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8 564219

目を覚ますと、自分の部屋だった。

あれ?私、どうやって帰って来たんだろう。


帰る途中で、霊斗先輩に合って、【ひきこさん】に襲われて、それで………


思い出しただけで私の体が、ぶるりと震えた。

夢だ。きっと夢だ。私は疲れてるんだ。

時計を見ると、2時15分だった。

……………やっぱり疲れてるのよ。記憶が無いなんておかしい。


そのまま寝ようとしたら、携帯が鳴った。


…………………………誰よ、こんな時間に。

無視してそのまま寝ようとしたが、電話は一向に切れる気配がない。

いらいらした私は、誰からかかって来たかも確認せず、乱暴に電話を取った。


「はい、片桐ですけど!!」


「あ、美穂?よかった、やっと出た。本当によかったよぉ〜。」


「ちょ、どうしたのよ、香織。」


「怖かった。怖かったよぉ〜。」


「お、落ち着いて。ね?ほら、香織?どうしたの?落ち着いて、ゆっくりと話してみて?」


しばらく子供のように泣きじゃくっていたが、私が根気強く励まし続けると、香織は次第に冷静さを取り戻していった。



「……………昼間に部室でね、カルタを引いたでしょ?」


ぎくり、とした。

香織が引いたのは確か、【564219】だった。そして、霊斗先輩が引いたのは………【ひきこさん】。

昼間の、あの出来事が嫌でもフラッシュバックする。

違う。夢だ。あれは夢なのだ。


私は、無理して明るい声を出した。

「うん、引いたね!!私なんてよく分からないの引いちゃったから、何を調べていいか困っちゃってさ、あはは」


「…………ポケベルがね、あったの」


香織のその一言で、私が無理に作ろうとした明るい空気は、雲散霧消した。

「……………え?」


「昔使ってたポケベルが、私が家に帰ったら、ベッドの上に置いてあったの」


嫌な汗が、背中を流れていくのを感じる。

「き、きっとあれよ。ほら。お母さんが部屋を掃除してる時に、偶然見つけたんじゃないの?それで――」


私の虚しい想像を、香織の声があっさり打ち砕く。

「違うって!!私だって、そう思って一番に聞いたわ!!そしたら、そんなの知らないって。嘘を言ってる様子も無かった!!お父さんにも、おじいちゃんにも、おばあちゃんにも聞いたわ!!みんなみんな、全然知らないって!!」


訴えかける声が、どんどん悲痛になっていく。

私は、聞いているのが辛くなって来ていた。


「………でも」

「それだけじゃないの!!そのポケベルに、【564219】って書いてあったのよ!!」


「落ち着いて、香織」


「調べたの、私。【564219】ってどんな都市伝説なのか。そしたら。そしたら……!!」


香織は、また泣き出してしまった。

私は、どう返事すればいいか分からなかった。


ぴりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり


何の音だろう?

明らかに私の電話の着信音ではないのだが、つい癖で確認してしまう。


【通話中】という表示の上の時間は、2時22分を指していた。


「いや!!死にたくない!!いや!!!!!私が何をしたの!?何で私がこんな目にあうの!!?嫌よ!!死にたくないっ!!死にたくないのっ!!」


電話の向こうから、香織の絶叫が聞こえてくる。

その瞬間、私は悟った。

悟りたくなかったのに、悟ってしまった。


今のは、香織のポケベルの着信音なのだ。


「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


私の携帯から、香織の絶叫が響く。

私は、聞きたくなくて、両手で耳を塞いだが、それでも聞こえてしまう。


そうだ。携帯を切ればいいんだ。


ぐちゃ。ぐちゃ。


切ろうとした携帯から、何かを潰すような音が響く。


ナニ?

コノオトハナニ?


ぐちゃ、ぐちゃ、べちゃ、ぐちゃ


音は止まない。


この、音は―――


ダメダ。

コレハリカイシテハイケナイオトダ。


ぐちゃ、ねちゃ、ぐちゃ、ぼきっ、ぺちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ごくん。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」


食べられている。

香織が、食べられている。

殺されて、食べられている。


早く切ればいいのに、私の手は、ぶるぶる震えて言う事を聞いてくれない。

携帯から、男の声が聞こえる。


「お前も食ってやろうか?」


私は、またしても気絶してしまった。



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