長年の怨恨
おもしろい?
始まりは、烏山一族の中の一人が金城寺の一人の僧侶を竹槍で殺してしまったことからだ。その男は烏山総十という。総十は「なぜか無性に殺したくなった。頭の中の頭痛が治る予感がしたから。」と意味の分からないことを話したらしい。その僧侶の妻が怒り、総十の妻を殺した。愛した人を失った人の悲しみを深く感じてほしかったのだろう。
そこからは無秩序な殺し合い、泥沼になってしまった。恨んで殺して、殺され、殺されないよう殺して、また誰かが殺して…人が死ぬのは当たり前、そういう世界だった。
ある日、侍烏帽子の金城兼続という男が言った。「こんなチマチマ戦うのでなく、男どもを集め、大合戦をしたほうがいい。」そういう話が生まれ、金城家の親戚や、烏山の親戚には、「男ども、満月の夜、金城寺にて」という手紙を渡した。
来る満月の夜、烏山家は多くの仲間や親戚を集め、うわぁあとやってきた。その男の声に気づき、金城家も負けじと烏山家に詰め寄り、木刀やキラリと尖れた刀で素人なりに戦った。烏山の将軍は烏山家の本家の人間である烏山豪厳。名前の通り、豪快な器の狭い性格だったそう。金城家の将軍は金城弱高という僧侶。血で血を洗うその大合戦は見事な技もなく、勝つか負けるか殺せばいいという情もない大合戦だった。満月には赤く煌めく血の閃光が降りかかる。金城家は押され気味で、寺に烏山が入りそうな勢い。寺には弱高が。将軍は何としても守る。そういう気持ちで、寺の前には人の壁が生まれた。弱高はもう負けてしまうと思ったのか、木魚を叩き、お経を始めた。かすかに聞こえる弾みのいいリズムのお経と、怒声。
「もう、死ぬのか…」そんな気持ちを金城家は思っていたのだろう。その時、一言を大きな声が聞こえた。
「打ち取ったりぃぃぃぃぃ!」金城寺に響く声。弱高は真っ先に奥へ向かった。
なんということだろうか。兼続が豪厳を後ろから心臓へと刺していた。でもまだ、息はしている。かはかはと息をしている。
「なぜ裏切ったのか」気になり、兼続に聞く。
「私は、あなたなどを殺すためではなく、金城をなるべく減らしたいのです。」
「ならば、なぜ豪厳を裏切ったのか。」
「もう用がないからだ。」そう言い切った。
「わかった」弱高はそういい、豪厳を刺していた刀を抜いて、兼続の腕を切り落とした。唸り声と共に、赤い血が舞った。首も切り、殺してしまった。
「もう良し。帰れ。」弱高がそう言ってしまったら、敵味方関係なく帰路についた。
金城弱高が恐る恐るその切り落とされた腕に向かうと、まだピクピクと動いていた。弱高はその腕を見たとき、腕から、一言言葉を言った。
「貴様の子孫の六百年後の代の奴、烏山もろとも殺してやる。」そう、弱高の脳へと伝わったらしい。