第13話 王都到着 ― 修繕士の歓迎と陰謀
夕暮れ時。
長い道のりを越えた馬車が、ついに巨大な城壁の前にたどり着いた。
石造りの高い城壁、見上げるほどの城門、そしてその向こうに広がる大都会。
辺境の小さな村とは比べものにならない、人と物と情報が渦巻く場所――王都だ。
「す、すごい……」
思わず息を呑んだ。
行き交う馬車、煌びやかな衣装の商人たち、そして魔導灯で照らされた大通り。
村の子どもたちに見せてやりたい光景が、目の前に広がっていた。
「修繕士リオン殿のお出ましだ!」
門番の声とともに、王都の人々の視線が一斉にこちらに注がれる。
ひそひそ声が飛び交い、やがて歓声へと変わった。
「本当にいたのか、奇跡の修繕士が!」
「盗賊を退けたって話だろ!」
「いや、折れた剣を蘇らせたとか……」
噂はすでに広がっていたらしい。
僕は顔が赤くなるのを感じながら、必死に苦笑いを浮かべた。
王宮の広間に通されると、そこには豪華な晩餐が用意されていた。
煌めくシャンデリア、長いテーブルに並ぶ豪華な料理。
貴族や高官たちが並び、僕を好奇の視線で眺めている。
「リオン殿、遠路ご苦労であった」
国王が重厚な声で告げる。
「そなたの修繕の力、すでに多くの者から耳にしておる。――王国はそなたを歓迎する」
王の言葉に、広間が拍手で包まれる。
けれど、その視線の中には羨望だけでなく、明らかな敵意や打算も混じっていた。
「修繕士殿、我が領地の古代遺物を見てもらえぬか?」
「いやいや、まずは王国騎士団の武具を!」
「いっそ、我が家に婿入りしてはどうだ?」
貴族たちが次々と僕を取り囲み、好き勝手なことを言い始める。
押し寄せる言葉の波に、頭がくらくらした。
そんな中で、ロイがさりげなく僕の前に立ち、低く告げる。
「気をつけろ、リオン。ここに集まるのは友ばかりではない」
その言葉に、背筋が冷たくなる。
――その頃、広間の片隅。
仮面をつけた一人の人物が、赤いワインを揺らしながら笑っていた。
「なるほど、これが“修繕士”か。噂以上だな……」
声は低く、視線は冷たい。
「だが、この力……必ず我らのものにせねばならん」
その目には、王国とは別の思惑が宿っていた。
暗雲が、静かに王都を覆い始めていた。