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斬首刑

 何故、こんな事になってしまったのか‥。

 私は今、父と一緒に斬首されようとしている。

 潔白を証明する場すら設けてもらえずに‥。

 兄とロドス騎士団はまるでこうなる事がわかっていたかのように用意周到であった。母は実母のお見舞いで里帰り、次男の兄もそれに付き添っている。

 ロドス騎士団以外は国境に配備されていて動けずにいた。

 頼みの宰相達は地下牢にでも監禁されているだろう。


 もううつ手がない。

 悔しいが死を受け入れるしかない。

 

 あぁ、死にたくない。

 まだ私は国のために働けていない。

 女の私にだって、働けることを証明したかった。

 それに心残りといえば使徒様だ。

 クロスのせいで彼を傷つけてしまった。

 私にクロスを止める力があれば‥。

 本当はもっと仲良くなりたかった‥。

 恥ずかしくて子種など言ってしまった。

 私に次があれば挽回したのに‥。

 あぁ、悔しい‥。

 せめて、使徒様が無事に帝国から脱出出来るように祈っておこう。


 私は王女として、見苦しく泣き叫ぶことなく死を受け入れる。


「お前の首は俺が斬ってやるよ。」


 兄自らが斧を握っている。


「それでは、私は元国王を‥。」


 父はクロスがやるようだ。


「何か言い残すことはあるか?

 最後だから特別に聴いてやる。」


 兄が私の猿轡を外してくれる。


 兄はきっと私が命乞いをすると思っているのだろう。


 だから、私は絶対に命乞いなどしない。


「お兄様!

 お兄様が王になったあかつきにはエルフ達との戦争を避けてください。

 くだらない争いに民を巻き込まないでください!」


 兄の人間至上主義に民が巻き込まれるのだけは許せなかった。


「うるさい!うるさい!うるさい!

 お前はまた俺に意見するのか?

 また俺を見下すのか?

 俺はお前のそういうところが嫌いだった。

 父上も同じだ。

 民がどうなろうと知ったことではない。

 王のために犠牲になるのは当たり前のこと。

 言いたいことはそれだけか?

 ほら、命乞いしろよ!

 お前が俺の靴を舐めるのなら命だけは助けてやってもいいぞ。」


ペッ


 兄の靴に唾をはきかける。

 本当は顔に吐きたかったが角度と距離的に無理だった。


「気が変わった‥

 お前は手脚を切り落とした後にモンスターの苗床にしてやる。

 おっと、舌を噛んで死のうとしたな。

 ハハハハハ

 楽に死ねると思うなよ。」


 兄が斧を構える。


「まずはその右手だ。

 さぁ、大声で囀ってくれ!」


 兄が斧を振り下ろすのであった。

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