プロローグ
海が橙色に輝きながら耳心地のいい音を鳴らしている。
そんなロマンティックな海を背景に君は言った。
「────。」
そう放った言葉は今まで何度も聞いてきた言葉のはずなのに、1度も聞いた事のない言葉のように思えた。
だって、こんなにも暖かくて愛に溢れた言葉なんて初めてだったから。
これが本当の愛なんだ、と心の底から思えた瞬間だった。
君の真っ直ぐで暖かい眼差しに涙が止まらないけれど、私も君に言わなければいけない。
「ありがとう。私も、私も愛してる!」
『もう限界。さようなら。』
今まで仲が良かった彼から最近連絡が来ないかと思えば急に送られたその言葉に私の脳が追いつかない。
『え、どういうこと?ちょっと待ってよ!』
急いでそう返すものの返事どころか既読すらもつかない。
半泣きになりながらブロックされているかの確認をすると、ブロックされている事が確認できた。
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…!
どういうことかも分からずに別れだけを告げられ、ブロックされた始末。
あまりにもひどい末路だ。
ブロックされていることをすぐに信じることは出来ずにそのあとも何度かメッセージを送った。
しかし、相変わらず既読が着くことはなく、途方に暮れてしまった。
どうして、またなの?この人なら大丈夫だって思ったのに…。
何度誰かを信じても何度誰かを愛しても離れていく、裏切られてしまう。
恋愛なんて私には向いていない。
そう分かっていても、恋人がいないときの孤独感、不安感、劣等感、喪失感、極度な寂しさ。
どれも耐えられなくて甘い言葉を掛けてくれる人をすぐに好きになってしまう。
また傷つくことなんてわかっているのに。
もう信じられないこともわかっているのに。
それでも、この人は違うと根拠の無い思い込みをして自分を洗脳して幸せを、愛を感じてきた。
しかし、そうして得た幸せは、愛は、本物だったのだろうか。
"偽物"の、薄っぺらい愛を本物だと洗脳することで自分を守るエゴだったのではないか。
恋愛から開放された今、私はそう思った。
恋愛なんて今度こそしない。
あんなに心を許せた相手ですら私が見ていたのは"偽物"だったのだから。
信じるだけ傷つくということを私がいちばん分かっていた。
途方に暮れた私はそのまま本棚から恋愛漫画を取り出すとベッドへと寝転がり、読み始めた。
私もこんな恋愛ができたらよかったのに。
恋愛漫画のヒロインの女の子はとても素直で自分の魅せ方を端から端まで分かっているようだった。
私もこの子のようにあの時素直になっていれば、まだ愛されていたのかな。
考えても無駄なことなのはわかっていても考えざるおえなかった。
しばらくして恋愛漫画を読み終えると、そのまま夢の中へと落ちてしまった。
夢の中ではまだ彼が笑顔で私を見つめていた。
せっかく一緒にいるのに涙が出て止まらなかった。
嬉し涙じゃなくて悲し涙だ。
彼は、「どうしたの?大丈夫?」と頭を撫でてくれた。
その優しさも全て偽物だというのに。
私はもっともっと涙を流した。
そばに居てくれるだけでよかったんだ。
目が覚めると外は橙色に染まっており、夕方になっていた。
随分寝てしまっていたようだ。
夢の中のあの笑顔な彼にまた会えたら、会えたら…。
彼の笑顔を思い出す度に胸が苦しくなって涙が溢れてくる。
終わったことなのだから前を向いていかないといけないのに。
それでも、この涙が収まることは無かった。
晩御飯を食べ終え、入浴も終わらせるとベッドに寝転がる。
明日からまた、1週間心の教室に通う。
私の通っていた中学校では、ある教師が発端でその他の教師、そして学校中の子達からもいじめを受けるようになった。
1年ほどは我慢して頑張ったものの限界は優に超えていたため、高熱を出したあの日を境に不登校になったのだった。
今は私みたいな訳あり小中学生が通う心の教室って所で生活している。
心の教室の人達は誰もいい人ばかりでとても安心する。
それでも心のどこかではまた裏切られるのではないか、虐められるのではないかと思い、軽くしか信用することは出来なかった。
今日はもう疲れたし寝よう…。
私は考えることをやめて歯磨きをすると再びベッドに横になった。
一回、晩御飯を食べる前まで寝てしまっていたからかすぐに眠りにつくことは出来なかったが、しばらくしてなんとか眠ることが出来た。
私にとって静かな部屋で眠りにつくまでの時間は地獄そのものだった。




