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真実の『家族』に気が付いた王妃の時戻り ~王妃エリスは賭け続ける~  作者: 野菜ばたけ
第四章:やり直し王妃、子どもたちを慈しむメイドを求める

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第29話 時戻り前、“名も知らなかったメイド”に関する記憶



 当時の私の周りには、陛下に情報を流しているメイドと、怠惰な腰掛メイドたち、側妃に味方するメイドたちか、王族との敵対派閥の長であるダンドール公爵家のお手付きが蔓延っていた。


 後で調べてみたところ、後宮内の全員が余すことなく、多かれ少なかれどこかしらの息がかかっていた。


 その事を知った時の絶望感はどれほどか。

 世の中に戦慄したものだ。

 後宮はまごう事なき、私たちを閉じ込めいたぶり放置するための鳥かごだった。



 そんな場所で、私は自分の味方になる――最悪でも積極的・消極的に限らず、正しく『敵にならない』人を探さねばならない。


 ロディスとリリアを守るための、二人に親身になってくれるメイド。

 危害を加えず、情報を流さず、二人の幸せを真に祈って行動してくれる人。


 そんな人を探さねばならない。

 そう考えた時、何千何万と働いている王城内にほんの数人だけ、かき集めて掬い上げて、濾して辛うじて、心当たりと言っていいような相手を見つける事ができた。


 その内の一人が、アンという名のメイド。

 私が覚えている時戻り前の記憶の中で、早期にこの後宮から消えたメイドだ。



 《《その子》》に関する直接的な記憶は、それ程ない。

 もしかしたら接点を持った事があったのかもしれないけど、それさえ覚えていないような相手。


 それでも時戻り前に側妃の子飼いのメイドによって、どうやらいびられ、死に追いやられたらしい可哀想なその子は、私の希望の光になり得る。



 書類でしか知らない相手であり、簡単な素性しか知らない相手。

 それでも彼女の身に何が起きて、彼女がいつ死に至るのかは、文字の上で知っている。


 私が持つ手掛かりは、それだけだ。

 彼女にとっての『審判の日』がズレれば、私がその死に干渉できなくなる。

 それを恐れて、彼女に対しては、これまで敢えて殆ど行動していない。


 おそらく日常的に虐めを受けているのだろう事を知りながら、私は何もしてこなかった。


 そこに心が痛まなかった訳ではない。

 見殺しがどれ程ひどい罪なのか、実際にされた私が、知らない筈もない。


 そんな人間が母だと知ったなら、ロディスは私に幻滅するだろうか。

 そうも思った。


 それでも私は、『確実さ』を選んだ。


 この選択による犠牲への罰は、彼女のこれからを最大限よりよくする事によって、償いたい。

 

 大事にするから。

 慈しむから。

 だから子どもたちのために、力を貸して。

 子どもたちに、よくしてほしい。


 そんな祈りと共に、朝日が昇る。



 いつものように、一日が始まる。


 私ではないその子の、審判の日が。

 私たちの未来への分岐が、きっと始まる。



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