元勇者、久々の依頼へ
初投稿です!
とりあえず一章となる3話目か4話目くらいまでは毎日投稿します!
その後は章ごとにまとまって書け次第!
楽しんでいってください!
後書きの数字は気にしないで!
「この雑草抜きが一番こたえるな・・・っと、これで今日は終いだな」
広大な土地一面に広がった畑。畝はきれい|整えられ、雑草一つない。しかもその広さたるや村の中でも優に3農家分はあるが、その全てを一人で管理している。
金髪というにはやや暗く、肌は日に焼け、体格はがっしりしていて人一倍大きい。力仕事である農家と比べても実に恵体だ。
「ガラン君や、昨日は雨だったから、今日は雑草も酷かったじゃろう?」
「ああ、村長、どうも。おかげで中々時間がかかりました」
「普通は一人でやる広さじゃないんじゃがのう。悲しいお知らせじゃ、明日も雨が降りそうじゃて」
「またですか・・・。村長の天気予報はよく当たるから困る」
「手伝いはいるかのう?」
「いえ、何とか大丈夫そうです」
「さすがは”勇者”殿じゃ」
「今はただの農家ですよ。5年も前に役目は終わりました」
ガラン・サス、5年前魔王を倒し、人類を守った国民的英雄である。
◇
夜、魔物が活性化する時間帯。辺境の田舎でも魔猪やゴブリンなんかのちょっとした魔物が村を襲いにやってくる。村の青年たちを率いて防衛に当たらせる。
いや、やろうと思えば全然俺一人でもできるが、「ガランさんと一緒に魔物と戦いたい」なんて目をキラキラさせて言ってくるもんだから、ちょっといい気になってしまった。何なら、「諸君、敵を殲滅せよ!」なんてかっこつけて言ってしまった。相手ゴブリン3体とかなのに。
ぶっちゃけやることがない。青年たちでも余裕で相手できるのに俺が出張ってもなぁという感じで村の入口の前でとりあえず仁王立ちしている。暇だ。俺の役割は、鼓舞ともう一つだけ。
「ガランさん、巨大魔蛇です!」
「よし来た!」
青年たちでは対処が難しい魔物を倒すことだ。
魔猪、魔蛇などは正確には魔物の種類を表す言葉ではない。普通の動物たちが瘴気に充てられて魔物へと変質したもの全般のことをいう。牛を飲み込むほどのでかいコブラだろうが、木の棒で追い払える程度の小さい蛇だろうが魔蛇は魔蛇なのだ。まあ、魔物化した結果大きく強くなることもあるが・・・
「あれです!」
「家よりでかいじゃねえか。そりゃ巨大だわ」
全長10mってとこか?|確かにコイツらの持ってる古びた剣やら農機具じゃまともに攻撃が通らないだろうな。
俺が蛇の頭の高さまで跳躍し、横っ面を蹴ると蛇の頭が胴体とサヨナラし、数m吹っ飛んだ。これで終了だ。
「剣も使わず蹴り一発で!?」
「でかくて鱗が硬くても所詮は蛇だからな」
「さすがは勇者様!勇者様に率いていただけて本ッ当に誇らしいです!」
「よせよぉ!元、勇者だっての!」
踵を返し、颯爽とマントをたなびかせる。ふっ、勇者の鼻の下が伸びた顔なんて君たちは知らなくていいのさ。
「そういえば勇者様、ニーナと婚約するって本当ですか?」
「っ!?ははは、まあどうだろうな・・・」
顔を見せていなくて良かった。きっと今の俺は苦い顔を隠せてないだろうから。あの娘、苦手なんだよなぁ。押しが強くて。
「そんなことより、今日はもう上がるぞ」
無理に話題を転換する。明日も早いしな。
◇
次の朝、月一で近くの大きな都市ジルマンから行商に来る|馬車に市長からの使いが来ていた。
「ガラン・サス殿!市長からの依頼を持って参りました」
「預かりましょう。・・・発見された魔物の巣のボスの討伐ですか」
「ここ最近魔物の数が増えてきていると思ったら、ウォーゴブリンが多く見かけられるようになってきたのです。それで調査を行った所、洞窟内にアジトが見つかったのです」
「ウォーゴブリンってことは、ゴブリン王?いや、奴は洞窟みたいな即席のアジトを嫌がる。となるとゴブリンリーダークラスの巣だな?」
「だが、ジルマンといえば軍事力には定評があったはず、ゴブリンリーダー程度ならどうにかできるんじゃないか?」
「財政が厳しく、魔王討伐後は大きな襲撃もなかったことから、軍事費が4割ほどカットされており、兵力が足りない状況なのです・・・。もちろん報酬も金貨50枚は出します!何卒お願いします!」
「はあ・・・わかったよ。報酬も銀貨10枚くらいでいい。その分軍事費に回してやれ」
「ありがとうございます!では明日帰りの馬車に乗ってください」
軍事費はいざとなってから増やしても遅いっての。多少無理でも維持し続けないとな。俺は魔王討伐で十分金はもらったし、今は念願の田舎スローライフを満喫中だからほとんど金使わない。せめてもの足しにしてもらおう。
「あの、ガランさん。行ってしまうんですか?」
村で一番力持ち(俺は除く)のハリーが不安そうに聞いてくる。俺は励ますべくできるだけ明るい口調で伝える。
「なーに、来月の馬車を待たずにすぐ戻ってくるさ!お前たちがいれば大丈夫だ!」
「そ、そうですよね!いつまでもガランさんに頼ってばかりじゃダメですよね・・・」
無理に強がってはいるものの、その瞳から不安は拭えていない。確かについ昨日、巨大な魔蛇が出たばかりだし不安に思うのもわかる。しかし、あの魔蛇レベルのが出てくるのはかなり稀だ。この村に来てから4年間でも2回しか見たことがない。そのレベルの脅威に常に備えるなんてことは現実的じゃない。
だが、不安を取り除くため、腰に差している一振りの剣をハリーに差しだす。
「この剣って!あの!伝説の”魔王殺し”じゃないですか!」
「ああ、魔王をも倒した名剣ディザスター。これを君に預けよう」
柄についた緑の宝石が怪しい光を放つ名剣ディザスター。これなら昨日の魔蛇が来ようが、鋼鉄のゴーレムが来ようがバターのようにスー、パタンと気持ちい切れ味。使い手の技量もあるから倒すとまでは行かなくても、村人が逃げるくらいの時間は稼げるだろう。
「こんなにすごいものを俺なんかが預かるわけには!それにこれを置いて行ってしまってはガランさんの剣がなくなってしまいます!」
「だったら代わりに君の剣を貸してくれ。俺にはこれで十分さ」
代わりに受け取るのは所々刃こぼれしている品質の悪い剣。実際なくて困るってことはないとは思うんだけどね。こういうのは形式上ってやつさ。
「その剣を握って想像してみてくれ、昨日の巨大魔蛇と戦う君の姿を。負けると思うかい?」
パアっと表情が明るくなった。もう大丈夫そうだ。
「村のことは頼んだ!・・・あとついでに俺の畑の世話も頼む」
もうしばらく経てば畑の緑も育ってくる頃だろう。ああ、育つのを間近で見たかったなぁ・・・。とぼとぼと家に帰り、断腸の思いで旅立ちの準備を進めることになった。
◇
「ガラン殿、着きましたよ」
「ん?はいよ」
村から馬車で1週間位の距離にある大都市ジルマン、軍事都市として名が知られていたが、今は昔ほどの力はないらしい。しかし、道は舗装され、通りが人で賑わっている様子から十分栄えているようにも見える。そこまでお金がないのだろうか?
そういや確かにここに来るまでに何度かウォーゴブリンとは遭遇したから、ゴブリンリーダーがいるってのは本当なんだろう。逆に他の魔物とはびっくりするぐらいに出会わなかったが。
「市長に会っていきますか?それとも日が落ち始めていますし、今日は宿で休んで明日にしますか?」
「いや、ちょっくら巣、潰してくるわ」
「は?え?今から!?」
「大まかな場所もこの間聞いたし。明日市長には会うからアポ取っといて」
大丈夫だとは思うが、ハリー達も村の守りを心配してたし、早く帰るに越したことはないだろう。
巣までは軍隊なら半日くらいかかるが、俺一人なら1時間もあれば着く。ちゃっちゃと片付けて、明日一日はゆっくり過ごそう。久々のジルマンなら、ああいう店も行っておかないとな!今から楽しみだぜ!
◇
「入口はまあまあ広い。見張りは3体。装備の質は比較的いいな。となると大体100体くらいか?リーダーの強さもCランクを超えるかもな」
ゴブリン王ほどの求心力はゴブリンリーダーにはない。連携が取れていないとも言えるが、逆に言えば途中で逃げ出す奴がいて駆逐するのが面倒くさいということでもある。ウォーゴブリンは逃げられると新たなリーダーやキングを生みかねないから全滅は必須条件だ。
だったら、洞窟奥の本陣までは暗殺スタイルで行こう。
「シュ!」
「シュ!」
「シュ!」
1体の首を斬り、首が地面に落ちる前にもう2体をやればオッケーってな。
これが俺の暗殺術、”気づかれる前に全部やれ”だ。そうだ、本を出そう。きっと売れる。弟子入り希望のシーフが大勢押し寄せたらどうしよう?
洞窟内部は意外と広いが、どうやら部屋が多くあるわけじゃないらしい。拡張工事中のウォーゴブリンは自分が死んだことにすら気づかないだろう速さで首を落としていく。
さすがにこの剣は切れ味が悪いな。斬った時の感触がなんかこうどうにも言えない気持ち悪さがある。でも間違えて自分に当たっても怪我しなさそうなだけが利点か。
「食事中失礼、でももう少し行儀よくしてくれると助かる。こぼれてるのマジ気持ち悪い」
食堂らしきところで騒がしく食べている10体も静かに息を引き取る。肉だけじゃなくて野菜も食え。いや、やっぱ農家的にこいつらには食べさせたくねえな。
さて、一際大きな部屋についた。15体ほどそばに控えている奴らと、1体だけ兜と立派な剣を持ったリーダーらしき奴とリーダーに意見してるっぽい奴が見える。ここ以外は大体潰したから、この本陣で終わりだな。
じゃあもう暗殺じゃなくて堂々とやって良さそうだ。
「ゴブリンども!1匹も逃がすつもりはねえから全員首を置いてけや!」
「Gyaaaa!」
何言ってるかはわからんが、まあどうせ突撃だろう。不揃いな剣や槍、棍棒なんかを持っているのは武器の生産ではなく略奪によるものだからだ。それでもこの部屋以外のウォーゴブリンどもは石とか工具しか持ってなかったから、こいつらは親衛隊的な立ち位置なのだろう。
一々鍔迫り合いなんかしてられないから、相手の武器ごと叩き切る。へし折る。蹴り殺す。奴らに死角から攻めるなんて頭はないからまあ楽だこと。
大分数が減ってくると逃げ腰になっている奴らが目に入るから、足元の石ころを蹴り飛ばして体を貫く。
あと数体というところで、気づけば目の前には他のウォーゴブリンをブラインドにして自分の突撃を悟られないようにしていたゴブリンリーダーが剣を突き出していた。この攻撃の速さからしてBランクに近いかもしれない。この間の魔蛇すら単独で倒しうるほどの装備と力量を持った危険個体だったか。
まあ、俺には関係ないが。
下からの膝蹴りが剣を折りゴブリンリーダーの顎にそのままヒットする。一瞬後には天井にめり込んで首から下だけ力なくぷらんぷらんしているリーダーの姿があった。一瞬すぎて他の奴らには突然消えたようにしか見えないかもしれないが。
残りは5体とさっき意見していた親衛隊っぽくない奴だけだ。明日一日を心から楽しむため、ゴブリンどもは皆殺しだ!
◇
「それでもう潰してきたと?」
「ああ、全部で104体。確認してくれていい。ああ、リーダーは天井にぶら下がってるかもしれん。もう落ちてると思うけどな」
「さすがは勇者殿・・・と言ったらいいのか。正直賞賛と驚きを通り越して若干引いております。とりあえず確認のため軍を向かわせますので数日お待ちいただいてもよろしいですか?」
「ああ、それでいい。なるべく早くな。それで、今日はもういいか?」
「はい、調査が終了し次第お呼びいたします。報酬の件などはその時に」
「了解だ。実際報酬なんていらないんだけどな」
「まあそうおっしゃらずに。あの勇者殿と懇意にさせていただけるのであればこのくらい必要経費ですとも」
「せめて金額は減らしてくれ。財政?厳しいんだろ?あんまり無駄なことにお金使うなよ?」
朝一に市長に報告に行ったら目を白黒させながら驚いていた。早く帰りたいが、脅威が去ったと確認できるまではいた方がいいだろう。万が一ということもある。
お金がないってのに金貨50枚も出してる余裕あるのか?数か月は遊んで暮らせるほどの大金だぞ?昨日見た通りの賑わい含めてなんか聞いていた話と違う気がするんだよなぁ。
まあいい。それより、数日いなきゃいけないってことは数日遊べるってことだ。村のこともあるけど仕方ないよね、だって必要なんだから!
美人な姉ちゃん方にいっぱいお酌してもらうぞ~!
と思って飲み屋街を内心ウキウキで歩いていたら、老人と30歳前くらいの男の2人組に声をかけられた。
「勇者様、どうかこの町の者たちを市長の手から救ってもらえないでしょうか?」
面倒ごとの匂いがした。
そして俺はまだ知らない。ここでの選択によって自分の運命が180°変わることを。
①2




