超・雨女
「今週末、ゴルフに付き合ってくれないか?」
「えっ!私ですか・・・?」
公私共々、信頼を寄せている上司だ。
いわゆる“セクハラまがい”のお誘いではないのは明らかだ。
「いいんですか・・・私で?」
「逆に、君じゃないとダメなんだ」
聞けば接待ゴルフらしい。
だからこそ、初心者の私が選ばれたようだ。
「下手な方が、喜ばれますもんね」
「・・・悪いけどそういうことなんだ」
これも仕事の内だと認識している。
だから、嫌だという気持ちはない。
でも・・・ひとつだけ気掛かりなことがある。
「本当に私でいいのでしょうか?」
「もちろん!思いっきり下手さ加減を披露してくれれば」
披露もなにも、確実にそうなる。
これに関して言えば、まぁ・・・接待は大成功の内に終るだろう。
「あっ、はい・・・それはもちろん!」
ただ、なかなか気掛かりなことを切り出せない。
(私、“超”が付く雨女なんです!・・・と)
雨が降っては接待どころじゃない。
けど、切り出したところで、科学的な根拠がない話だ・・・。
結局、それを伝えることができず、当日を迎えた。
案の定、今にも泣き出しそうな空模様だった。
私の力を持ってすればコースに一歩でも踏み出した途端・・・。
「・・・おっ!降って来たな」
恐れていたことが現実になった、それもまだ室内だというのに。
「ところで接待先は?」
「あぁ、もうプレーしてるよ」
「・・・えっ!?」
(プレーしてる?どういうこと・・・?)
「じゃぁ・・・私たちって・・・?」
「まぁ、いいから、いいから!」
なぜだか嬉しそうな顔だ、雨が降り出しているというのに・・・。
それに・・・。
「雨・・・ひどくなってきましたね」
ますます、雨足が強くなってきた。
もはやゴルフどころではない。
「すみません・・・私のせいで・・・」
「・・・雨女ってことだろ?それも“超”が付く・・・」
「知ってたんですか!?」
聞けば、ライバル会社が接待ゴルフをしているらしい。
「雨で中止だろうけどな」
「・・・だから、あえて呼んだのですか?」
「だったら、言ってくれれば・・・」
「重荷に感じたら、本来の“力”を発揮できないだろ?」
さすが上司・・・私のことを良く見ている。