家訓
妹にキスをされた。
顔をガッツリ固定されて。
舌は入ってこなかったが、それでもかなり濃厚なキスだ。
妹は長いキスを終えると唇をペロリと舐める。その仕草を見て色っぽく感じてしまう。
キスの余韻で頭がぼーーーとする。
じゃない!!
「ちょっと、何でキスしてるの!?
俺たち兄妹だろ?
駄目だよ、兄妹でキスしたら!!」
正気に戻った俺は妹に抗議する。
「え?
兄妹でキスするのは普通ですよ。
はっ!
お兄様!まさか伊集院家の家訓をお忘れですか!?」
俺の対応に妹が目を見開いて驚いてみせる。
伊集院家の家訓???
そんなのあった?
これっぽっちも思い出せない。
う〜ん、家に家訓とか飾ってたかなぁ‥。
よし、ここは素直な謝ろう。
「楓、ごめん。
家訓、全然思い出せないんだ。
異世界に来て忘れたみたい。
良かったら教えてくれないか?」
下手に嘘をついて楓を傷つけたくなかったので頭を下げる。
ニヤッ
ん?
今、一瞬だが楓が笑ったような‥。
一瞬過ぎて見間違えたかな。
「異世界の影響なら仕方がないですよ。
それなら私が伊集院家の家訓を教えてあげます。
ちなみにこの家訓を破るとご先祖様に呪い殺されるみたいなので絶対遵守して下さいね。
あっ、冗談ではないので‥。」
笑顔の妹の目は笑っていなかった。