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トワのキッチン  作者: 稲井田そう
ふわふわ♡たまご焼き
9/10

たまご焼きの作り方 まぜまぜ編

 私はトワと一緒にキッチンに向かった。


 そしておそるおそる冷蔵庫を開く。


 だってトワのこと見てると、怖かった。


 段ボールもぐちゃぐちゃだったし。


 冷蔵庫にお洋服とか定規とかコンパスとか出てきそうだし。


 ……どうか食べ物が入ってますように‼


 祈りながら開くと、卵が入っていた。


 食べ物が入ってる‼


「卵、入ってる……」


「卵かけご飯を食べるからね」


 トワは何故か得意げに私を見る。


「卵かけご飯が好きなの?」


「ううん。一番好きなのは卵焼き! でも作れないから、卵かけご飯にしてる。まぁ私のお腹の中は、卵焼きだと思ってるハズ。だから毎日、卵焼きだよ」


「何を言ってるの……?」


 トワは、本当に、何を言ってるの……?


 不安になりながら、ほかに何か探す。


 冷蔵庫のそばに、お醤油があった。


 お箸とお茶碗とお皿も。


 たぶんさっき、トワが料理したときに使おうとしていたのだろう。


「ねぇトワ、油はある?」


「うん。番組で貰った、かっこいい油があるよ」


 トワはサッとリビングの段ボールの山に向かった。


「えいやっ……ない。えいやっ……ううん? そーい‼」


 トワは段ボールを開け、ぽいぽい中身を床に放り投げつつ、すぽんっとなにかを引っこ抜いた。


「ほら! あった!」


 キラキラスマイルで言うけど、床は大惨事だ。


 あとで片づけ、お手伝いしよう。


 心に決めながら、焦げたフライパンを洗う。


 そばに菜箸──料理用の長いお箸があったので、それも一緒に洗った。


 トワはフライパンの焦げが落ちていくのをじっと見ている。


「どうしたのトワ」


「卵焼きって四角のフライパンじゃなきゃダメなんじゃないの?」


「丸いフライパンでも出来るよ」


 私は手を洗って、お茶碗に卵を割り入れた。


 お茶碗の中に、ぷるんと卵が滑っていく。


 ぷっくりオレンジ色の部分が卵黄で、つるんと透明で弾力があるほうが卵白だ。


 お箸を使って、卵黄を割ると、トロリとほぐれる。


 オレンジ色の卵黄にぽこんと卵白が浮くから、卵白をお箸で切るようにして混ぜれば、卵白と卵黄でマーブル状だったお茶碗の中が、黄色く変わっていく。


「なんでそんなに混ぜるの?」


 トワが首を傾げる。


「よく混ぜないと、卵黄の部分と卵白の部分がいっしょにならなくて、食べたときモサモサするからだよ」


「なんで?」


「卵黄とね、卵白、温めると固まるんだけど……それぞれ固まる時間が違うんだよ」


 私は家庭科で習ったけど、トワは……知らないのかもしれない。


 お仕事とかあるから、早退するって呟いてたの、見たことあるし。


「だから混ぜて、固まる時間を一緒にするの」


「混ぜる機械が無いと駄目だと思ってた」


 トワは「お箸でもできるんだぁ」と魔法を見るみたいに言う。


「うん。それにきちんと全体が混ざれば、ずーっと混ぜてなくていいの。このドロッとした卵白がさらさらになれば大丈夫」



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