【第19話】破滅へのプロローグ
あの日――私は地獄の中に居た。
人類発祥の地を荒らす不届き者を拘束するため、士官学校の級友たちと共に出航したあの日。
士官たちの命令を忠実に遂行し、自らの責務を果たすために全力を尽くしたあの日。
私は地獄の中に居た。
なぜそうなったのか分からない。
なぜこのようなことが起きたのかも分からない。
何も分からず、何も知らず。
ただ級友たちが艦と共に沈んでいくのを見守るしかなかった。
共に魔術を修め、善き世界を作ろうと誓いあった仲間たちは、宇宙の藻屑と化してしまった。
なぜ?
どうして?
私たちは義務と責務を果たそうと頑張ってきたはずなのに。
『古き貴き家門』の一員として生を受け、人生の全てを人々の幸福と人類の発展に捧げてきたはずなのに。
なぜこのようなことになってしまったのか。
分からない。知らない。
頭の中をそんな言葉がぐるぐる回る。
そんな中で、私は見た。
宇宙空間にたなびくホロフラッグ。
まるで私たちを嘲笑うかのようにたなびく旗を、私は見た。
天秤と交叉する剣を描いた紋章は、御伽噺で語られている勇者の紋章。
勇者の旗を掲げた艦は、御伽噺の魔王のように私の友を皆殺しにした。
悔しい。悔しくて涙が止まらない。
自分が無力で、無能で。
友が倒れるのを見つめるだけしかできない自分が悔しくて。
だから私は艦を睨む。旗を睨む。敵を睨み付けていた。
勇者の旗を掲げた残虐非道な魔王を、いつかこの手で殺してみせると。
私は心に強く誓った――。




