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ハンマー

 葵さんと鍛治神様の押し問答は続いたが頑なに主張を曲げない為、最後は葵さんが折れることになってしまった。


 葵さんがバスの中にある医務室に鍛治神様を案内する。


 鍛治神様は医務室に入るとスタスタと斗馬の元に歩いていく。


「ちょっと待って下さい。」


 葵さんが止めようとするがお構いなしだ。


「すみませんが、近寄らないで下さい。」


 嫌な予感しかしない葵さんが必死に止める。


 鍛治神様は医療用カプセルで治療中の斗馬を数秒見つめると、どこからか取り出したハンマーを振り上げる。


「止めてください!」


 葵さんが身を挺して斗馬を守ろうとするが、鍛治神様はそれを神力を使って払いのける。


ガンッ


 ハンマーは斗馬の眠る医療用カプセルの上部を消失させる。


「いい加減にして下さい!」


 我慢の限界がきたのか葵さんがキレてしまう。


 鍛治神様は医療用カプセルで眠る斗馬に手を伸ばすと身体を触りだす。


「斗馬さんから離れろ!」


 葵さんは隠し持っていた小型拳銃をぶっ放す。


パンッ

パンッ

パンッ


 小型拳銃特有の乾いた音が連続で響く。


「チッ

 俺に飛び道具を向けたな!

 お前は寝ていろ!」


 飛び道具を忌み嫌っている鍛治神様は怒ってしまうと神力で葵さんを殴りつけて気絶させる。


 鍛治神様はその後も斗馬を触り続けてある結論を出す。


「これは駄目だな、見た目は綺麗だが肉体的には死んでいる。

 はぁ‥

 だいたい人間が神器を扱えるはずがなかろうに。

 チッ

 女神はその事を説明しているのか‥」


 鍛治神様は独り言を呟くと険しい顔になる。


「仕方がない‥」


 鍛治神様は一言呟くとハンマー振るう。


 何もない空間に亀裂が入る。


「おい!

 天使、聞こえるか!」


 鍛治神様が大声で叫ぶ。


「えっ、鍛治神様?」


 1人の天使が亀裂から顔を出してくる。


「ほれ、受け取れよ。」


 鍛治神様はそう言うと斗馬を天使に放り投げる。


「え?」


 いきなり斗馬を放り投げられた天使が驚きの声をあげる。


 鍛治神様に放り投げられた斗馬が宙を舞う。


ガシッ


 天使は全裸の斗馬を両手でキャッチする。


「グゥッ!」


 可愛らしい見た目の天使が腰を落とし脚を大きく開くと可愛くない声をあげる。


「いきなり何するんですか!」


 天使は斗馬をお姫様抱っこした状態で怒りだす。


「天界で治療してやってくれ。

 そいつには用があるから早目にな!

 ほれ、いけ。」


 鍛治神様は天使に伝え終えるとハンマーを振って空間にできた亀裂を塞いでしまう。


 ・

 ・

 ・


「え?

 これって人間ですよね‥

 あちゃ〜

 天界に人間なんか連れ込んだら大問題にらなるのに‥」


 斗馬をお姫様抱っこする天使が困惑の表情を浮かべるのであった。

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