妻として3
楓の神気は天界で女神から発せられたものとは比べ物にならない程に強かった。
「う゛ぅ゛ぅ゛」
一番近くにいた葵は呼吸が出来なくなり、変な声が出てしまっていた。
「ずみません!
‥めてくだざい!!
ぐるじぃ‥」
このままでは本気で窒息しそうなので、神気を抑えるように懇願する。
『あっ、コレでもだめ?
う〜ん、これ以上は小さく出来ないし‥。
地上で神気を出すのは無理そうかな。
よし、止めたよ。
これで、大丈夫?』
楓には特にこだわりは無いようで、お願いしたら神気を止めてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
葵は楓にお礼を伝えると他のメンバーの様子を見る為、振り返る。
「あっ!」
思わず、声を上げてしまう。
葵が振り返るとアリア達は全員が土下座の体勢で気絶していたのだ。
これには楓も驚いたようで
『ごめん、ごめん。悪気はないんだ。』
頭を下げることはないが、口で謝罪してくれる。
さらに楓は言葉を続ける。
『まぁ、丁度良かった。
葵とサシで話がしたかったんだよね。』
楓が笑顔を向けてくるが、葵には嫌な予感しかしない。
『駆け引きとか面倒だし、端的に話すけど‥
お兄ちゃんを独り占めにしたいんだ。
まぁ、刻を戻せば簡単なんだけど‥
それをすると、ほんの少しだけ心が痛むんだよね。
だから葵だけは記憶を残したままにしてあげるけど、どうする?』
あまりに予想外の話に思わず思考回路が停止してしまう。
『ちょっと、現実逃避しないでよ。
ほら、ちゃんと考えて。』
楓は葵の体を揺らすのであった。