6 ひきこさん(上)
帰り道、香織は寄る場所があると言って、どこかへ行ってしまったので、私は一人で歩いていた。
すると、電信柱の影に、霊斗先輩がいた。
正直私はびっくりしたが、すぐに気を取り直して、霊斗先輩に声を掛けてみる事にした。今日の事でちょっと聞きたい事もあるし。
「どうしたんですか?霊斗先輩?」
「な!!あ、ああ。片桐か。どうした?」
私が声を掛けると、驚いたように返事をした。ふざけているのかとも思ったが、霊斗先輩は本当に驚いたようだ。何でだろう。私が歩いてるの、見えてた筈だけど。目を閉じていた訳でもないし。
「いえ、私こっちが帰り道なんです。それで、偶然霊斗先輩を見つけたから。」
「……そうか」
そう言って、私に声を掛ける前の体勢に戻ろうとする霊斗先輩。
「ちょっと待って下さい」
「何だ?まだ何か用か?」
「……何で、あのカルタを開けるのに、あんなに反対したんですか?」
ずっと引っかかっていた事を聞いてみた。
「あれは………危ない」
またそれだ。危ない理由を教えてもらえないと、こっちも引き下がれない。
「何が危ないの?どういう風に危ないんですか!?」
「………来たか。おい片桐!!早く俺から離れろ!!」
「何がですか!!はぐらかさないで下さい!!」
「いいから!!死にたく無ければ早く離れろ!!……………くそ、わざわざ人気のない場所を選んだのに!!」
「じゃあせめてこれだけでも言って下さい。何が来たんですか?」
そう聞く私を、突き飛ばしながら、霊斗先輩は答えた。
「【ひきこさん】だ」




