと思いながらも、何か答えなければと言葉を探すが見つからない。とりあえず、質問してみる事にした。
「それは、どんな時にそう感じたの?」
「最近、彼とうまくいっていなくて不安になっているから、新山さんといるとドキドキするのかな?」
「……それは、ルカの事が人として好きだって事じゃない」
「んー…それだと、何かしっくりこなくて」
そこまで話したところでルカが戻ってきた。ドアが開く音がして、思わず2人してその方向に視線を向ける。夏美さんは、すこし驚いた表情を浮かべていた。
「美咲、すぐ来るって。……って何、ふたりともこっちを見るの?」
「なんでもありません」
「部屋に戻ってくる音がしたら、つい視線がいっただけですよ。美咲が来るなら、新しい珈琲淹れますね。このカップ使っていいですか?」
「あぁ、いいよ。ついでに、あともう一つ入れといて。梨江さんと二人で来るって言っていたから」
「梨江さんが来る…?」
「美咲と二人で話していたみたいで、すぐ来るって」
「分かりました」
「……すみません、私、用事を思い出したので帰」
ピンポーンとインターフォンが鳴り、ルカが玄関を開けに向かった。
夏美さんは、梨江さんが来ると聞くと慌てた様子だったのを見て、たぶん、知り合いなのだろうかと感じた。いつもよりも丁寧に珈琲が淹れ終るのと、ほぼ同時に二人が部屋に入ってくるのは、ほぼ同時だった。
「ふーん、ココにいたの?夏美」
梨江さんは、少し怖さを感じる笑みを浮かべて夏美さんを見る。
「いたけど、お姉ちゃんには関係ないから」
「姉って?」
「この人、夏美の姉だって」
「……そうか」
ルカは美咲にそう説明されて、複雑そうな表情を浮かべている。
「関係あるわよ、親が心配しているから。あと、妹をからかえる楽しいじゃない」
「からかえるから楽しいっていう理由が本音ですね。梨江さんの場合は。はい、二人とも珈琲どうぞ」
「ありがとう」
「……美味しい」
「どういたしまして」
「何か、前に飲んだ時よりも美味しい」
「ありがとうございます」
「よかったな、雫」
「はい」
珈琲を淹れる腕があがったと褒められた事が嬉しくて、笑みを浮かべてそう答えると夏美さんの方に視線を向けた。ルカに向けている視線は、いつもよりも少し気配が違っている気がする。何が違うのか、はっきり分からないが、さっき、2人で話していた事が気になったが、人数が増えてしまっては聞く事もできない。
そもそも、ルカはなぜ、私や美咲たちを呼んだのだろうか。もしかしたら、夏美さんと二人で会う事をさけたかったのかもしれない。ルカは、なんとなく人の気持ちを察してしまえるから、それで二人で会うのをさけたのか?ルカらしくもない。
「お姉ちゃん、珈琲の味が分かるんだ」
「そのトゲのある言い方はなによ」
「そのままの意味です」
「可愛くない」
「可愛くなくていいです」
二人の姉妹の会話を聞いて、ルカはふっと笑みを浮かべる。
「仲がいいですね」
「「仲良くない」」
二人から同時にそう言いかえされて、喉の奥を転がすように笑いながらルカは自分の珈琲に手を伸ばした。
「仲がいいのは、二人じゃないの?カップルに見えるし」
ニヤニヤしながら、梨江はルカと夏美さんに視線を向けてそう言う。ルカは、一口飲んだまま少しの間動きが固まり、視線を誰もいないところに向けた。よく見ると、頬が少し赤くなっている。
「なっ…いきなり、何言い出すのよ」
「何って、見たままを述べたのよ。ね、美咲」
「なぜそこで私にふるの。でも、まぁ確かにカップルに見えるかな」
ルカに視線を向けながら、美咲は意地の悪い笑みを浮かべる。からかう事に決めたらしい。ルカは無言のまま、何か意見する視線を美咲に送った。美咲にも肯定されてしまい、夏美さんは何も言えなくなってしまった。その様子を見て、美咲は話を続ける。
「……ルカが男前に見えるから。でも、仲が良くても歳離れた兄弟みたいにも見えるかな。ね、雫」
「そうですね。私もこんな兄弟が欲しかったです。一人っ子だったから、知り合いの兄弟のいる生活の話を聞くと、楽しそうな感じがして。」
「あ、分かります。ルカみたいな人が兄弟で欲しいです。」
「そう、ありがとう」
ルカは、夏美さんに兄弟扱いされて苦笑を浮かべている。むーっと怪しんでいる梨江は、その後、二人の事に関する質問をするような事はしなかった。夏美さんの表情で大体のところを察したのかもしれない。
そういえば、あの人は今、どうしているのだろうか。
「……雫、一人っ子だったの聞いてない」
美咲が、すねたような口調で子供みたいに言い、コップに飲み物をいれた。
私は、コートを食卓の椅子にかけ苦笑を浮かべる。
「ごめん、話してなかった?」
「……うん」
「美咲といると満たされた気持ちになるから、あえて、過去の事をあまり話す気になれなくて」
「そうなんだ」
「ココの居場所が一番好き」
「……」
この人は、いきなりこんな甘い台詞をさらっと言うような性格じゃないのに、言われると困る。と、美咲の顔に書いてある。それから、自分の顔が赤くなっているのに気付き、雫から視線をそらしてしまう。
彼女は、すっかり冷めてしまった飲み物をコップにいれて飲む。
私は、下から顔をのぞきこむ。 黒髪で長めの前髪が、さらりとながれる。じーっと見つめて、頬にかるく唇で触れて優しく頭を撫でる。
「……ずるい」
「ずるくさせているのは、美咲だよ。過去の事は知りたければ、話すから」
「分かった」
美咲がぎゅっと抱きつく。私は背中に手を回すと、体温を感じて安心して目を閉じた。
【3】
数日後。
その日、美咲はいつものように執事喫茶に来てくつろいでいた。
閉店近くのこの時間は、あまりお客さんが来ることが少ない。お客さんが来た事を告げるチャイムが鳴って、若々しく学生の雰囲気の女性がおそるおそる中に入ってくる。
店内を見回し、誰かを探している様子だった。雫と視線があうと、二人とも一瞬動きが固まった。雫が驚いたかのように目を見開くと、気まずい空気が数秒間流れた。先に沈黙をやぶったのは、女性の方だった。
「……久しぶり、だね。ここにいるって聞いて、来てみたの」
「……そう。飲み物は、何にしますか?」
「カモミールをお願いします」
「かしこまりました。では、こちらの席で少々お待ちください」
席まで案内をすると、雫は飲み物をいれるために厨房に向かった。他のスタッフは、ルカがいるが、閉店作業を黙々と行っている。今日は、用事があると言っていたので定時にすぐあがれるように作業しているところだった。閉店作業が一区切りついたのか、ルカがその女性に視線を向けた。
「…知り合い、かな」
「知り合いみたいだな。美咲、おかわりは?」
「んー…今日は、いらない」
雰囲気では、あまりいい思い出ではないようだ。その女性は落ち着かない様子で店内をきょろきょろと見ていたが、しばらく雫がもどってくる気配がしないと、その女性は私に視線を向けてくる。
「あの、失礼ですが…黒崎さんの知り合いですか?」
「えぇ、まぁ」
「私、学生時代の知り合いなのですが、最近の黒崎さんはどんな様子ですか?数年会っていなくて。あの頃の黒崎さんは、あまり人と関わろうとしていなくて。少し気になったもので」
「どんなって、雫は優しいですよ。とても、心があたたかくて」
「……お待たせいたしました。カモミールでございます」
雫は、カモミールの入ったサーバーとコップ女性の前に置いた。照れているのか、耳が少しだけ赤くなっているのが見える。
「そうですか」
安心したかのように、その女性は目を細める。
「あれから、もう2年経っているから。それに、ここに居場所があるから大丈夫ですよ」
雫は苦笑を浮かべた。
「そう、ならよかったです」
複雑そうな笑みを女性は浮かべた。ぎこちなかった表情が、少しだけとれたぎこちなさがとれた表情になっている。コップに手を伸ばすと一口カモミールを飲む。
「優しい味で、あたたまる」
「カモミールは心を落ち着かせる効果がありますから」
「そうですか。知らなかった」
「よかったら、茶葉も売っているから買っていきますか?」
ルカがそう言うと、その女性は黙って頷いた。雫とどういう関係だったのかは知らない。まして、エスパーでもない。だが、なんとなく、他の疲れがたくさんたまっていそうな気配がするからルカがそう声をかけたのだろう。
「では、持ってきますので、少々お待ちください」
「ありがとうございます」
ルカは厨房に茶葉をとりに向かった。
ゆっくり味わうようにカモミールを飲むと、その女性は席を立ち会計を済ませる。ルカが持ってきた茶葉をバックにしまうと喫茶店を後にした。女性がお店を後にすると、ルカが私に視線を向けてくる。
「ごめん、今日はこの後予定があるから。早めに帰ってもらっていい?」
「外は寒いのよ。やだ」
「やだって…」
「どうせ、もうほとんど掃除は終わっているでしょ。だったら、いいじゃない」
腕時計で時間を確認すると、閉店時間までは数分残っている。自分の飲んだ紅茶代ちょうどを財布から出すと、テーブルの上に置いてから、と自分の飲んだ食器を持ち厨房に向かいながら、ルカのいる方に振り向く。
「食器は洗っていくから。レジ閉めはじめていいよ。ここにお金置いておくから」
「はいはい」
困ったかのようにあさくため息を吐き出した。原則としては、こんなわがままは通らない事は分かっているのだが、マスターもいつもの事なので何も言わなくなってしまった。
テーブルの上に置いてあるお金を取ると、ルカはレジに向かった。
「マスター、いっそ曜日限定でメイドさんにいれたらどうですか?」
「んー…そうですね、考えておきます。制服どうしましょうか」
「マスター、制服の問題ですか?」
雫がそう言うと、すでにアレコレとデザイン候補を考えているマスターは腕組みをしながら、こう答えた。
「えぇ、彼女ならもう仕事はなんとかなるでしょう。ハーブティーにも詳しいし、接客も喫茶店のバイト経験があるのなら、問題なさそうですし」
何を想像したのか、雫は不安そうな表情を浮かべた。厨房から戻ってきて、雫が不安そうな表情を浮かべているのを見た。大体どんな想像をしたのか予測がつく。ルカはニヤリと意地の悪い笑みをうかべた。
「美咲はメイド服、さらっと着こなせそう。似合うだろうし、モテそう」
「……。ルカ、まさかとは思うけど美咲に手を出そうなんて考えてないですよね?」
「雫君は、僕をなんだと思っているの」
「猫のふりをした虎です。一見、無害そうに見えて、猫みたいに可愛げあるふりをして距離を縮めてから、一気に獲物をしとめるハンター」
「それは、言えているわね。自覚がないだけ、罪なハンター?」
「……君たちがどう思っているのか、よく分かった。マスター、レジしめたのでお先に失礼します」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「雫も今日はもうあがっていいですよ。あとはやりますから」
「分かりました。お疲れ様です」
「二人ともお疲れ様」
帰宅する帰り道、外は少しだけ肌寒い風が吹いている。ふと、隣を歩く雫に視線を向けると、何かそわそわしている感じがした。なんだろうと思っていたら、手がそっと手に触れて握られる。
「今日来ていた人は、高校の知り合い」
「……うん」
「それで……何から話せばいい?」
「何からって、高校の頃のことを思いつく範囲でいいから聞きたい」
「分かった。美咲の家についてから話す」
「そうだね。部屋で暖まってからがいいかも」
そっと、私は雫の手を握り返した。
【4】
黒崎雫は、美咲の家につくと、ポットからお湯をサーバーにいれて、茶葉をいれた。
夜も遅い時間になっているので、カモミールにした。カップを二つにいれると、寝室に向かう。間接照明をつけて、折り畳み式のテーブルの上にコップを置いた。ベッドの上にある長い毛布を一枚持ってくる。ベッドを背にして、美咲の隣に座ると毛布をお互いの膝にかけた。
「……じゃあ、質問していい?」
「どうぞ」
私は、美咲に視線を向けた。
間接照明のオレンジ色の照明に照られて、いつもよりもあたたかみのある雰囲気がする。いつもつけている蛍光灯の青白い光は、どこか冷たさを感じさせるので夜のリラックスしたい時にはあまり見たくない光だった。
「雫は、あの子と仲が良かったの?」
「んー…最初は、そんなに仲がよかったわけでもないよ」
私は、苦笑を浮かべた。近くに置いてあるテーブルの上にあるコップを両手で包み込むようにつかむ。
「同じクラスで、たまたま席が近かったっていう、ただそれだけ。その頃はまだ前の学年で同じクラスだった子とか、中学で同じクラスだったとか、そういう小さいグループが何個かあって、そのグループの中でしか会話してなかったから」
「それ、なんとなく想像できる。私の時もそうだった」
「時間がたってくると、新しいグループができてきて……そんな頃に、私はその人とだんだん話すようになってきた。彩雲は部活で先輩だった」
「何部だったの?」
「家庭科部」
「………。ん?」
たぶん、音としては聞こえているのに、言葉の意味を理解するのに時間がかかっているようだ。というより、頭の中で違うと否定しているような気がする。確かに、男性で家庭科部は珍しいかもしれないけど、正直なところ彼のイメージではない。
「だから、家庭科部。料理と裁縫の発想力があるっていうのかな。たとえば、自分がこのYシャツカッコイイと思ったら観察して型紙を想像するとか、調味料の原材料はコレとコレだから合わせてみるとか。アレンジするけど、大体できるところが不思議」
「知らなかった」
「今頃、彩雲くしゃみしているかも」
「しているかもね」
クスっと二人で笑った後に、私はあの事を話し始めた。
「その頃、なぜかイタズラされる事件が続いていて、犯人が誰なのかと探す事が流行っていた。そのイタズラっていうのが、引き戸を開けると黒板消しが落ちてくる、誰もいないはずなのに声が聞こえる、鉛筆や香水とかちょっとしたものがなくなったのに次の日になったら、教壇の上にのっているとかっていうやつだった。犯人は面白がっていただけだから。でも、だから、だんだん、エスカレートしてきて……階段で声をかけて驚かせたりし始めたから、けが人が出ても困るしほっておくわけにもいかなくて捕まえる事にした。」
「犯人が分かっていたの?」
「うん、視えていたから。猫、苦手だから見えているのにお互いに見合って固まっていた。それで、たまたま教室に来ていたあの子に、捕まえてもらった」
「猫?」
「うん、なんかそのへんにいた猫の霊が言葉話せるようになっていたような感じ?イタズラした後の反応が面白いとかで、だんだんエスカレートしたみたいで。捕まえてもらった時に「ごめんニャ」って反省していた」
「素直なのね」
「うん、なんかしっぽが一本じゃなかったような気がする」
「それは…化け猫?」
「そうなのかな。ずいぶん、長生きしたって言っていたよ」
「それで、その猫をどうしてその子が触れたの?」
「うーん、詳しい事が分からないけど、私が傍にいたからじゃないかって彩雲が言っていたよ」
そこまで話して、コップから一口飲み物を飲む。
「?」
「少しそういう力がある人が、強い力の近くにいくと力が強くなるみたいで。普段視えないようなかすかなものにも気が付く力がますようなもの。んー…視力が弱い人が眼鏡をかけると細かいものまで見える感じかな」
「ふーん」
「それで……」
その後の事を話そうとして、ぼんやりともやがかかったようにはっきり思い出せない事に気が付いた。
捕まえてもらったところまでは覚えているのに、どうしてだろう?
「それで?」
「ううん、なんでもない。その事がきっかけで話すようになったと思う。それより、美咲の高校時代ってどういうものだったの?」
「……私の高校時代は、一言で言うと青春だったかな。もう知っていると思うけど、あんな事があった以外は普通の高校生活だった。」
「そうなんだ」
思い出せない期間に何があったのだろうか。
他の記憶はあるから、記憶喪失になっているわけでもなさそうだ。それに、猫の霊が見えたのなんて、別に普通の事だ。その事が原因になっている事は考えにくい。
「……なんでもない」
美咲に顔をのぞきこまれて、そう答えていた。
思い出そうとするとはっきりとした記憶がないという事は、思い出さない方がいいのか。その日はそれ以上思い出そうとはせずに、眠りについた。
次の日、執事喫茶が定休日だった。美咲が仕事に行った後、洗濯物を干していると、隣のベランダで観葉植物にジャージ姿で水やりをしているルカと視線があった。
「……おはよう、雫」
朝は苦手なのか、眠そうにあくびをする。
「おはようございます。今日、ルカは予定があいていますか?」
「んー…午後からなら、暇だな」
そう言いながら、水やりが終わるとそのまま、ベランダのはき掃除を終わらせた。相変わらず、手際がいい。
「なら、午後からお茶にしません?ルカの部屋に、14:00頃に行きます」
「了解、その頃に訪ねてきて」
ティータイムに、ルカの家に入ると、安心して落ち着く感じがする。
ジャージから動きやすい部屋着に着替えていたルカは、家の中だからなのかメガネをしていない。
私は、食器マグカップを二個、食卓に置いた。
「何、飲む?」
「まかせます」
「じゃあ、紅茶にしよう。……なにか、顔についているか?」
「メガネ、かけていないなんて珍しいですね」
「あぁ、パソコン作業で疲れ目だからはずした」
「徹夜した?」
「してないよ、昨日は来客があって寝不足」
ルカは苦笑を浮かべながら、茶葉を選びお湯をいれあたためたポットにいれた。そのまま腕時計を見て時間を確認する。
「来客?昨日、出勤だったのにその後で?」
八時頃からの来客なんて、ルカにしては珍しいような気がする。
「あぁ、なぜかこの部屋が落ち着くらしくて」
「なんとなく、分かります。ここに来ると、安心できますから」
「はい、カモミール」
「ありがとうございます。それで、昨日来ていたのって……あ、夏美さんですか。よかったですね」
「……まだ、何も言ってないのになぜ分かる?」
「なんとなく、その嬉しそうな表情で」
「そうか。雫は、昨日泊まったのか」
「はい」
「昨日の喫茶店に来ていた子って、知り合い?」
「はい、そうです。ただ、あまりよく覚えていない事もあって」
「覚えていない事?」
「知り合った頃は覚えているけど、卒業の頃のことが覚えていなくて。記憶がその部分だけない」
「……。その部分で覚えていることは?」
「断片的には、学校で起こった事がきっかけだと思います」
「そうか。まぁ、思い出すのはゆっくりでいいと思うよ」
そう言い、ルカはいつもどおりにカモミールを飲む。普段と同じ対応が、暖かく感じた。
【5】
数日後。
美咲は喫茶店に来て、珈琲を飲んでいた。ドアが開き、カランカランとかわいた音がして、彩雲がお店に入ってくる。
「お帰りなさいませ、旦那様。こちらへどうぞ」
ルカが出迎えて、席に案内をする。あまり来た事がないらしく、ぎこちなく珈琲セットを注文した。注文を聞いたルカは厨房に向かって歩いていく。
「彩雲が来るなんて、珍しいですね」
「神崎さんは、よく来ているみたいですね」
「週に一回は来ているかな。ここは落ち着いて飲み物が飲めるから」
「確かに、音楽も静かに流れているし、店内の内装も落ち着いた色合いで、ゆっくりしていきたくなりますね」
「お待たせ致しました。珈琲セットでございます。こちらに置きますね」
ルカは珈琲セットをテーブルに音もたてずに、そっと置く。彩雲は珈琲を飲み、セットについていたチーズケーキを食べ始めた。
厨房に行っていた雫が戻ってくると、驚いた表情を浮かべている。
「……スーツよく似合っている」
「ありがとう」
ふっとやわらかく雫が笑うと、あわてて彼は視線をそらした。頬が赤く染まっている。好きなのが、すぐ分かる。
「……前に、後輩が来ただろ。一回会いたいって相談された。今なら大丈夫そうな気がして、ココの事を教えた」
「高校の頃の知り合いがココの事を知らないはずだから、誰かが教えたんだろうなって思っていた。彩雲らしい」
「迷惑だったか?」
雫は、首を横にふる。
「そろそろ、向き合わなきゃいけないとは思っていたから。ありがとう」
「なら、よかった」
「まだ、記憶がぬけている部分がある。彩雲は知っている?」
「知っている。思い出したいと思っている?」
黙って雫が頷くと、彩雲は何か小声で言う。雫がきょとんとした表情を浮かべている。
「これで思い出せるようになったと思う。記憶がもどるおまじないかけたから」
「おまじない効くといいな」
「そうだね」
苦笑を浮かべてそう言うと、彩雲は席を立ち会計を済ませてお店を後にした。
懐かしい夢を見た。
夢の中では、夕日に照らされてオレンジ色に染まる教室で、訪ねてきたあの子と二人で教室にいる夢だった。
「……おはよう、美咲」
目が覚めると美咲に心配そうにのぞきこまれていた。なぜか視界がにじんでいて、頬を伝う水の冷たさに泣いていたのかと自覚するまで、少し時間がかかる。
「どんな夢を見ていたの?」
「高校の頃の夢」
夢の中での出来事は、さっきまで詳しく覚えていた。なのに、時間が経ってしまうと登場人物と場所ぐらいしか思い出せない。
「だったはずだけど、詳しい内容は思い出せない」
夢の中での出来事に、体が反応してしまう事があるという。泣いていた原因は夢の内容にあるのだろうか。夢の内容を思い出そうとしているのに、あの頃の出来事は思い出してしまうのはなぜだろう。
「……だけど、あの頃の事は思い出せるようになったよ」
「そう、雫は何飲みたい?」
「ハーブティーにしようかな」
「了解。お湯わかしてくるね」
美咲はベッドから起き上がると、台所に向かった。何も訊かないあたり、彼女らしい。気になっているはずなのに。
あの頃の出来事が気になっていたのに、時間が経過して思い出してみると当時よりも小さい事のように思えるから不思議だ。隣に、大切な人がいる事が小さい事のように思わせてくれているのかもしれない。
台所に向かうと、やかんに火をかけている美咲の背中が見える。後ろから見ると、華奢な体格だとはっきり分かる。ふいに抱きしめたくなってしまい、後ろから抱きすくめると驚かれてしまった。
「……ちょっと、火使っているのに危ないじゃない」
「急に、抱きつきたくなった」
「これじゃ動けなくて茶葉がとれないわよ」
呆れたため息を吐いてそう言いながら、美咲は腕をはがそうとはしない。顔が赤くなっている気配を感じて、クスっと笑う。抱きつかれたぐらいで、今さら赤くならなくてもいいのに。そう思いながらも、どこか満足している自分に気づく。
腕をはなして開放すると、美咲は私と視線をあわせようとしなかった。
「……ハーブティーは、何にするの?」
「んー…エキナセアベア」
「雫がそれを選ぶなんてめずらしい」
そう言いながら、美咲は袋の中に入っているエキナセベアのティーパックを取り出して、サーバーの中に入れた。エキナセアベアは、大手のアロマショップに置いてあるブレンドティーだ。エキナセア、アップル、ジンジャー、ローズヒップ、オレンジピール等が含まれている。ハーブティーの色は優しい赤色。ローズヒップティーと似ている。
「なんとなく、選びたくなって。美咲は、ローズヒップティー好き?」
「うん、好きかな。香りもだけど、飲むと落ち着くから。そしたら、ルカがこのハーズティーを教えてくれたの」
「ルカが教えてくれたのか」
一口飲むと、カップを近づけただけでいい香りがした。ほのかにオレンジの香りがして、気持ちが落ち着く。
「うん、美味しい」
「そうでしょ、風邪予防にもいいわよ」
「そうだね」
ふっと笑ってそう言いながら、コップを食卓に置いた。何気なく窓の外を見ると、窓から見える木々の中には、もう蕾がついている。あともう少し経ったら、満開の花を咲かせてくれそうな予感がする。
目を閉じると、あの頃の事がよぎっていく。
そう、私にとっての事件はあの後の事だった。気づかなかったが、あの猫を捕まえたところを見ていた同級生がいた。あの子が猫を抱きとめて捕まえた時、よろけてしまったので私は彼女を支えた。その同級生が見ていた角度からは、角度の具合からキスしているように映った…らしい。
衝撃映像を見てしまった彼は、ある仮説をたてた。私と彼女が付き合っている、と。噂はすぐに広まってしまい…あとは、嫌な笑みを浮かべてからかいにきたり、わざと傷つけるような言葉を言ったりしてきた。
結果として、ただ、猫を捕まえるだけに協力してくれた彼女とは何も話せず、周りにいた友人だと思っていた人たちも離れて行った。
学校の外に居場所があれば、そんな事と思えたと思う。でも、その頃の私には学校の人間関係が大部分を占めていた。息苦しさがせまってくる感覚がした。もう、ダメなのだと思い詰めてしまっていたから、今の事務所の所長に声をかけられたのだろう。
大切な居場所ができた今となっては、些細な事だなと笑って思えるのに。
今まで、詳しい事が思い出せなかったのは、彩雲がお呪いをかけていたせいだ。
「桜、咲いたら花見しない?」
「花見はいいけど……雫がお酒飲むのはダメ」
何かを思い出しなのか、美咲の頬が赤くなっている。
「雫はしばらく飲酒禁止。特に、ワイン」
「えーっと、何かしましたっけ?」
心当たりがなくてそう言うと、しばらく美咲は何も答えてくれなかった。
そう、「何か」なんて何もした記憶がない。しいていうのなら、口が軽くなって普段ならあまり言わないような事を連続して言ったような気がする。何を言ったのかは、次の日起きたら記憶に残っていなかったが、それにしても……。
「何かはしてないけど、雫がお酒飲むと困るからダメ!」
後ろ髪の隙間から耳が赤く染まっているし、逆効果だよ。そんな可愛い表情をされたら、困らせてやりたくなるじゃないか。にやりと意地の悪い笑みを浮かべてしまう。
「ふーん、なんで困るの?」
「それは、その…」
「美咲が綺麗なのも、可愛くて触れたくなるのも本当の事でしょ?」
さらっと言うと、美咲は軽く睨みつけてくる。
「分かっていて言っているでしょ。そういうのが、ずるい」
「うん、ごめん。でも、美咲がいる場所が私にとって大切な場所だから。安心できて落ち着ける」
「……それは、ありがとう」
「それから、あの時の事だけど……」
そう言って、目を閉じたときに思い出した事を話し始めた。
高校の頃に悪戯される事件が起こって犯人を捜した事。同級生が誤解をして、学校に噂が流れた事。その結果、周りにいた友人が離れていった事。その後、あの事は気まずくなってしまった事。
初めて言葉に出していくと、頭の中が整理されていき、冷静になれた。淡々と語っていくうちに本当に小さな出来事だったと思う。けれど、小さな出来事なのに大きな出来事に感じた時に感じる息がつまるような閉塞感は、人の心を簡単に傷つけて追いつめてしまう。
「……そう」
「今は、ハーブティーも飲んで落ち着きました」
「落ち着いたなら、よかった」
美咲の笑顔を見て、優しく目を細める。
そんな息がつまるような閉塞感も、傷ついた心も大切な居場所を見つけられたのならば、前を向く事ができる。お互いにとって、前を向ける存在になれていればいい。
傷ついたからこそ、得られるものもあるのだから。
「私も、雫の傍が大切な居場所だよ」
今度は、私の顔が赤くなる番だった。