車体
突然、彼に広い場所を貸して欲しいと言われて正直驚いたが、もちろん快く承諾した。
ただ何か目的があるのだと私の感が伝えてきた。
今は空の大きめの倉庫を貸してあげることにする。
彼を倉庫に案内すると作業を見学させてもらう事にした。
娘と妻も同席したいとごねたが、あまり人数がいると遠慮するかもと言って二人っきりにさせてもらった。
彼は倉庫の広さを確認するとバスと呼ばれる巨大な馬車を何もないところから出すのであった。
大きい!
私もいろいろな馬車を見てきたが、コレは群を抜いて大きかった。
「美しい!」
思わず心に思っていて事が口に出てしまう。
私の言葉に彼は本気で喜んでくれた。
バスを褒められて嬉しかったようだ。
それにしてもお世辞抜きで美しいと思った。
形は四角いが所々が丸みを持っていて、またそれが良かった。
彼の説明で名前を教えてもらったタイヤは実に興味深かった。
触ると硬いが、少し弾力がある。
そして重厚な黒が良かった。
彼に許可をもらって触ったが、今までに見たこともない素材で出来ていた。
女神様から賜ったと聞いていたが、ここまで凄いとは‥。
私は知らず知らずのうちにバスの魅力に取り憑かれていたのである。