報告
ノコside
静まりかえった冒険者ギルドの中でノコが一人何かを始める。
出入口には鍵をかけ、個室の場所のさらに奥の隠し部屋まで移動する。
完全に一人になった事を確認し、懐から水晶玉を取り出す。
この水晶玉は魔力を流すと対になる水晶玉と会話ができる仕組みになっている。
ただ距離が離れているとその分必要になる魔力が膨大になる為、滅多に使われる事がなかった。
しかし、とある国で開発された魔力を増幅させる装置を使う事でその問題が解決されたのである。
ノコが増幅装置に魔力を流す。
その装置から増幅された魔力が水晶玉に流れると透明だった水晶が光だすのであった。
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「状況は?」
水晶玉から男の声が聞こえてくる。
「予定通りに進んでおります。」
ノコが少し緊張気味な声で応える。
「使徒は我が帝国の脅威になりえるか?」
感情をあまり感じさせない男の声がノコに尋ねる。
ノコは少し考えてから口を開く。
「戦力的には脅威でしかありません。
我が国が本気で挑んでも使徒に傷すら付けられないと思います。」
ノコの返答に男が呻き声を一瞬あげる。
「四天王でも無理か?」
ノコの言葉が信じられないのか帝国最高戦力の名前を出し再確認する。
「無理です。
女神の宝具の中に入ってしまえば、神以外に傷をつけるのは不可能です。」
「‥‥‥」
ノコの言葉を聞いて男が絶句する。
ただ絶望する男にノコが救いの手を差し伸べる。
「普通に戦えば負けますが、勝てる手はあります。」
ノコの発言に男が驚く。
「本当か!?」
「はい。
使徒は優しすぎます。
それを利用すれば確実に勝てます。
そうですね‥‥
幼子でも盾に使えば手も足も出せないかと‥。
人質がもっとも有効的です。」
ノコが冷淡に語る。
「わかった。
情報はある程度揃ったので、そろそろこちらに戻れ。
後始末にアヤツらを呼ぶか?」
「必要ありません。
既に入れ替わった職員は処分していますので‥。
二、三日中には本国に戻ります。」
ノコの返答に男からの反応はなかった。
すぐに水晶玉からの光が消えてしまう。
その後、王都の冒険者ギルドからノコという職員が消えてしまうのであった。
 




