看過
何だ、この乗り物は!?
帝国でも見たことが無い。
広さといい、椅子の快適さ。
穴から冷たい風が出てきている。
壁にある透明の膜はなんだ!?
外が透けて見えている。
見たことが無い材質。
もう未知が多過ぎて気が狂いそうだ。
おっと、慌てない慌てない。
まずは状況確認だ。
とりあえず自己暗示中の記憶を覗いてと‥。
なになに、トリス商会に圧力をかけて旅に同行‥‥目的は‥‥食べ歩き‥‥盗賊に襲われて‥‥助けられる‥‥この乗り物は馬車ではないのか!?
よし、だいたいの状況はわかった。
さて、どうしてくれようか。
とりあえず、あの男を洗脳しようかな。
私が席を立とうとすると2人の女が近づいてくる。
葵とアリアだったかな。
「勝手に動き回ると危ないですよ。」
葵が優しく話し掛けてくるが、声に圧がかかっていた。
「大人しく座っていろ。」
アリアは葵とは違い殺気に近かった。
何故、私は2人に怒られているのか?
直前の記憶にもそんな感じはなかったが‥。
身構えようとすると2人が同時に話しかけてくる。
「あなたは誰ですか?」
「お主は何者だ?」
何故バレてのだ。
自己暗示が解けただけなのに‥。
「ビクトリアですが‥。」
誤魔化してみる。
「帝国の皇女が何の用ですか?」
葵が感情のない声で私の正体を看過してくる。
こうなったら仕方がない。
2人に洗脳魔法を‥‥
発動しない!?
「無駄ですよ‥。
このバスの中で魔法何か使わせませんよ。」
葵が淡々とつぶやくのであった。