エピローグ1
何度希望を見てそして絶望を味わったことだろう。
生と死の今際を繰り返し、いつ終わるとも分からぬ日々を怯えながら過ごしてきた。
僕は…成し遂げられたのだろうか。
『生きて生きて…生き抜いて、このクソッタレな世界を見返してやれ!』
先輩が僕に言い残してくれた言葉だ。
いや、成し遂げてはいないな。
これからが始まり…なんだと思う。
僕は簡易ベッドで寝かされたまま、いつもの天井を仰ぎながらそんな事をふと思っていた。
隣には眠っている唯がいる。
点滴と処置を施され、顔色も幾分か良くなっていた。
まだ予断は許されない状況だろうけど、それでも状況は好転している。
極度の栄養不足と過労により、僕も同じように点滴を受けていた。
窓の外に視線を配る。
そこでは慌しく走り回る足音が響いていた。
僕らはあのヘリに乗っていた人たちに発見して貰えたのだ。
見逃されたと思っていたが、異変に気付いて引き返してくれたのだろう。
これまでやってきた事は無駄じゃなかった。
何度も諦めたりしたけれど、神を憎んだりもしたけれど、僕は…こうしてまた生きられる。
僕らを助けてくれたのはどこかの国の人たちだった。
会話を聞いても何語を喋っているのかも分からない。
軍服のようなものを着ているところを見ると、どこかの軍が調査か救援にでも回っていたのだろうか。
無線で何度もやり取りを交わしているのは見かけたが、口調から見ても何を言っているのかすら予想も出来ない。
慌しいのはあれから一年という月日が経ったのにも関わらず、僕らという生存者が居たことによる驚きなのだろうか?
僕らを介抱してくれたところを見ると、一見彼らは敵ではないようだがそれでも得体は知れない。
この世界で何が起こったのか、それを知るのはまだ先のようだ。
外ではヘリがいつでも飛び立つ準備が出来ていると言わんばかりに、ローターが稼動したままだ。
大きな風音がずっと鳴り響いている。
そして一人の大柄な男が入ってきた。
何かを何度か呟き、そして僕らに向けて外を指さす。
僕らをここ以外の場所へ運ぶ、という合図なのだろうか。
それを僕が確認したのを見て、男はまた外へと出ていった。
相変わらず忙しい身の上なようだ。
と、ふいに僕の手が握られた。
眠っていたと思っていた唯は、目覚め僕の方を見ていた。
「どうかしたの?」
「ううん…目が覚めたら、隣に浩人が居てくれたから…安心した」
「そっか、よかった」
これから先の事など僕らには分かるはずもないだろう。
でも一つだけ分かっている事がある。
それは、これから先もずっと、唯と一緒だと言うことだ。
「これからどこに向かうのか検討も付かないけど…怖いかい?」
「大丈夫…浩人と一緒なら、…何があっても」
「…うん、そうだよね」
唯はいつもと同じような台詞を僕に向けてくれた。
そうさ、これから先、何が待ち受けていようと、僕たち二人ならきっと大丈夫。
困難や苦難の道はこれからも続くだろう。
けれど、僕たち二人でならきっと乗り越えられる。




