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暴走1
イスカ父が何かを口にしようと唇を動かす。
この時、イスカ本人とイスカ母は状況を掴めないでいた。
「依頼ご苦労様。
困っていたから助かったよ。」
イスカ父が丁寧なお礼を伝えたのでイスカとイスカ母はホッとしていた。
しかし、イスカ父が意外な事を口にする。
「実は、我が家では古い習わしがあって、助けてくれた人にお礼をするようになっているんだ。」
ん?
習わし??
イスカとイスカ母は初耳なので首を傾げる。
「恩には恩を数百倍で返す習わしだ。
これをやらないと呪いで死ぬ事になる。」
下手かよ!
イスカとイスカ母は同じ事を思っていた。
「本当ですか?」
斗馬が身を乗り出して驚いている。
話に加わって否定したいが、斗馬の反応がそれほど悪くなかったので傍観することにした。
「本来ならお金を渡したいところだが恥ずかしい話、我が家の財政は火の車でね‥。
いつ一家で首を括ろうかと悩んでいるところだよ。」
「いや、それは無理があるよ!」っと心の中で思うイスカとイスカ母。
「そうなんですか!?」
疑う事をしない斗馬であった。