犠牲
バスは順調に進んでいる。
時々ナビに敵意を持った赤色のマークが表示され近づいてくるが、全員バスに轢かれて灰色のマークに変わってしまう。
ちなみに灰色は死んで1時間以内の色らしい。
まぁ、死体が全て表示されたら地図が埋め尽くされる可能性があるからね。
「迷わず、成仏して下さい。」
一応、轢かれたモンスターに祈りを捧げておく。
この作業を何度かしている時に気がついた。
ちょっと先に街があることに‥。
「え?
このままだと街を突っ切る事になるけど‥。」
俺が困惑していると隣の天使がかる口を叩く。
「えぇ、突っ切りますね。
でも、大丈夫ですよ。」
No.9さんはニッコリ微笑む。
その笑顔を見て何か違和感を感じる。
何だろう‥嫌な予感しかしない。
「女神様から頂戴したこのバスには傷一つつきませんから!」
キリッじゃないよ。
何ドヤ顔になってるの!!
「いや、ダメだからね!
街の人はどうなるの?」
そこでドヤ顔の天使が目線を窓に向ける。
まるで刑事ドラマに出てくる窓際のブラインドがあるかのように指でプライドを開けてみせる。
エアだけど‥。
「グレイン王国の一大事ですよ‥。
多少の犠牲は致し方ないと思います。」
「いや、ダメだから!
街の人に犠牲を出したらダメだよ。
これは絶対だから!!」
俺の言葉にNo.9さんが答える。
「まさか全ての人間を助けるとか言いませんよね?
それこそ傲慢では?
たとえ神でも全員を救う事は出来ませんよ。
神が出来ないことを貴方はやりますか?」
No.9さんの目が俺の目をとらえるのであった。