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Disturbance High School  作者: 林 奎
第壱章 金碧姫の決闘 
5/21

第4話  4月23日 12:50 美笠高等学校北校舎3F 1-1教室③

 初めての2日連続の投稿です。

 この調子でやっていきたいところですが。相変わらず更新は不定期になります。

「「………………………。」」

「ど、どうしよう鼎君……この空気……。」

「ほっとけ。すぐに元気になるだろう。」


 今この場の空気は完全に沈み切っていた。

 その空気を醸し出している2人は先程のハイテンションぶりが信じられないほどだ。

 何しろこの2人頼みの綱である自分達の代わりに鼎君に闘わせる『代理決闘作戦』に勝った鼎君が恋人になるという思わぬ落し穴(少し考えればわかるけど)があったからだ。


「なあ鼎ちゃん?レンレン様の事好きになったか?付き合いたいんか?」

「俺はいい。というよりお前らの頼みを受けるとは言っていない。」

「君が恋人になってもいい良いって言っても向こうが納得せえへん。四角関係はさすがにアカンやろうしな。」

「そっちのいいじゃないのだが……。」

「うーん。だったら仮面を被って性別不詳ってことにしておくー?そうすればある程度ごまかしが……。」

「話を聞け!!」

 

 鼎君の話を完全にスルーしている2人。

 あと、四角はダメっていうけど三角関係も十分ダメだと思う。


「とにかく、名案と思われた代理決闘に重大な欠陥があった話になっちゃたなー。」

「けど、条件が『鼎君並みに強くて』『女の子』なんでしょ?結構厳しいんじゃないかなあ?」

「なんか案とかないか?」


「あ、そうだ!!強そうな女の子を連れてきて師匠が扱いて鍛えるとかどうー?」

「なるほど……弟子育成作戦ってヤツやな……ええんとちゃうか?」 


 その時、彼の作戦を黙って聞いていた鼎君がおもむろに口を開く。


「で?その決闘いつやるんだ?」

「ああ、明日。」

「無理だ。」


 鼎君はきっぱりと断言した。


「な、なんでそんなきっぱりというのー?」

「俺は弟子をとったことがない。聞いた感じの戦いぶりだと1日の付け焼刃ではどうにかできる問題じゃない。」


 インターハイにも出ている柔道部の主将を一撃でした相手に勝つのは並大抵ではないのに1日の特訓で勝てるようになるのは絶望的だろう。


「それに、できるとしてもその女子になんもメリットがある?女の嗜みとして戦闘技術を身に着けたがる女子など見たことがないぞ?」

「なるほどなあ。メリットがないと誰もやらんやろうな……。」

「あーだめかー。」


 播磨屋君は大げさにため息をつくと机に突っ伏した。


「逢ちゃんはなんかないか?」

「え?僕も言うの?」

「当たり前やん。」

「……。」


 何がどう当たり前かどうかはわからないが僕も何か言わないとダメらしい。 

 少しばかり考え、1つの作戦が浮かんだ。……少々馬鹿馬鹿しかったけど。


「鼎君ってお姉さんとか妹とかって居る?」

「姉がいるな……。」

「えっと……お姉さんは……。」

「運動能力は並み以下。闘うことになったらお前でも勝てるんじゃないか……?」

「そ、そう……。」


 事情の呑み込めない播磨屋君が聞いてくる。


「えー?何ー?どういう作戦なんだー?」

「え、えと……。鼎君が強いんならお姉さんとか妹も強いんじゃないかって考えたんだけど……。」

「おおっ!ええやんそれ!!」

「そうだねー!ぜひやろうー!」


 あっさりと食いつく2人。しかしそれに鼎君が待ったをかける。


「言っておくがその作戦は却下だ。」

「どうしてー?お姉さんに勝てないからー?」

「それもある……ではなく、強さの面では期待できないということだ。」

「えー?なんでー?」

「普通主人公よりもその姉の方が強いっていうのが漫画のお約束やで!」

「虚構は虚構。現実は現実だ。」


 という訳で、この作戦も却下。


「どれもこれもダメかあー。」

「無いもんやなあ、名案」

「ね、ねえ。もう諦めたら?」

「嫌や!と言いたいけど……。このままやったら……。」

「ああ。そうなりそうやな……。」

 

 2人の間に漂う悲壮な空気。

 出てきた難題にさすがの2人も諦めかけたその時。


「はあ……せめて師匠がが女の子やったら良かったのになー。」


 はりや……播磨屋君のその発言は何の気なしに口から出した。

 しかしそれを聞いた直原君は力の限り叫ぶ。


「そうや!それや!」


 その声は教室中に響き渡り、先程の殺気で視線を逸らせていたクラスメイト達の注目を一斉に浴びた。

 直原君が浮かべたその顔は天啓を得た賢者の様だったらしい。

 ちなみに語尾に『らしい。』がつくのはその顔を見ていなかった訳じゃない。上記の表現はあくまで播磨屋君個人の感想で僕には理解できなかったからだ。

 それはともかく賢者になった(らしい)直原君は嬉々とし表情のまま話しかけてくる。


「喜べハリヤマ!」

「播磨屋だ!」

「まあそれはどうでもええねん!問題が解決したぞハリヤマ!」

「おおー!マジでー?どうすんのそれー?」


 ハリヤマと呼ばれても怒らないところを見ると相当に嬉しいらしい。それはまた新鮮だね。


「今は秘密や!というわけで頼むで鼎!」

「……何?」


 あれ?いつの間に彼が受けるという話になっている。

 でも鼎君乗り気じゃないよ(あたりまえだけど)?


「断る。大体、付き合いたいのはお前達なのだからお前達の問題だ。勝手に人を巻き込むな。」


 そんな鼎君に対して直原君と播…磨屋君は一言。


「……師匠ー。お前ホントにひどい奴だなー。」

「……友達を困らせてそんなに楽しいんか!」

「「「「「「「「「「(………どっちが!!)」」」」」」」」」」


 この瞬間クラスの心が1つになった。言葉の意味などいう必要もあるまい。 


「話は終わりだ。他の物好きをあたれ。」


 そう言って視線を窓のほうに戻した。

 流石にこの2人ももっともな意見に何も言い返せない。……と、思いきや。


「『Wohl(ヴォール) Boden(ボーデン)』のザッハ・トルテでどうだ!」


 その言葉に視線を向こうに向けたまま鼎君がビクンと体を止めた。

 説明しよう!『Wohl Boden』とは美笠の駅前にあるドイツ菓子専門店の名前で、世界の甘味好きが大絶賛する甘党にとっては文字通りの『至福の場所(ヴォールボーデン)』だ。


「………く。」


 それと聞いた鼎君は呻き声を挙げる。

 そう、彼はこの中で一番の良識のある大人なのだが、物欲に弱くそれも甘いものをエサにされるとホイホイと懐柔されるしまうという欠点がある。


「……いや。」

 

 あくまでに冷静に務めている鼎君。

 しかし、若干声が裏返っている。内心相当の葛藤があるだろう。

 彼の秤が『決闘する+甘味』と『決闘しない』の2つが左右の皿に乗っていて、上がったり下がったりしていることが容易に想像できる。

 そこに直原君が秤を傾ける決定的な一言を言い放った。


「いや、ここは豪華絢爛の『パン・スイーツ』にしてやるぞ!」


 知らない方のために説明をしますと、『パン・スイーツ』と言うのは決して甘いパン(パン・スイーツ)というそのまんまの意味ではなく|店にある全商品を一口サイズにして箱に詰め込んだ凡ての甘味(パン・スイーツ)という意味を持った『Wohl Boden』の知る人ぞ知る隠しメニュー(5000円)。

 そして甘党な彼がこのメニューを知らないわけ、そして欲しくないわけがない。


「……仕方ない。今回限りだ……。」


 そして彼は陥落した。


「………。」


 僕個人の意見を言わせてもらえばこの性格を直さないと後々………いや、もうすでに面倒に巻き込まれているね。

 ふと時計を見ると12:55。もうすぐ5限目が始まろうとしている。

 なので次の授業の準備を始めようとしたところで、


「なあ、逢ちゃんも来てくれんか?」

「……え?なんで?」


 確かに彼女は可愛いが決闘してまで決闘に付き合いたいと思わない。

 なので理由を聞くとまたまた衝撃の発言が飛び出る。


「いやー、だって俺らのパトロンだしー。」


 …………出資者ぱとろん

 ナンデスカソレハ?


「ちょっと待って?それってどういうこと?」

「いや作戦実行すんのに少し懐が……な?」

「『……な?』じゃなくて!何で僕がそんなことを……。」


 あまりの理不尽に思わず声を荒げてたが、


「そんなこと言わずにー!お願いだよー!」

「頼むわ逢ちゃん!!この通りや!」


 と鼎君にやったように土下座をし始めた。

 それを見て頭に浮かんだのは土下座する加害者に土下座される被害者。

 そしてそれを変なものを見るような目で見てくる観衆の皆様(オーディエンス)

 うわー!それは嫌だ!!


「ちょっと土下座はやめて!」

「ウンと言うまでやめへんでー!」


「………分かったよ。」


 そしてなぜか僕まで巻き込まれてしまうのだった。


「……僕も鼎君のことは言えないね……。」


 ……僕も友人に頼まれると断れないという性格を直した方がいいのかもしれないと思った。




登場人物紹介 3.


鼎清之 Kanae Seisi

 誕生日:12/4 血液型:A クラス:1-1

 身長:168cm 体重:55kg

 好きな食べ物:天丼 嫌いな食べ物:なし


 美笠高校1-1の生徒にして耀家の親友。

 古武術をやっているらしくかなり強い。

 鼎自身もイケメンの部類に入るが、入学直後の事件がきっかけで近寄りがたいイメージを持たれている。

 良識をわきまえた常識人ではあるが……。


*常識人の鼎さんですがスペック的には奇人変人に分類されます。


 次回はプロローグの寳野さん視点です。お楽しみに!!

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