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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
【第五章】第一節:王城にて(第五賭:対経理文官、対兄)

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第42話 妹の思惑、俺の思惑 ~ルティード視点~



「また面倒かつ大きな案件を持ってきたな、あの妹は」


 妹が去った後の室内で、私は一人、そう独り言ちる。



 血の繋がった相手ではあるが、情はない。

 だからあの場で妹からの要請を断る事もわけはなかった。


 それでも調査を請け負ったのは、それが俺の宰相補佐としての仕事の範疇であると同時に、公爵家次期当主としても意味ある事だと思ったからだ。



 『王城内の不正を正すのは宰相補佐の仕事のうち』というのは、そのままの意味。


 対して『公爵家次期当主として、この件を明るみにする事に意味がある』というのは、今回の調査対象である文官長が、敵対派閥であるダンドール公爵派もとい侵略派に属する家だからだ。



 王城経理部といえば、王城の要職の一つである。

 そこに所属する敵対派閥の男を一人、正当な理由で排除する事には大きな意味がある。


 少なくとも、王城内におけるかの派閥の影響力は下がるだろう。


 それどころか、国庫を脅かしたという事実は、国の屋台骨を揺るがす不正だ。

 社交場でそれを論えば、かの派閥の社交的発言力さえ下げる事さえ可能になる。



 そうなれば、相対的に王族派もとい和平派の影響力は増すだろう。

 派閥内での俺の発言力や、神輿たる陛下からの信頼も上がる。


 つまりこれは、『結果主義の俺が、結果を得るためのいい機会』なのである。

 動かない訳がない。



 その辺を、分かっているのか、いないのか。

 事実は分からないものの、少なくとも最近の妹を見る限り、確信犯のような気がするが、そんな事はどちらでもいい。


 結果が付いてくれば問題ない。

 宰相補佐の権限と、スイズ公爵家の権力、何なら事前に国王陛下からの調査許可まで得て、万全な状態で調査に挑む。

 結果は自ずとついてくる。



 懸念すべきは、そもそも不正などというものが存在しなかった場合だが……。


「今の妹が、俺が一度の失敗で妹を見捨てるだろう事を、目算に入れていない筈がない」


 そうでなくとも、本来『部外秘資料の写しを取る事』は罪になる。

 王妃教育を受けた妹が、その事も、俺がそういう事を取り締まる立場にある事も、知らない筈はない。


 それでもアレを俺に見せた事。

 そして直近――夜会の一件で成果を上げた事と、先日陛下の言質を取った上で、自分に利のある後宮内人事を行った事。

 それらは、実績とするには十分だ。


 実績とは、すなわち成果である。

 成果主義の人間が、成果を評価基準にしない筈などなく。


 このくらいの件なら、妹を信じてやってもいいと判断した。

 もちろん今回成果が出なければ、以降は取り合う気などないが。



 まぁ今の妹ならば、俺がそう思っている事も看破しているのではないだろうか。

 俺も、特に隠していない事だしな。


 それでも尚賭けに出る理由が、何かあるのだろう。

 その何かが何なのかは知らないが。



 まぁ何も守れず何も残らないような、以前までの生き方をする妹よりは、たとえ賭けでも博打でも、行動する方が建設的だ。

 そういう人間が、成果を生む。


 俺は、今の妹に情はないが、それでも以前よりは幾分か評価しているつもりだ。

 


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