王の怒り2
怒りで気が狂いそうな自分を抑える為、目を閉じて心を落ち着かせようとする。
目を閉じるとすぐに厳しいが優しかった父や常に優しかった母の事を思い出してしまう。
父の代より国を繁栄させようと身を粉にして働いてきた。
全ては国民のためにと言い聞かせて‥。
それが、この無能どものせいで全てが台無しになろうとしている。
此奴らを許せるのか?
否!
絶対に許さない!!
せっかく目を閉じて怒りを抑えようとしたのに逆効果になってしまう。
唇を血がでる程、噛み締めてしまう。
「あの〜」
問い詰めていた男がまだ話の続きがあるのか無謀にも王に話しかけてくる。
「何だ?
まさか!?まだ何かあるのか??」
愚行が終わりを迎えたと思っていた王は驚く。
「一部の騎士達が使徒に対する人質とし、エルフや獣人などを勝手に攫ってきたようで‥。」
ガリッ
王が歯を噛み締める音が響く。
「今すぐ、攫ってきた者達を解放しろ!」
王の指示が飛ぶ。
まだだ、まだ帝国は終わらん。
「攫ってきた中に王族の者がいたようですが‥。」
王が膝をつく。
「王族だと?
その者達は城にお連れしろ。
いいか!客人として扱えよ!」
王は歯を噛み締めて、立ち上がる。
まだ帝国は‥
「申し上げます。」
急に女性の声が室内に響く。
もう嫌な予感しかしない。
「姫が城を抜け出して‥。」
ホッ
娘が白を抜け出すのはいつもの事だ。
何故このタイミングで声をかけてくるのだ。
「使徒様の元に向かいました。」
世話役の女がダラダラと汗をかきながら報告してくる。
「ただ会いに行ったのであろう?」
そうであって欲しいと願う。
だが、世話役は首を横に振る。
「使徒様に子種が欲しいと申されまして‥。」
王が膝から崩れ落ちる。
周囲の者が慌てて王をささえる。
「終わった。
帝国は滅びる‥。」
王はそう呟くと気を失った。