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彼女達の戦い1
「退屈だわ!」
馬車の中に財務大臣の妻、パーラの声が響く。
突然の大声に普通であれば、護衛などが反応するはずであるがパーラの癇癪が日常化していたので、誰も反応を示さなかった。
さすがに誰も反応しないと更に悪化するので夫が口を挟む。
「おい、移動中の馬車で何を言っているんだ!頼むから静かにしてくれ!」
財務大臣のグレイが妻を宥める。
巷では鬼の財務大臣と噂されているグレイ。例え国王にだって意見を言う男だ。
だが、唯一妻には頭が上がらなかった。
夫であるグレイに宥められてパーラはイライラしながら自分の髪を弄っていた。
『昔はもっと綺麗だったのに‥。』
パーラは自慢の金髪が歳を追うごとに痛んでいくのを嘆いていた。
その後、城に馬車が到着すると、グレイは職務があるのでその場でわかれた。
パーラは夫の仕事が終わるまでは暇なので城の中をぶらぶら歩いていた。
「パーラ様。」
背後から声をかけられたので振り返ると、第二王女のサラと第三王女のルナが立っていたのであった。