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トワのキッチン  作者: 稲井田そう
ふわふわ♡たまご焼き
6/13

推しのピンチ

 夕食のあと、私は一階のリビングのソファでゴロゴロしていた。


 お母さんがお風呂に入っているから、順番を待ちだ。


 お母さんはさっき入ったばかりだから、しばらくゴロゴロできる。


 ああでも、お母さんが「しばらくしたら換気扇のスイッチ消しておいてね~」って言ってたっけ。


 今日の夕食はカレーだった。


 作った後も換気扇をつけたままにしておかないと、部屋がカレー臭くなるから。


 小さい頃は甘口だったけど、最近はずっと中辛。


 はじめのうちは中辛なんて絶対ムリだと思ってたのに、今は平気。


「うーん」


 私は寝返りをうちながら、スマホを眺める。


 ホーム画面には、トワの顔。画面の中のトワは、元気いっぱいの笑顔で笑っている。


 そんなトワが、今日からお隣さん……。


 私はリビングの窓から隣の様子をうかがう。


 トワの家はカーテンがぴっちり閉められていた。お家にいるのかも分からない。


 ──私のことは、いないものだと思って


 私はトワの言葉を思い出す。 


「会っても挨拶とかしないほうがいいのかなぁ……」


 でも挨拶は学校でもしたほうがいいって先生も言ってるし。


 お母さんだってお父さんだって言うし。


 いないもの扱いって、幽霊とかおばけ扱いってこと……?


「う~ん」


 私は唸りつつ、スマホを操作する。


 いつもこの時間、ネットでスタパル公式アカウントを見ていたから、今日も無意識のうちに開いてしまった。


 スタパルは、グループ全体の公式アカウントと共に、メンバーたちのアカウントがある。もちろん、トワのアカウントもある。フォロワー数は、33万人‼


 隣に住んでいるのにアカウントを見るのは、悪いことをしている気分がする。


 でも友達のアカウントだってフォローしてるし。


 それとも、外したほうがいいのかな?


 トワのアカウントを見ていると、新しい呟きがパッと出てきた。


『カレー大好き‼ 小学校の頃、給食がカレーの日は、四時間目からソワソワしてた‼ 余ってたらおかわりもしてたよ‼  みんなはどう?』


 え?


 トワ、カレー好きなの?


 今までトワがカレーについて何か言ってることはなかった。


 それにさっき、カレー断ってたし……。


 なんかこだわりとかあるのかな?


 中辛じゃ物足りない‼ とか。


 トワの呟きには、早速コメントが来ていた。


『私もトワちゃんと同じでおかわりしてた‼ 一緒だぁ‼』


『給食のカレー、自分もおかわりしてましたよ。懐かしいです笑』


『トワ、カレーはご飯? ナン? どっちが好き? 醤油かける? それともソース?』


 いいなぁ。


 私はコメントを眺める。


 トワの呟きに、コメントしたことは一度もない。


 だって緊張するから。


 変なこと言っちゃったら嫌だし。


 だから、いいねを押して好きだよって伝えてる……つもり。


 ──私のことは、いないものだと思って。


 トワの言葉を思い出す。


 いいねもダメなのかな?


「……ん?」


 悩んでいると、焦げ臭い臭いがしてきた。


 この感じ、お隣から⁉


 私は慌ててリビングの窓に向かう。隣の家のカーテンは全開になっていて、トワが急いで窓を開け、すぐにまた部屋の中に戻っていってしまった。


 火事だったら早く逃げなきゃいけないのに!


「トワ‼」


 ここは一階。私は窓のそばにあるサンダルを履いて、大急ぎでトワのリビングに入った。


 中は私の家のリビングと違って、何にもモノが置いてない。


 きょろきょろ辺りを見渡すと、キッチンにトワの姿を見つけた。



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