それまで
金城さんはそんな話をしてくれた。
「この話に出てくる「腕」つまり、兼続の腕はその木箱の腕でしょうか?」
「はい。そうです。これが兼続の腕、または嚼塊異明神の腕とも言われています。」
「嚼塊異明神の話に準えてそう言った名前を付けられたのですか」
「うーん。眉唾な話みたいに聞こえるかもしれんが実は違うんだ。兼続の魂と嚼塊異明神魂はイコールで繋がっていると考えてほしい。彼らは魂をずっと持ち続け、一つの体を持ち続け生きていた。なのだから兼続の腕であり、嚼塊異明神の腕であるのだ。そういえば、あなたの近くにも「頭」があるでしょう。」
「はい…ありますけど」
「その頭も、兼続です。」
まっすぐ見てそう言われた。
「なぜそれを明神と言ってしまったか…吾輩はわからないのですが…」
「わたしも、そんなこと父から聞いていませんし…」
「そうですか。後、もう一つ。あなたに伝えたいことが。あなたと吾輩は六百年後の子孫なのです。」
恐ろしいことを言ったな、そう思った。
「はぁ…私は何かによって殺されてしまうのですか…?」
「吾輩も信じきれません。ある種、おとぎ話のような気もするのですが、誰かわからぬ手も残っていますし…突然ですが、今度の土曜日、空いていますか?」
「えぇ。空いていますよ。」
「したら、こちらの住所のところまで来ていただけますか?」
そこには金城寺の住所が書かれていた。
「吾輩のほうが整っていると思います。資料もありますので。吾輩もつい最近そのようなことを父に言われ、急いでここに来たもんですから、まとまっていないことや、わからないことが多々あります。父が知っているので、どうすればいいか、話しましょう。」
バァーっと言われたので、うなずく隙もなく、聴くだけだった。
その後、また何かを唱え得始めた・
「願和久婆四方八方古乃神殿遠紙部刀変賜不」
さっきまで豪華だったあの神殿は一気にただのしぼんだ紙へ変容してしまった。
「ささっ。中へ出ましょう。」
腰を曲げ、出てきた。
「今日はありがとうございました。今度の土曜、金城寺に来てください。」
「わかりました。お気をつけ、お帰りください。」
金城さんは車に乗って神社を後にした。一日の少しの時間なのに、一年がたったように疲れた気分だった。私はその場にすわり、沈む太陽を眺めて時間が少しづつ溶けていった。