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第8話 転生補正

 「…お前ら本当に五歳児か?」

一通り話を聞いたマルストフは、そう疲れたように言う。

 「うむ、立派な五歳児じゃ」

えへんぷいとばかりに言うオドレイ。

 「だからって去勢なんざガキのする話じゃねぇだろ。」

呆れるように言うマルストフ。

 だが、その脳裏で、そういや俺もガキの頃馬について色々オヤジに聞いてたなぁと回想する。

あれこれ聞いた翌日、じゃあ実際に世話してみるかと、地獄のような訓練や馬の世話が怒涛のように始まった為に、あまりいい思い出でもないが、それでも父の死んだ今となっては割といい思い出であったりもする。


 「で、オドレイ様。去勢ってなんですかっ」

その傍ではクラリエルが興奮気味にオドレイに訪ねている。

 「おう、そうじゃった。主に男のナ…」

「だーもうっ。やめろっ。ガキのする話じゃねぇだろ」

素直に話そうとするオドレイの口を慌てて塞ぐマルストフ。


 この攻防は、第三者からは幼女ふたりと戯れているようにしか見えないとしてルスールが止めに入るまで続いた。



 「ふむ、ではお主があの爺やの孫のマルストフか」

お互い自己紹介が終わり、オドレイが言う。

 「ああ。挨拶でもしようかと思ってな。こんな所だが、堅苦しいのは嫌いでな」

「マルストフ様、次女様の前でそんなぶっきら棒に…」

 ルスールが諌めるように言う。確かにマルストフの態度は仕える君主の娘に取る態度ではない。

 「一応、俺はジジイの配下という事になっている。君主といえど配下の配下には命令できまい。ましてや幼子だ」

 マルストフはそう偉そうに言う。だが、普通こんな事を言えば泣いて父であるジェロイクに言われ、そして配下のドミニック経由で何かあるのが普通なのだが、マルストフはそれを契機に放逐されて気ままな傭兵稼業をする手はずでもあった。

 そう、ここで泣かせでもすれば、前々から画策していた計画を実行する事ができるのだ---。


 「のう、マルストフ殿。一つ手合わせ願いたいが、よろしいか?」

瞬間、場の空気が変わる。


 「オドレイ様!?」

クラリエルが悲鳴のような声を上げる。

 「クラリエルや。黙っておれ」

オドレイは静かにクラリエルの頭を撫でるが、目線は絶えずマルストフを見ている。

 「ほう?怪我でも負って言い逃れできなくさせる腹か?」

マルストフは絶えず挑発的な態度で言う。

 「マルストフ様!お止めください!」

ルスールも胃の痛みを抑えながら叫ぶ。

 「黙れルスール」

一喝して黙らせるマルストフ。


 「場を移そう。訓練所じゃ」

静かな怒りを秘めたように、オドレイは訓練所へマルストフを誘う。

 「やめるなら今だぞ。痛い目あうぞ」

「父上はどうも私を嫁に行かせようとしておる。それをやめさせるには武勇が必須であろう?それに…」

 そして二人は訓練所へ行き、オドレイが差し出した二本の木製の剣…見た事のない形の剣で、刃が片方しかなく、おそろしく細身であった。

 「おいおい、こんな剣でやるのかよ?」

「なんじゃ?子供用の剣では子供に勝てぬと?」

オドレイは不敵に笑みを含ませて言う。

 二人の距離は成人男性の足で10歩程離れた距離で向かい合う。


 「へん、まぁいい。かかってこいよ」

マルストフは吐き捨てるように言う。

「いや、お主から掛かってこい」

 「ああ、そうかよ―――じゃあ」

そうオドレイが言うと、マルストフの顔から表情が消え、姿勢を低くして接近する。

 木剣を握る両手に力を込め、振り上げながら接近し、そしてありったけの力で振り下ろす。


 「ほ、っと」

だが、オドレイは歯がない部分…逆刃もとい峰でその一撃を受け止め、巻き落とす。

 そして流れるようにマルストフの木剣…木で作られた刀の刃を地面に着かせて、自分の刀をマルストフの首筋に当てる。

 「なっ」

マルストフは驚愕する。


 「(このアマ…最初からこれを狙ってやがった!っていうか今のなんだ!?完全に剣で打ち合った時、子供じゃなくて大人の厚みだったぞ!?)」

 してやられた。相手の使い慣れた剣。フル装備ではない鎧。初撃はこちらに譲る行為。そして幼子を相手にするという慢心。全てが相手の思惑通りだったのだ。

 そしてなにより、打ち合った際に感じた<厚み>が子供ではなく、完全に大人のそれであった。


どんな技かしらないが、こいつは面白い。


 子供に負ける。という屈辱等を通り越して、まず第一感情がそれであった。


「すげぇなお前」

マルストフはそう言ってまいった。とばかりに手を広げて剣を捨てる。

 「うむ。稽古に付き合ってくれてありがたいの」

 オドレイの勝利となったが、オドレイとしては


 「(まさか五歳児の体で若武者の一撃を完全に受け流せるとは驚きだ!?)」

と内心すごく驚いていた。


 実は転生の際に、そういった身体的な力も引き継がれるが、オドレイもとい中の今川義元がそれに気づくことはない。

 なお、この木刀。作った際にでた木屑で箸を作ったと言う。

刀同士の刀剣術は本を見て描写しましたが、そういえば五歳児と15歳では体格差あって勝負にならないと思いますが、突っ込まないで欲しいです(震え声)


次回は20日以内に投下したいです。

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