変化
王都を徒歩で出た俺たちは、ひと気のない所でバスを召喚した。
「バス召喚!」
掛け声と共に相棒のバスが姿を現す。
「???」
何だろう。
何か雰囲気が変わったような気がする。
「お兄様、どうかされましたか?」
俺の僅かな反応に楓がすぐに気がついたのか、声を掛けてくる。
「いや、気のせいかも知れないけどバスが少し変わったような気がする。」
「変わったですか‥
具体的には何かわかりますか?」
楓が真顔で尋ねてくる。
「具体的にねぇ‥
微妙に車体が大きくなったような気がするような。」
俺の答えに楓が僅かに驚いた表情を見せる。
「数センチの変動に気がつくとは‥
賞賛というより不気味というか‥」
楓がブツブツ何かを口にしているが、声が小さ過ぎて聞こえてこない。
「やはり興味深い‥」
楓の独り言は止まらなかった。
「二人とも、そろそろ中に入ろう。」
俺と楓のやり取りを見守っていたアリアが声を掛けてくる。
まぁ、多少大きくなろうと相棒は相棒。
今後の事とか、いろいろ考える事はあるが今は運転に集中したい。
バスの扉を開け、意気揚々と乗り込もうとすると突然声を掛けられる。
「ちょっと待った!!」
声の主は聞き覚えの無い女性の声だ。
撒いたはずのパトラ女王の声ではかったので、安堵しながら振り返る。
そこには見たことの無い女性が‥
いや、何処かで見たような‥
「おい!
何だその、必死に記憶から思い出そうとする顔は!!
まさか、この顔を忘れたのか???」
女性はなかなか思い出せない俺にご立腹であった。