エグ味
「グワァ!」
ヴァンパイアがまるでカエルのような声をあげる。原因は突然現れた楓がヴァンパイアを踏み潰したからだ。
「お兄様が病気を持っているわけないでしょ!!
ほら、死になさい!」
楓は何度もヴァンパイアを踏みつける。
「気を悪くしたなら謝る。
ただ、血を吸う相手に病気の有無を確認するのは常識なんだ!!
病気があると我にうつるだろ?」
ガシッ
ガシッ
楓が踏みつける足に力を入れる。
「だから、お兄様には病気はない!!
私が健康を管理してるのだから、病原体など一つもないから!」
「一つもない?
それはさすがに言い過ぎでは?
知らないから教えてやるが、人間の体には少しは病原体がいるんだぞ。」
この二人は何を言い合っているのだろう‥。二人の不毛な言い争いを見て呆れるのであった。
その後、怒れる楓を何とか宥める。
「病原体の件は置いとくとして、とりあえず血をのんでみたら?」
話が進まないので手っ取り早く血を吸わせる事にする。
キッ
楓が睨んでくるがここは無視する。
「では、のませてもらうぞ。」
ヴァンパイアが俺の首にゆっくりと牙をたてる。
チュー
血が吸われる感覚はあるが、牙の痛みはなかった。
ヴァンパイアはある程度血を吸うと牙を抜いて口を開く。
「これは凄いな。
全くエグ味がなかった。」
ヴァンパイアは少し興奮気味だ。
「病原体があるとエグ味が出るんだ。
それが全くないということは、その女の言った通りなんだろう。
いや、疑ってすまなかった。」
ヴァンパイアが楓に頭を下げる。
「ふん!
たがら言ったでしょ?
お兄様に病原体などあり得ない。」
楓は怒った素振りを見せるが顔は笑っている。
「血はもういいの?」
もっと長く血を吸われると思っていたので尋ねてみる。
「血はもういいぞ。
全くエグ味のない美味しい血だっから沢山のめたし。
こんな量をのんだのは初めてだ。」
え?そんなにのんだの?
特に貧血の症状もないけど‥。
「ちなみにどのぐらいのんだの?」
聞くのが怖いが、気になるので聞いてみる。
「のんだ量か?
我は優秀だから詳しい量がわかるぞ。
普通は多くて1ℓなのだが、今回は15ℓものめたぞ。」
15ℓ???
え、そんなに血を抜かれたら死ぬよね??
俺はヴァンパイアの言葉に血の気が引くのであった。