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帰還

 父が倒れたと聞いて、慌てて城に帰還するパトラ。

 とりあえず着替えろとか言ってくる者がいるが、そんなのどうでもいい。私は足早に父の寝室を目指す。


 近衛騎士が私の顔を見て、扉を開けてくれる。


 寝室に入ると父は眠っていた。


 何気に父の寝室を訪れるのは初めてであったが、今はそんなことを考える暇はない。すぐに枕元に移動する。


 目の前で父が眠っている。

 久しぶりに父の顔をしっかり見たが、こんなに痩せていたかと思うほどやつれていた。

 私は父の手を握る。

 私に父を癒す力はないが、握らずにはいられなかった。


 父の手がカサカサで肌艶も悪かった。

 普段はあんなに力強い父がこんなにもボロボロなのがショックだ。


「うっ‥」


 父が突然、目を覚ました。


「お父様!!」


 私は父に声をかける。


 父は顔を動かして私を見つけるとニッコリ笑ってくれるのであった。


 すぐに控えていた医師が近づくと父の身体を起こしてくれる。


「パトラはどうして、ここにいるのだ?

 お前は学園にいるはずだが‥。」


 父は混乱しているようだ。


「お父様、学園は去年卒業しております。

 あと、私がここにいるのはお父様が倒れたからです。」


「お〜そうだったか‥

 倒れた?」


 父は何かを思いだそうとしている様子だ。


「ずっと夢を見ていた。」


 急に父が語りだす。


「この世界に使徒が現れて‥

 我が国がその使徒に酷いことをするのだ。

 ハハハハハ

 そんな事、ありえないはずなのに‥

 その後、その事が原因で女神様の罰を受けるのだ。

 神像が毒入りの涙を流されたり‥

 国境の壁が砂になったり‥」


 父は現実に起こっている事が夢だと思っているようだ。


 この場にいる医師も護衛も私も「それ事実です!」と言いたかった。


「この状況でエルフや獣人を誘拐していた事がわかって‥

 隣国から同時に攻められるらしくての。

 ハハハハハ

 夢で良かった‥。

 その状況で王などしていたらと考えると‥」


 父は笑っている。


『お父様、それ現実です!』


 とは言えなかった。


 一応、医師と護衛の顔を見るが全員に首を横に振られてしまう。


 あ〜、お母様がこの場にいたら‥。


 駄目だ駄目だ!

 私がしっかりしないと!!


 私は覚悟を決め、父に真実を伝えることにする。


「お父様!

 申し訳ないのですが‥

 今、言われたことは現実です。」


 私の言葉を聞いた父はゆっくりと倒れ込む。


「嫌じゃ!

 きっとこれも夢じゃ!

 もう一度寝る!」


 父はゴネてしまった。

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