兄妹の事情
妹の命を助けて欲しいと懇願する男の子にヴァンパイアは困惑する。
「食べる?私が?誰を?なぜ?」
「お願いだから助けて下さい。」
男の子がヴァンパイアにすがりつく。
あぁ、もう見ていられない。
「と、とりあえず落ち着こう。」
全員を落ち着かせ、ゆっくり丁寧に説明する。
「「勘違いして、ごめんなさい。」」
兄妹がシンクロしながら謝ってくる。
「いや、こちらこそ怖がらせて申し訳なかった。」
ヴァンパイア共々頭を下げる。
「それで話は変わるけど、君たちはどうして、こんな町外れにいたの?
そもそも二人だけ?
ご両親は?」
兄妹の情報が知りたかったので、矢継ぎ早に質問してしまう。
「り、両親は‥」
兄である男の子が視線を落とす。
あっ、これは触れてはいかなかった質問では‥。やばっ、また泣かしてしまう。
「お兄様!
二人は話せそうにないので、私から説明します。」
何故か、楓がドヤ顔で説明を始める。
「この二人は、ココから離れた場所にある村に住んでいましたが、盗賊に襲われ、両親を殺害されています。さらに二人は奴隷に売られるところでしたが、途中で逃げ出して私たちに遭遇したのです。」
うん、何故に見てきたように説明するのかなぁ‥。ここは突っ込まない方がいいのかな。
「ん?って事は盗賊が近くにいるんじゃない?早く逃げないと!」
悠長にしていられないので、すぐに逃げる準備をしようとする。
「お兄様、お待ちくだい。
盗賊はもう来ませんから。」
「ん?どうして断言出来るの?」
「それは始末し‥勘ですよ。」
ニッコリする妹。
今、始末したって言いかけたよね?
「まぁ、何にせよ、移動した方がいいだろう。ほら、バスに乗れ。」
ずっと黙っていたヴァンパイアが兄妹をバスに乗せようとする。
「いや、でもお金もないし‥」
兄は心底困っている顔をする。
「大丈夫。金は取らないから。」
ヴァンパイアは笑顔でバスの根幹に関わるような事を口にするのであった。