切符
ヴァンパイアはお金を取らないと口にする。するの兄妹はすぐに反応を見せる。
「お兄ちゃん、ちょっと‥」
妹が兄を呼ぶと耳元に近寄ると小声でつぶやく。
「お金いらないとか逆に怖いよ。
もしかして、私達のことを食べるつもりとか‥」
妹が怖い想像をはじめて顔色を悪くする。
「確かにタダは何かあるよな‥」
兄もヴァンパイアを不審な者を見るような目でにらむ。
そんな兄妹の状態に気がついていないヴァンパイアは2人に笑顔を向ける。
「なんか、ちょっと可哀想に思えてきた。」
ヴァンパイアの屈託のない笑顔に俺の心が痛む。
「うーん、まったく下心はないのですがね‥。不憫なので少しだけ手を貸しましょう。」
楓はゆっくりと兄妹に近づくと2人に話しかける。聞き取ろうと集中するが、全く聞こえない。
ん?兄妹が笑っている??
楓は何を伝えたのだろうか‥。
その後は何事をなかったように兄妹は素直に従うようになったのであった。
「いや、何を言ったの??」
気になるので楓に尋ねるが‥
「秘密です。」
何度お願いしても楓は答えてくれない。
どうしても気になるので隙をみて兄妹に尋ねてみるが‥
「死んでも教えません。」
「私も教えられないです。」
キリッとした顔で兄妹に断られるのであった。
その後、楓が兄妹に切符を渡す。
少し気になるので楓に同じ切符を一つもらったのたが‥。
「なに、この完成度!!」
思わず声が大きくなる。
それもそのはず、紙に手書きしたようなものではなく、手触りやフォントなど地球で見た切符の同じであった。
「これは楓が作ったの?
え?いつの間に作ったの?」
あまりの出来の良さに質問が止まらない。
「え?作ったのは今ですよ。
まぁ、いいじゃないですか‥
世の中、知らなくて良い事もありますよ。」
楓では笑顔で応えるが、その目にはこれ以上質問するなという圧を感じた。