異世界斡旋所
斗馬は異世界物にハマっていた。漫画、アニメ、小説など異世界物をこよなく愛していた。いつか異世界に行くチャンスが訪れたら戦闘は極力行わず、目立たずスローライフを送りたいと本気で思っていた。
召喚陣を見た時に薄々勘づいていた。これは異世界に呼ばれていると‥。きっとこの後、目を開けると白い空間で神様と邂逅することになるであろうと‥。
斗馬は勢いよく目を開け、そして固まる。斗真の目の前に広がるのは役所のロビーのような場所であった。
「No.5の方、三番窓口にお越し下さい。」
「手続きの終わられた方は、緑の線に沿ってお歩き下さい。」
斗馬が呆然としていると、おばさんに声をかけられる。
「整理券とった?早く取らないと手続きが遅くなるよ。」
「あの‥、ここは何処ですか?」
「はぁ?異世界斡旋所だよ!知らないのかい?」
目の前のおばさんが、馬鹿にしたような顔をする。
「ちなみに神様はいらっしゃるのですか?」
「神様?ここにはいないよ。忙しいお方だから中央にいるはず。」
「皆さんはどのような存在ですか?」
おばさんは面倒くさそうな顔で答える。
「質問の多い子だね。見てわかんないの?私も受付で働いている子も、皆んな天使だよ。」
斗馬は落胆する。天使といえば、透けそうな衣装に羽、そして頭には輪っかがあるイメージである。それがこんなおばさんやスーツ着たおばさんだなんて‥。
「あんた失礼な子だね。異世界じゃなくて地獄にでも行く?」
おばさんから尋常じゃない殺気を感じた。
「大変失礼致しました。」
斗馬は咄嗟に土下座をする。
「次はないよ!」
何とか許してもらえた。
斗馬は気を取り直して、整理券を取りに行く。斗馬の番号は30番だった。
その後待っていると、受付がざわつき出す。
「すみません、あなたは今回の異世界転移の対象者ではありません。」
「リストにお名前がありません。」
推測するに、異世界に呼ばれた人に巻き込まれてしまったらしい。
巻き込まれたことを説明された生徒達は、怒ったり、泣き崩れたりと大変だった。
最終的に異世界に行くか、地獄に行くかの二択になり、全員が異世界に行くことになった。天国って選択肢がないのはブラックだよね‥。あっ、おばさんに睨まれた。