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第9話 神童と少女趣味者

オドレイの父親の名前はジェロイクです。ジールではなかったです。(一応以前の話の表記を変更しときました。

 「これはこれは…先生殿。いつも娘がお世話になっています」

フランドル家の館にて、館の主人たるジェロイク・フランドルはテーブルの向い正面にいる先生に、トリストル・ダンドリーに、ワインを注ぐ。

 今日は特に娘オドレイの授業はないが、それでも「近くに来たので世間話でも」とトリストルが訪ねてきたのだった。

 政務があるがここ最近戦も少なく、小康状態が続いている為に政務自体も単調だったので切り上げて、簡単ではあるが客人を饗す場をつくった。


 「いえいえ、たまたま近くを通りましてな」

と、笑顔を見せて注がれたワインを口にする。

 「なにもないですが、チーズでも…」

それでも、経験から<どう考えてもそうではない>と経験則上わかったジェロイクはそう言って機嫌を損ねないようにツマミを進める。


 しばらくの間、ジェロイクはオーランス王国の情勢や首都ルーアラスでの出来事や流行りの劇や流行等を聞いたり、フランドル領での名所や特産等のアピールを行った。


 「ところで…オドレイ嬢の事ですがな…」

トリストルはそう口を開く。

 「む、娘が何か…?」

ひょっとして失礼な事をしたのではないか、と冷や汗を出すジェロイク。

 「いえいえ、オドレイ嬢は私の授業をよく聞いていますよ…良すぎる程に」

それを聞いて「そ、それなら良かった」と安堵の言葉を吐き出すが、同時に含みのある言葉が気になった。


「ジェロイク殿は、オドレイ嬢を騎士にする気はない。と伺いましたが、それは本当で?」

 「え? あ、はい」

いきなり思いもしない言葉に、ジェロイクは素で答えてしまった。

 「なんと…」

トリストルはシワを寄せて残念がる。

 「…トリストル殿。率直に聞きますが、オドレイに騎士としての素質がある。…と?」

ジェロイクはその様子を見て、武人の顔となってトリストルに訪ねた。

 「あるもなにも。彼女はここ数十年に一人の人物ですぞ?」

即答で答える。


 トリストルはジェロイク・トリストルが平凡な人物であるとは理解していたし、姉のアデライト・フランドルの能力も把握していた。

 彼が下した評価は「名家フランドル家は平凡なる君主によって平凡なる末路を辿るであろう」と評価した。

 いずれ実権は家臣および主要な商人に移り、いずれそう遠くないが、それでも近くではない未来にはオーランス王国に忠誠を誓うであると考えていた。

 そんな中、オドレイという子供は、なんとも眩い光を放つ異質な存在であった。


 「そこまでとは…」

ジェロイクは思いもよらない事実に戸惑う。


 確かに、オドレイの評価はドミニックを中心に見直しを求めるように言われてきている。

いわく「妹様は騎士に相応しき御人」「必ずや騎士としてフランドル家を支える柱となるでしょう」等々…。

 それが嘘であるとは言わないが、それでも<なんらかの思惑>が絡んでいるのは容易に考えられる。

だが、流石にドミニックがそう言い出すのは予想外であったが、それでもなお、「モウロクしたか?」と思ってしまっていた。


 「何故ですかのぅ」

何故なにゆえ、そこまでオドレイを頑なに騎士にさせないのですか。とトリストルは無言で訪ねた。

 張り詰めた空気が場を占領する。


 「…<最後の子>だからかの」

 「!」

「無理もございますまい。アデライトとオドレイ、二人の年齢は姉妹にも関わらず年が少し離れていますからなぁ…」

トリストルは髭を撫でながらいう。気持ちは理解できるが…といった顔でジェロイクを憐れむ。


 そう。


 アデライト以降、オドレイまでの姉妹・兄弟は尽く死んだ。


 だからこそ、オドレイには戦とは無縁でいて欲しかった。


 だからこそ、今まで目を背けて来たのだ。オドレイの自分を超える程の、騎士としての資質に…。


「神はなんと意地の悪いお方か。…なぜ最後に授かった子が有能だったのか」

ジェロイクは静かに呟く。

 「オドレイが望むようにしよう」

そして、彼はそう口にした。



「(やれやれ、やっと認めたか…親バカとは聞こえはいいが、なんとも人を見る目がない事か…)」

 数時間後、ションボリとしたジェロイクに別れを告げて馬で帰路に付くトリストル。だが、その心境は些か複雑であった。

 「(だが、話を聞いた所、やはりあのお方はフランドルの本質を分かってはいなかった…。いずれフランドルは有能な王となるだろう)」

 馬を走らせながらそう思考する。

 「(ぽつりぽつりとだが、歴戦の王を匂わせる素質が見え隠れしおった。わずか5歳の童にしては芸が細かい)」

 静かに口を歪ませるトリストル。

 「(能ある鷹はなんとやら。いずれ姉を廃して当主となるだろう。それは何年かはわからぬが、おそらくその時わしはおらんだろうなぁ…)」

 ぎりりと手綱を握る手に力が入る。


ならば、私にできる事は。と静かに呟く。


 そして、若い頃、敵の軍勢を前にして見せていたであろう狂気にも似た笑顔で、心の中で叫ぶ。




 「(せいぜい今のうちにオドレイ嬢と戯れて「最強の幼帝」の基礎知識を教え込ませるとしようかのっ!!!)」





トリストル・ダンドリー オーランス王国の名家であり、武道派の重臣として名を馳せる。

 政治面においても自領を良く治め、宰相の地位すら約束されたほどの「知的」な人物であったが、本人は出世に無頓着で、後年は隠居して息子に任せ、ルーアラス大学の派遣教師(貴族用家庭教師)として活動した。

 なお、逸話としては「少女趣味ろりこんの毛があり、幼子の女子の教育指導しか受けなかった」という逸話が残っている。

仕事が始まったので次回は9月以内に投稿します。

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