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第4話 勉強

ファンタジー特有の超兵器の話が出てきます。

 「おや、もう来ていたか、オドレイ嬢」

 勉強部屋にて筆と紙(ゴワゴワしていて動物の皮のような紙)を並べ、私オドレイは講師の到来を待っていた。そんな時、ついに講師が到来する。

 「こんにちわ、トリストル先生。今日もよろしく頼むのじゃ」

私はそう言って頭を下げる。

 「うむ、いつもながら礼儀正しくてよろしい」

トリストルはそう私を褒めた。


 トリストル・ダンドリーと言われる初老のこの男性は、私の講師であった。

ダンドリー家はオーランス王国の名家であり、彼も重臣として若い頃から剣を振るっていた武道派である。

 政治面においても自領を良く治め、宰相の地位すら約束されたほどの人物であったが、本人は辞退しており、既に家を息子に譲り、現在はこのように隠居の身で大学の講師や他家への派遣講師をやっている。とのこと。


 最初見たとき、宗滴かとおもった。それほどの覇気が彼にはある。

 こういうタイプの家臣がいれば、私のいない今川家でも立ち回れるであろうな…。おっといかん。過ぎ去った事を悔やんでも仕方ない。


 「さて、今日は歴史について始めるとするか」

 「うむ、よろしく頼むのじゃ」

 トリストルの言葉に私は答える。こうして勉学が始まる。


「さて、オドレイ嬢。このオーランスの地を治めているのは、ほかならぬオーランス王国だが、その前身となる国があった。何かわかるかね?」

 「エレマンランスという国だったかの」

 私は答える。そうすると師トリストルはほっこりとする。

「うむ、よろしい。オドレイ嬢は中々博識であるな。

建国は神聖歴511年。今は1505年だから1000年近く昔になるな。

エレマンランスは隣国ヴェルト帝国の東にまでその版図を伸ばす大王国であった。

 だが、943年に政変が起こり、王国は瓦解。オーランスとヴェルドと言った国々に分裂してしまった。

 そんな中、我がオーランスはエレマンランスの後継者として勢力を拡大。各地の豪族を従わせ、ついにエレマンランスの旧本領を統治し、諸侯を設置し治める事となった。

 隣国ファイアームも我が国のシーチュとノルマディア、ロッシュニアを中心に領土を持っていたが神聖歴1337年から50年前の1453年まで続いた<百年戦争>によりその領域はかなり削る事となった。

 ここまではいいかな?」

トリストルが黒板に白いチョークという石を使って文字や絵で説明をする。私は手持ちの本にそれを書き写す。


 「うむ。百年戦争の晩年、1429年に<聖女将軍>アリアーヌ・シモンが魔戦機を駆り、ファイアーム軍を蹴散らしたとあるが…魔戦機とはなんなのじゃ?」

私は一通り書き終えると、本で得た知識を持ち出して疑問を解消してみる。


 百年戦争…ファイアームとオーランスの間で起こった戦争で、王の継承問題で起こった戦であり、一進一退を繰り広げていた戦であったが、アリアーヌ・シモンという女将軍により情勢がオーランスに傾き、オーランスに勝利を与えた人物であった。しかし、魔戦機とはどんなものなのか…。そんな訳で聞いてみた次第である。


 「ふむ、魔戦機とは魔力を元にして動く巨大な鎧の事だ。人一人が着る程巨大なものだ。丁度幅がこの机程あるか?いやもう少し大きいか。幅が大体2メール。縦が4メール程か」

 トリストルが興奮ぎみに勉強机の幅を腕で図る。


 人や本からいろいろ聞いたり読んだが、大体1メールが3尺半(1尺30センチであり、1メール=1メートル)なので…。ふむ、<巨大な鎧>か。

 ここの鎧は戦国の鎧とは大分ちがい鉄を存分に使った物が多い。…あれの巨大化した姿が…手ごわそうだ。


 「師は見たことがあるのですか?」

「うむ、幼い頃に一度だけだが、ルーアラスの式典のパレード際にな。あの頃はまだアリアーヌ様が生きていた頃でな…思えばあの時から病だったのかもしれんな…」

 トリストルがいきなり物思いにふけるが、まぁ仕方あるまい。本でしか知らないが、このアリアーヌという女は女の身でありながらさながら源義経の如く目覚しい戦働きをしたと書かれている。そりゃ子供頃に義経級の武将に会えたのだ。武人としてわからん訳ではない。

 だが、まだ勉学の時間である。まだ物思いに浸っては困る。

 しかし、歴戦とも言える風貌のこのトリストルが、都のパレード…馬揃えか。の時にしか見ていないという事は、戦場にあまり出ていないようだ。


 「あの、トリストル先生」

とりあえず声をかけよう。

 「おおう、すまなかった。昔を思い出しておったのだ」

物思いに浸るのはわかるが、まだ勉学は終わっておらぬ。


 「その魔戦機はどのように動くのか?それらは人の手で作れるのかの?戦場によく出されるのかの?」

 気になるところを徹底的に聞いておこう。

 「魔戦機は遥か昔のモデルヌム帝国の時代に作られており、どのようにして作られるかはわかっておらん。だが、魔石の力を凝縮した魔結晶を元に動く。

 魔結晶は個体差があるが平均的に魔石10個分の魔力を持っており、魔戦機用ともなれば30個分の力が入っていると聞いたことがある。それで数ヶ月は持つといわれておる。

 それと魔戦機に乗れる者はほとんどおらず、動かし方もわからなかったのでオーランスの都市オルレアのサント・クロワ大聖堂に保管されていたのだが、それを一市民であったアリアーヌ様が乗り込み、襲撃した敵を倒したのが始まりであったという。今は乗り手もおらず、オルレアのサント・クロワ大聖堂に保管されておる。」


 ふむ、なるほど。大体わかった。

 この世界には、術もとい魔法があり、それを使うには体内にある魔力を使わなければならないが、魔力自体はいくら訓練や修行をしても増える事はなく、もっぱら魔石という魔力を帯びた石から引き出して魔法を使う。

 その際、魔石から魔力を引き出すにも技術が必要であり、この引き出す力量がある者が「魔法使い」と言われる職業である。らしい。

 そして魔石の魔力をさらに集めて結晶化したものこそが「魔結晶」であり、トリストルの言うとおり魔石10個分の魔力が入っている石である。


 しかし、このアリアーヌ。聞けば聞くほど無茶というか、尾ひれがついているというか…。

 まぁ日の本の英雄・英傑も、強弓で船を沈めただの、鎧をつけた状態で船から船へと飛び移っただの、揺れる船にある扇を射抜いた等、疑わしいものもあるのだが…。


 「えっと、先生。そのアリアーヌ聖女将軍は…病で亡くなったとあるが…」

 これも本や話の知識である。


 「うむ、戦争終結後、修道院に入られてシスターとなられていたのだが…肺の病に倒れてそのまま亡くなられてしまったのだ…」

 トリストルは悲しげな顔で言う。思い入れのある人物であったか。

 「ふう…さて、オドレイ嬢。話がそれたが、とにかく、ファイアームと我がオーランス、そしてこのフランドルの歴史がわかったであろうか?」

 「はい、ありがとうございました。先生」

 私は頭を下げる。

 「うむ。おっと、忘れる所であった。最後に忘れていたが…このフランドルも、格式的には相当なものである事をいうのを忘れておった」

 トリストルは思い出したように言う。それを忘れないでもらいたい。

 「格式?」

私は尋ねる。まさか、オーランスの王と親戚ではないだろうか。

 「うむ、エレマンランス王家の血脈と、ファイアーム王家の血脈を受け継いでいるといわれておる。かの百年戦争でも、当初は中立を保っていたのだが、オーランスの同盟を重視して参戦したのだ」

 「そ、そうだったのか!?」

 確かに、本で読んだが、なんらかの関係はあるのだろう程度にしか思わなかったが、まさかここでもそのような関係にあるとは…。


 その後、私は複雑な心境であった。


 私が輪廻転生した理由。それがわかった気がしないでもなかった。

 奇しくも前世と同じ境遇…女であり次女である点など、色々と違うが…。

 もし、輪廻転生した事が、当主になり、このフランドル家を盛り立てる事であるならば…。


 天は下克上を望まれるか…。


 「先生、今日は本当にありがとうございました」

夕刻。日が傾き始める頃に勉学は終わる。

 私はそのような思いを秘めたまま、頭を下げて礼を言う。

 「いやいや、オドレイ嬢が非常に熱心に尋ねるので、こちらも教えがいがあるものだ。これからも日々精進しなさい」

と、トリストル先生が帰っていく。

 明日から、忙しくなるであろう。

魔戦機・・・装甲騎兵や装甲悪鬼、光武・神武等の<乗る系>ではなく<着る系>のアーマータイプです。装甲騎兵は違うかな…

例のごとく古代文明の遺品であり、内部構造は不明。よって量産も不可です。今のところは。

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