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トワのキッチン  作者: 稲井田そう
ふわふわ♡たまご焼き
4/9

アイドルの時と違う推し

「わぁ~お仕事の都合で一人暮らしなんて~……すごいわねぇ~」


 リビングでお母さんがトワと話をしている。私はトワ、お母さん、自分のぶんの麦茶をグラスに入れながら、二人の話に耳をすませる。


「まぁ……仕事なので」


 トワはクールに話す。


 ライブの時とか動画の時と全然違う。


 いつもなら全部言葉の最後に「!」がつく話し方だけど、今日のトワはすごく静か。


 それに早口だ。


 聞き取るのもちょっぴり難しい。雰囲気が違い過ぎてトワじゃないみたいだ。


 だからかもしれない。最初はドキドキでいっぱいだったけど、今は不思議だと思うほうが大きい。


「でもぉ、まだ学生さんよねぇ~? 何歳? どんなお仕事してるの~?」


 ママ、アイドルだよ!


 言いたいけど言えない。


 私はトワの麦茶を注ぐのに必死だから。


 こぼしちゃったりしたら大変だ。


「17歳、高校二年生です。仕事は……テレビ関係です」


 トワは言う。


 やっぱり公式サイトに出てるトワのプロフィールと同じだ。


「そうなの~! 高校生のうちから独り暮らしもお仕事も、いっぱい大変でしょぉ~。何かあったらいつでも言ってちょうだい?」


 ママはトワがスタパルのトワだって気付いてないみたい。


 一緒にテレビを見ているし、私の部屋にポスターだって飾っているのに。


 トワがメガネをかけているからだろうか。


「ご迷惑はおかけしないようにします」


 あと、話し方が違うからかも?


「迷惑だなんてとんでもな~い! 大丈夫よ~。それにほら、うちの子一人っ子だから~お姉ちゃん出来て嬉しいと思うし、ね~」


 お母さんがこっちに振り返る。


 トワを見ると、彼女は冷たい目で私を見ていた。


 なんか悪いことしちゃったかなと不安になる。


 というか、これトワのプライベート? 私生活? ってやつだよね?


 芸能人とか有名な人にも、自由にしたい自分の時間があるって聞くし、今ってよくないことなのでは……。


 私はうつむくと、お母さんは私を見て優しい笑みを浮かべた後、トワを見た。


「今は緊張してるみたいだけど~優しい子なの。困ったことがあって、私がいないときはあの子に聞いてみて。ね~、ここな~」


「う、うん……」


 お母さんに話をふられて、私は一生懸命頷いた。


 トワが困ってたら……いや、トワじゃなくても助けたい。


 困ってる子がいたら助けてあげてって、トワ、動画でいつも言ってるし!


 トワは「どうも」とお母さんと私に会釈する。


「あ、そうだ~! よければ一緒にお夕食はどうかしら~? 今夜カレーなの」


「カレー……」


 トワの雰囲気が、少し変わった気がした。


 さっきまで落ち着いていて静かな感じだったのが、氷みたいに冷たい気がする。


「大丈夫です。お引越しの片付けがあるので、私はこれで」


 そうやって立ち上がるトワは、仕草も声も全部、動画で見る姿と違っていた。



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