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歴史上最悪の勇者  作者: 金土 明火
第1章 始まりの村、そしてジルマン市
1/4

元勇者、久々の依頼へ

初投稿です!

とりあえず一章となる3話目か4話目くらいまでは毎日投稿します!

その後は章ごとにまとまって書け次第!

楽しんでいってください!



後書きの数字は気にしないで!

「この雑草抜(ざっそうぬ)きが一番こたえるな・・・っと、これで今日は(しま)いだな」



 広大な土地一面に広がった畑。(うね)はきれい|整えられ、雑草一(ざっそうひと)つない。しかもその広さたるや村の中でも(ゆう)に3農家分はあるが、その全てを一人で管理している。

 

 金髪(きんぱつ)というにはやや暗く、肌は日に焼け、体格はがっしりしていて人一倍(ひといちばい)大きい。力仕事である農家と比べても実に恵体(けいたい)だ。



「ガラン君や、昨日は雨だったから、今日は雑草(ざっそう)(ひど)かったじゃろう?」


「ああ、村長、どうも。おかげで中々時間がかかりました」


「普通は一人でやる広さじゃないんじゃがのう。悲しいお知らせじゃ、明日も雨が降りそうじゃて」


「またですか・・・。村長の天気予報はよく当たるから困る」


「手伝いはいるかのう?」


「いえ、何とか大丈夫そうです」


「さすがは”勇者”殿(どの)じゃ」


「今はただの農家ですよ。5年も前に役目は終わりました」



 ガラン・サス、5年前魔王を倒し、人類を守った国民的英雄(こくみんてきえいゆう)である。




 夜、魔物が活性化(かっせいか)する時間帯。辺境(へんきょう)田舎(いなか)でも魔猪(まちょ)やゴブリンなんかのちょっとした魔物が村を(おそ)いにやってくる。村の青年たちを(ひき)いて防衛(ぼうえい)に当たらせる。

 

 いや、やろうと思えば全然俺一人でもできるが、「ガランさんと一緒に魔物と戦いたい」なんて目をキラキラさせて言ってくるもんだから、ちょっといい気になってしまった。何なら、「諸君(しょくん)、敵を殲滅(せんめつ)せよ!」なんてかっこつけて言ってしまった。相手ゴブリン3体とかなのに。


 ぶっちゃけやることがない。青年たちでも余裕で相手できるのに俺が出張(でば)ってもなぁという感じで村の入口の前でとりあえず仁王立(におうだ)ちしている。(ひま)だ。俺の役割は、鼓舞(こぶ)ともう一つだけ。



「ガランさん、巨大魔蛇(きょだいまじゃ)です!」


「よし来た!」



 青年たちでは対処が難しい魔物を倒すことだ。


 魔猪(まちょ)魔蛇(まじゃ)などは正確には魔物の種類を表す言葉ではない。普通の動物たちが瘴気(しょうき)()てられて魔物へと変質したもの全般のことをいう。牛を飲み込むほどのでかいコブラだろうが、木の棒で追い払える程度の小さい(へび)だろうが魔蛇(まじゃ)魔蛇(まじゃ)なのだ。まあ、魔物化した結果大きく強くなることもあるが・・・



「あれです!」


「家よりでかいじゃねえか。そりゃ巨大(きょだい)だわ」



 全長(ぜんちょう)10mってとこか?|確かにコイツらの持ってる(ふる)びた剣やら農機具(のうきぐ)じゃまともに攻撃が通らないだろうな。

 

 俺が(へび)の頭の高さまで跳躍(ちょうやく)し、(よこ)(つら)()ると(へび)の頭が胴体(どうたい)とサヨナラし、数m吹っ飛んだ。これで終了(しゅうりょう)だ。



「剣も使わず蹴り一発で!?」


「でかくて(うろこ)(かた)くても所詮(しょせん)(へび)だからな」


「さすがは勇者様!勇者様に率いていただけて本ッ当に誇らしいです!」


「よせよぉ!元、勇者だっての!」



 (きびす)を返し、颯爽(さっそう)とマントをたなびかせる。ふっ、勇者の鼻の下が伸びた顔なんて君たちは知らなくていいのさ。



「そういえば勇者様、ニーナと婚約するって本当ですか?」


「っ!?ははは、まあどうだろうな・・・」


 

 顔を見せていなくて良かった。きっと今の俺は苦い顔を隠せてないだろうから。あの()、苦手なんだよなぁ。押しが強くて。



「そんなことより、今日はもう上がるぞ」



 無理に話題を転換する。明日も早いしな。

 

 次の朝、月一(つきいち)で近くの大きな都市ジルマンから行商(ぎょうしょう)に来る|馬車に市長からの使いが来ていた。



「ガラン・サス殿(どの)!市長からの依頼(いらい)を持って参りました」


(あずか)かりましょう。・・・発見された魔物の巣のボスの討伐(とうばつ)ですか」


「ここ最近魔物の数が増えてきていると思ったら、ウォーゴブリンが多く見かけられるようになってきたのです。それで調査を行った所、洞窟内にアジトが見つかったのです」


「ウォーゴブリンってことは、ゴブリン王?いや、奴は洞窟みたいな即席のアジトを嫌がる。となるとゴブリンリーダークラスの巣だな?」



「だが、ジルマンといえば軍事力には定評(ていひょう)があったはず、ゴブリンリーダー程度ならどうにかできるんじゃないか?」


財政(ざいせい)(きび)しく、魔王討伐(とうばつ)後は大きな襲撃(しゅうげき)もなかったことから、軍事費が4割ほどカットされており、兵力が足りない状況なのです・・・。もちろん報酬(ほうしゅう)も金貨50枚は出します!何卒(なにとぞ)お願いします!」


「はあ・・・わかったよ。報酬も銀貨10枚くらいでいい。その分軍事費に回してやれ」


「ありがとうございます!では明日帰りの馬車に乗ってください」



 軍事費はいざとなってから増やしても遅いっての。多少無理でも維持(いじ)し続けないとな。俺は魔王討伐(とうばつ)で十分金はもらったし、今は念願(ねんがん)田舎(いなか)スローライフを満喫(まんきつ)中だからほとんど金使わない。せめてもの足しにしてもらおう。



「あの、ガランさん。行ってしまうんですか?」



 村で一番力持ち(俺は(のぞ)く)のハリーが不安そうに聞いてくる。俺は(はげ)ますべくできるだけ明るい口調(くちょう)で伝える。



「なーに、来月の馬車を待たずにすぐ戻ってくるさ!お前たちがいれば大丈夫だ!」


「そ、そうですよね!いつまでもガランさんに頼ってばかりじゃダメですよね・・・」



 無理に強がってはいるものの、その(ひとみ)から不安は(ぬぐ)えていない。確かについ昨日、巨大な魔蛇(まじゃ)が出たばかりだし不安に思うのもわかる。しかし、あの魔蛇(まじゃ)レベルのが出てくるのはかなり(まれ)だ。この村に来てから4年間でも2回しか見たことがない。そのレベルの脅威(きょうい)に常に(そな)えるなんてことは現実的じゃない。


 だが、不安を取り(のぞ)くため、(こし)に差している一振(ひとふ)りの剣をハリーに差しだす。



「この剣って!あの!伝説の”魔王殺し”じゃないですか!」


「ああ、魔王をも倒した名剣(めいけん)ディザスター。これを君に預けよう」



 ()についた緑の宝石が(あや)しい光を放つ名剣(めいけん)ディザスター。これなら昨日の魔蛇(まじゃ)が来ようが、鋼鉄(こうてつ)のゴーレムが来ようがバターのようにスー、パタンと気持ちい切れ味。使い手の技量(ぎりょう)もあるから倒すとまでは行かなくても、村人が逃げるくらいの時間は(かせ)げるだろう。



「こんなにすごいものを俺なんかが(あず)かるわけには!それにこれを置いて行ってしまってはガランさんの剣がなくなってしまいます!」


「だったら代わりに君の剣を貸してくれ。俺にはこれで十分さ」



 ()わりに受け取るのは所々(ところどころ)刃こぼれしている品質(ひんしつ)の悪い剣。実際なくて困るってことはないとは思うんだけどね。こういうのは形式上(けいしきじょう)ってやつさ。



「その剣を(にぎ)って想像してみてくれ、昨日の巨大魔蛇(きょだいまじゃ)と戦う君の姿を。負けると思うかい?」



 パアっと表情が明るくなった。もう大丈夫そうだ。



「村のことは頼んだ!・・・あとついでに俺の畑の世話も頼む」



 もうしばらく経てば畑の緑も育ってくる頃だろう。ああ、育つのを間近で見たかったなぁ・・・。とぼとぼと家に帰り、断腸(だんちょう)の思いで旅立ちの準備を進めることになった。



「ガラン殿(どの)、着きましたよ」

「ん?はいよ」


 村から馬車で1週間位の距離にある大都市ジルマン、軍事都市として名が知られていたが、今は昔ほどの力はないらしい。しかし、道は舗装(ほそう)され、通りが人で(にぎ)わっている様子から十分(さか)えているようにも見える。そこまでお金がないのだろうか?

 そういや確かにここに来るまでに何度かウォーゴブリンとは遭遇(そうぐう)したから、ゴブリンリーダーがいるってのは本当なんだろう。逆に他の魔物(まもの)とはびっくりするぐらいに出会わなかったが。



「市長に会っていきますか?それとも日が落ち始めていますし、今日は宿で休んで明日にしますか?」

「いや、ちょっくら巣、(つぶ)してくるわ」

「は?え?今から!?」

「大まかな場所もこの間聞いたし。明日市長には会うからアポ取っといて」



 大丈夫だとは思うが、ハリー達も村の守りを心配してたし、早く帰るに()したことはないだろう。


 巣までは軍隊なら半日くらいかかるが、俺一人なら1時間もあれば着く。ちゃっちゃと片付けて、明日一日はゆっくり過ごそう。久々のジルマンなら、ああいう店も行っておかないとな!今から楽しみだぜ!




「入口はまあまあ広い。見張(みは)りは3体。装備の質は比較的いいな。となると大体100体くらいか?リーダーの強さもCランクを超えるかもな」



 ゴブリン王ほどの求心力(きゅうしんりょく)はゴブリンリーダーにはない。連携が取れていないとも言えるが、逆に言えば途中で逃げ出す奴がいて駆逐(くちく)するのが面倒くさいということでもある。ウォーゴブリンは逃げられると新たなリーダーやキングを生みかねないから全滅(ぜんめつ)必須(ひっす)条件だ。

 だったら、洞窟奥の本陣までは暗殺スタイルで行こう。



「シュ!」


「シュ!」


「シュ!」



 1体の首を斬り、首が地面に落ちる前にもう2体をやればオッケーってな。

 

 これが俺の暗殺術、”気づかれる前に全部やれ”だ。そうだ、本を出そう。きっと売れる。弟子入り希望のシーフが大勢(おおぜい)押し寄せたらどうしよう?


 洞窟内部は意外と広いが、どうやら部屋が多くあるわけじゃないらしい。拡張(かくちょう)工事中のウォーゴブリンは自分が死んだことにすら気づかないだろう速さで首を落としていく。


 さすがにこの剣は切れ味が悪いな。斬った時の感触がなんかこうどうにも言えない気持ち悪さがある。でも間違えて自分に当たっても怪我(けが)しなさそうなだけが利点か。



「食事中失礼、でももう少し行儀(ぎょうぎ)よくしてくれると助かる。こぼれてるのマジ気持ち悪い」



 食堂らしきところで(さわ)がしく食べている10体も静かに息を引き取る。肉だけじゃなくて野菜も食え。いや、やっぱ農家的にこいつらには食べさせたくねえな。


 さて、一際(ひときわ)大きな部屋についた。15体ほどそばに(ひか)えている奴らと、1体だけ(かぶと)立派(りっぱ)な剣を持ったリーダーらしき奴とリーダーに意見してるっぽい奴が見える。ここ以外は大体(つぶ)したから、この本陣で終わりだな。


 じゃあもう暗殺じゃなくて堂々(どうどう)とやって良さそうだ。



「ゴブリンども!1匹も逃がすつもりはねえから全員首を置いてけや!」


「Gyaaaa!」



 何言ってるかはわからんが、まあどうせ突撃(とつげき)だろう。不揃(ふぞろ)いな剣や槍、棍棒(こんぼう)なんかを持っているのは武器の生産ではなく略奪(りゃくだつ)によるものだからだ。それでもこの部屋以外のウォーゴブリンどもは石とか工具しか持ってなかったから、こいつらは親衛隊(しんえいたい)的な立ち位置なのだろう。


 一々鍔迫(つばぜ)()いなんかしてられないから、相手の武器ごと叩き切る。へし折る。()り殺す。奴らに死角(しかく)から攻めるなんて頭はないからまあ楽だこと。


 大分数が減ってくると逃げ(ごし)になっている奴らが目に入るから、足元の石ころを()り飛ばして体を貫く。


 あと数体というところで、気づけば目の前には他のウォーゴブリンをブラインドにして自分の突撃(とつげき)(さと)られないようにしていたゴブリンリーダーが剣を突き出していた。この攻撃の速さからしてBランクに近いかもしれない。この間の魔蛇(まじゃ)すら単独で倒しうるほどの装備と力量(りきりょう)を持った危険個体だったか。


 まあ、俺には関係ないが。


 下からの膝蹴(ひざげ)りが剣を折りゴブリンリーダーの(あご)にそのままヒットする。一瞬後には天井にめり込んで首から下だけ力なくぷらんぷらんしているリーダーの姿があった。一瞬すぎて他の奴らには突然消えたようにしか見えないかもしれないが。


 残りは5体とさっき意見していた親衛隊(しんえいたい)っぽくない奴だけだ。明日一日を心から楽しむため、ゴブリンどもは皆殺しだ!



「それでもう(つぶ)してきたと?」


「ああ、全部で104体。確認してくれていい。ああ、リーダーは天井にぶら下がってるかもしれん。もう落ちてると思うけどな」


「さすがは勇者殿(どの)・・・と言ったらいいのか。正直賞賛(しょうさん)と驚きを通り越して若干(じゃっかん)引いております。とりあえず確認のため軍を向かわせますので数日お待ちいただいてもよろしいですか?」


「ああ、それでいい。なるべく早くな。それで、今日はもういいか?」


「はい、調査が終了し次第(しだい)お呼びいたします。報酬(ほうしゅう)の件などはその時に」


「了解だ。実際報酬(ほうしゅう)なんていらないんだけどな」


「まあそうおっしゃらずに。あの勇者殿(どの)懇意(こんい)にさせていただけるのであればこのくらい必要経費(ひつようけいひ)ですとも」


「せめて金額は減らしてくれ。財政(ざいせい)?厳しいんだろ?あんまり無駄(むだ)なことにお金使うなよ?」



 朝一に市長に報告に行ったら目を白黒させながら驚いていた。早く帰りたいが、脅威(きょうい)が去ったと確認できるまではいた方がいいだろう。万が一ということもある。


 お金がないってのに金貨50枚も出してる余裕あるのか?数か月は遊んで()らせるほどの大金だぞ?昨日見た通りの(にぎ)わい(ふく)めてなんか聞いていた話と違う気がするんだよなぁ。


 まあいい。それより、数日いなきゃいけないってことは数日遊べるってことだ。村のこともあるけど仕方ないよね、だって必要なんだから!


 美人な姉ちゃん方にいっぱいお(しゃく)してもらうぞ~!


 と思って飲み屋街を内心ウキウキで歩いていたら、老人と30歳前くらいの男の2人組に声をかけられた。



勇者様(しゅうしゃさま)、どうかこの町の者たちを市長の手から救ってもらえないでしょうか?」



 面倒ごとの匂いがした。


 そして俺はまだ知らない。ここでの選択によって自分の運命が180°変わることを。

①2

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