客
カチカチ
カチカチ
カチカチ
カチカチ
静かなバスの車内に改札鋏の音だけが響き渡る。
正直、ヴァンパイアに文句を言いたい気持ちを飲み込む。楓はかなり不満顔だが、何とか我慢してもらっている。
『もう限界です。
存在ごと消してもいいですか?』
『いいわけないよ‥。
このやり取り何回目?
お願いだから我慢して下さい。』
『カチカチカチカチうるさいです。
どうやったら止まりますかね?』
『どうもこうも切符を鋏で切れたら満足するんじゃない。』
『だったら切符を渡せばいいのでは?』
『‥‥‥お客様の切符を切りたいんだよ。』
『チッ、面倒な‥
わかりました。
客がいればいいのですよね‥
ちょっと待って下さい。』
『いや、客なんていないよね?』
『丁度いいカモがいました。
邪魔者は排除して‥
さぁ、このままバスを真っ直ぐ進めて下さい。』
いろいろ思う所はあるが、楓の指示に従いバスを進めるのであった
指示のあった場所に近づいたのでバスのスピードをおとし、ゆっくり走行する。
半信半疑で進めていると、男女の子供を発見する。
「あっ、ほんとにいた!」
思わず、驚いてしまう。
バスを子供の近くに止め、ゆっくり扉を開く。
子供たちは初めて見るバスに怯えているように見える。ここは驚かさないように気をつけないと。
「乗れ!」
どう声をかけようかと悩んでいると、ヴァンパイアが突然声をかける。
いや、乗れって強盗じゃん。
子供たちがヴァンパイアの言葉に恐怖したのか、後退りする。
ヤバい、かなり怖がらせてしまった。
これはマズイ。
そんな状態の中、男の子が女の子を庇うように前に出ると声をあげる。
「お、俺は食ってもいいから妹だけは見逃して下さい!」
男の子は涙を流しながら懇願するのであった。




