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俳句~2021~  作者: 天やん
2/3

おおよそ後半

・少晦日空の財布の道化師や


・父よ父よ散華赤城に雪の積もる


・暖房の鳴る部屋一つだけ鼾


・温かき朝食サンタ追う街角


・朝食の熱がサンタのいた証拠


・朝日が優しくなったから冬至も過ぎる通勤路


・卑怯だけ煮詰めた顔した鴎かな


・ドキドキの幕間春休みは蕾


・年末や罵声の弾む商社前


・原罪を背負うて今日の冬至越す


・空っ風ハズレ馬券が吹雪くなり


・冬の雨つんざく救急車は二台


・死に体の冬や蟻が縮こまる


・雪積もる路面二度寝の月曜日


・サラバとてホームに残す細雪


・手鎖鳴る十一番の背の風花


・心なし木枯し強し古都の閨


・パチンコの帰りにぷかり冬の月


・役割を果たせし祖父の原爆忌


・校門の最後の影を送り春


・雪雪雪あの娘と僕の距離にある


・阪急のドア向こう雪被るあの娘


・冬の雨カイロ代わりのおでんかな


・原爆忌そして歩いて花畑


・切れかけた街灯の下冬来たる


・三周忌手紙が着きて立冬


・俺はずっと冬休みだぞ鉛空


・文化祭冬めくあの娘のブレザー


・産まれし子二十重の幸福願う秋


・「助けて」の声も枯れ果て年度末


・車窓からコートの列や冬来る


・涙してそして秋色応援団


・盃にふと一葉の夜紅葉


・ヤカンに沸いた熱燗イブの夜風


・アネモネのもっと気楽に怒る日や


・納棺を済ませた夜長に「おやすみ」


・狼の遠吠え何処か空高し


・秋雨の祝日国旗も静か


・午前四時眠剤やさしき冬立ち


・ガソリン車曇る10km冬浅し


・夜紅葉月明かりの水面に揺れ


・秋の夜の麦酒焼酎日本酒や


・「人でなし」叫んだ選挙馬肥ゆる


・小夜曲に自棄酒煽る星月夜


・神棚を拭いて朝日の神無月


・秋湿りあの娘の癖っ毛短き日


・秋雨やテラスに揺れるハンモック


・遠吠えオンボロ車駆ける秋


・「たった紅葉」病室の空は明るし


・歓楽街のれんなくして死せる秋


・暗夜行く足跡二つ紅葉燃ゆ


・ラキストを潰したあの日も秋雨


・秋雨にしかめっ面して赤ワイン


・冷や酒と麦酒で満ちる後の月


・鰯雲空き缶拾う吾を見る


・秋雨やあの子の傘の二歩後ろ


・秋風や砂嵐ばかりのテレビ


・ボロ車背にする天城秋高し


・正しさを撒いて秋桜枯れにけり


・銀座飛ぶコジコジ見たり酔いの果て


・黄昏を行く背に子らの声響く


・風津波7年越しの失踪


・秋空に行く面接や弓のごと


・戸を塞ぐ虫になりたし妻の前


・打球音高し秋暁の校庭


・秋雨に浮かび銀河の砂掴む


・名月や首吊り死体の影長し


・名月やエゴサ止まらぬ死にたがり


・名月や終電帰りの死にたがり


・粒大き雨に涼し残暑の夜


・名月や高速のトラック長蛇たる


・秋高し水底の月を飼う


・台風を待ちて月見したモデルナ


・台風や銀座二丁目傘一つ


・四十九日納骨が白き月


・ミサイルの影が一筋秋麗


・鈴虫や「月見バーガーの季節です」


・鈴虫や魂の澱の聖歌隊


・街灯に影法師一つ秋彼岸


・「おやすみ」を繰り返しては熱帯夜


・落日も私は生きてるサウダージ


・政治的不幸美味し正しさの冬


・長雨行くサングラス越しの涙


・鈴虫がイノセントに月を飼う


・山彦に返事す蜩エゴイスト


・夕焼雲一人ひとりの牛カレー


・まっさらな人生を夏雲おちる


・夏祭り待ちぼうけの池波一つ


・夏祭りVRのあの娘とふける


・夏雲に蜘蛛の糸垂らす美術室


・雲の峰祖父のやまびこ響きけり


・不摂生肥満通風秋の風


・短夜や雨音にふらり投身


・草いきれ夢の先のまた先に


・君を追い水母は今日も夢に浮く


・海原へ旅するスイカも孤独なり


・簾越し夜雨の先で待つ貴方


・缶ビール疲れた顔が笑む鏡


・夏晴れが憎いと言えぬ原爆忌


・サビ残も更衣してバ美肉や


・コロナ下のデモ隊日傘が一本


・振り返れば理不尽だった獣道


・夏雲や私は私であるがゆえ


・入道雲オンボロ車が窓を開け


・なめくじの道をつれづれと星


・蝉しぐれ真昼の月を眺む塾


・路に爆ぜる雨やヘッドライトに星


・絵日記に毎日咲くか朝顔や


・白球汗落つ台上の静謐


・ビール飲み五輪見る父に立ち至る


・五輪の夜埃が積もりしリモコン


・ちゃぶ台を囲んで冷麺五輪の日


・あの日あの時が夢だと熱帯夜


・ヒーローの退職届回す夏


・夏空の雲が行くままチャリをこぐ


・扇風機十年選手の枯れた音


・雨の夜に曇る街角傘一つ


・夕立や坂道過ぎて向かい風


・親父のワクチン待ちたる避暑の椅子


・夏みかん青し夕暮れの湿度


・逃げる俄か雨夜立ちの電車


・台風の青さ自転車煙草


・二日後の不倫織姫貞操帯


・妻の寝顔眺める夜は長きけり


・非正規も「いつか……」と麦酒アルタイル


・紫陽花に弾けてまぶし梅雨の月


・民主主義死んで五輪の夏太る


・三歩引く妻の日傘子と相合い


・宵闇の雨にあの娘は夏走る


・七月や果てて革靴擦り減りぬ


・七夕や四合瓶空いて独り


・水無月に並ぶ蟻ん子コミュニズム


・夏風や一夜あなたと語る床


・夏風やロックの後に流れけり


・感情をクラウドに借る納涼会


・苔のむす墓は真夏と蝉時雨


・手の中の銀河惑星五月雨す


・落語聞く風邪の床の間走り梅雨


・未来という真実という陽炎


・空梅雨のごと彼/彼女/トランス


・旅人のバラの花束枯れにけり


・空梅雨よあの娘の傘を待ちてもう


・空梅雨や君との傘が傘立てに


・ラブレター読みて二杯のアイスティー


・水田跳ねる跳ねるパラソル蛙


・「正義」とて夏のテキ屋すBLM


・血塗れの「正義」が世論の旱かな


・ヤジに船漕ぎたる夏の会期末


・通帳ばかり吐くATM梅雨曇


・だんまりの仏壇語った冷酒


・梅雨冷えに愛想笑いの歌舞伎町


・運動会黴びた部屋へと歓声


・短夜や笛吹き男のあとの街


・十七歳思い出し行く梅雨空


・村雨や相合い傘の時くれず


・あの娘の寝癖最速で見る晩夏


・葉桜の皺を数える子守かな


・怒鳴られて明日はきっと五月晴れ


・麦酒缶並べて初の父の日よ


・風鈴が夕焼けお父の背中


・電卓を汗が叩いて蝉しぐれ


・サイコロ振る人生三歩進んで月涼し


・青髭とジャンヌ・ダルクが麦の海


・恋煩い夜風が涼し距離近し


・ごみ箱に溜まる遺書が溽暑なり


・ビアホール「乾杯」の夏は透明


・嘘つきが泣いた帰りの月涼し


・青葉そよぐ二人が去って影法師


・放課後の素足がからむ勉強会


・夢語る友は皆既月食追いて嗚呼


・スーパームーン追いて帰らぬ旅人が吾


・夏風に灰色描くサイコパス


・中ジョッキに五月雨つぐ負け戦


・五月雨や自律神経失調症


・甘夏を投げて銀河に至る自我


・夕立や小指の赤い糸の張る


・君も僕も五月雨を避けるだけの旅人


・あの娘がスマホイジりて曇る天井


・SNS黴びた心らが炎上


・新卒の夏や一人だけのただいま


・駅前に吸い殻三つある立夏


・Twitterさんざ石投げ葱坊主


・夏衣あの娘帰らぬドヤ街よ


・父となり日記めくりて雲母虫


・緊急事態宣言夏場所に枕投ぐ


・五月雨やたかが失恋顔洗う


・元カノのLINEは未読梅雨入りす


・世界が透明になりて熱帯夜


・金魚鉢飼う月逃げし午前5時


・夢枕立つ祖母もまた夏めいて


・甘夏にキスしてほどく赤リボン


・織姫や銀河の渦にラブレターほおる


・夢語る日々たかだか新緑


・春三度巡り隠したラブレター


・夏向かうそっとしまったラブレター


・吐瀉物に夢が混じる水子供養


・朝ぼらけ緑雨の音に夢結ぶ


・青岬蟹工船の墓標かな


・空き缶を積んで見た夢アゲハ蝶


・麦畑ぐで酔いの車窓に揺れ


・こどもの日母校の跡地を鬼ごっこ


・子どもの日「将来の夢」ほかしけり


・作文をほかして夢は宙ぶらりん


・書き捨てた作文諳んず子どもの日


・ヒゲ剃りで剃る夢七つ子供の日


・ビー玉を振ってあの娘が笑むラムネ


・吾子と影鬼憲法記念の日


・成人式「またね」が遠く空々し


・欠伸するテレビの中のメーデーよ


・99etc通のメール既読へと春愁


・五月雨を聞けば雨止む音がした


・二人だけ翌なき春の通学路


・真夜中の熱にうなされ知る春霖


・かきつばたビル街の遠く一輪


・線香や桜溜まりと墓の色


・かくれんぼ落花に跡がついており


・僕らの街にステップ刻む春時雨


・廃寺跡あの娘帰らぬ日送りや


・8時のネオン誘蛾灯ぞと遅春


・新曲が書けぬあの娘さ蹴る黄砂


・街灯が消えて五月が砂嵐


・送迎会ほろ酔う色は暗愚かな


・街ゆけば夢に鍵した新卒ら


・思い出に手錠をかけた夢や春

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