第10話 従者クラリエルの優雅な従者日記
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あの頃の私は、現在のように責任ある地位でもなんでもなく、只ありふれた少女であり、世界はオドレイ様の周りと、ブルージュの街、そしてフランドル家の館のみであった。
しかしながら、我が主君オドレイ様はあの頃から聡明で有り続け、その瞳は遥か天を見据え、全ての理を理解できる。既に知っているかのような雰囲気を持ち合わせていた。
私は、そんな彼女に、心の底から惚れてしまったのだろう。神には不敬かもしれないが、同性の愛に目覚めていたのだ。それは私が結婚するまで続く禁忌の恋だったのかも知れない。
夜伽の際、枕の元で静かに語ってくれた。<自分は過去か未来かも定かではない、遠く、魔法のない世界で、ヒノモトとよばれる島国の、スルガという国を治めていた王の記憶を持っている>と。
幼少の時の話ではあるが、それが嘘偽りや創作の類であるとは到底思えない。それは余命わずかの老いぼれた今となっても言える事である。
今にして思えば、その世界は、遥か東の地と似ている存在であると思う。
なぜなら、東の地で使われている武具を見て、オドレイ様はひどく懐かしくされていたからである。
東の地で使われている剣は、片方しか刃がないが、鋭い切れ味をもち、特徴的な形をしている。幼少の頃、木で作った剣が、そうであった。
また、弓も特徴的で、これも自製していたが、弓はロングボウより大きく、上部が反りが入った変わった大弓であった。
オドレイ様いわく、材料がないのでうまくできなかったが、他の弓と大差ない威力であった。
追記
同じく幼少期のオドレイ様から、剣を作られた際に、商人が使っていた<そろばん>という計算器具を授かった。
形はモデルヌム帝国時代に使われたとされるアバカスに似ているが、こちらのほうが使い勝手が断然に良い。
我が生家が商人という事もあり、すぐに父にこれを伝授。作り方は些かの手順を踏むが、五歳児でも作れた物であった。
そもそも、アバカスというものは、当時としては学者が使う物であり、一般的ではなかった。それをオドレイ様は一介の商人に伝達し、広く普及させるようにしたのであった。
その後、そのそろばんは我がペシュラー家・レースタイン家両家の家宝となるのは周知の如くであり、算盤騎士と言われる次第である。
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神聖歴2004年12月1日 発見されたクラリエル・P・レースタインの手記より一部抜粋
なんか日記にしようと思ったらこうなった。どうしてこうなった。
8月27日追記しました。そろばん登場。そしてクラリエルさん結婚するみたいです。




