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5 霊斗、香織、斉藤、そして私

部長の命令で、次は霊斗先輩が引く事になった。

何だか空気がぴりぴりして来ている。嫌な感じだ。


霊斗先輩は、あまり迷わずに一枚を選び、捲る。


「ひっ!!」

私は思わず悲鳴をもらしてしまった。


そこに書かれていたのは、つぶれた蛙の絵だった。おそらくヒキガエルだろう。

カルタの右上には、「ひ」と書かれている。


「【ひきこさん】、か。………悪趣味なオマージュだ」

霊斗先輩が呟く。


「何ですか?それ」


「簡単に言えば、口裂け女の亜種だ」

短くそう言う霊斗先輩。


もっと色々聞こうかと思ったが、

「次は私が引く!!」

という香織の声が聞こえたので、私はそちらに目を向けた。



香織が捲ったカードには、【564219】と、それだけが書かれていた。右上には【こ】と書かれている。


「何これー!!意味分からないんだけど!!」

騒いでいる香織。

が、私には意味が分かってしまった。あれは、語呂合わせで「殺しに行く」だ。

昨日調べた中に有った。確かポケベルの話だ。

どうせ後から調べれば分かってしまうのだろうけど、それを私から伝える気には何故かならず、黙っていた。



「私はどちらでもいいけど、どっちから引く?」

斉藤先輩が聞いてくる。


「あ、どうぞ、先に引いてください」

先輩を立てるって訳じゃないけど、私は先を譲った。


「そう?じゃあ……」

斉藤先輩が選んだカードには、公衆電話と、男の子が書かれていた。

男の子は、うっすらと透けているようにも見える。

この男の子が霊という事だろうか。


「これは何?霊斗」

斉藤先輩が、霊斗先輩に聞いた。今までの流れからして、それが一番早いと判断したのだろう。


「【さとるくん】だな」


「そう、ありがとう。後は自分で調べてみるわ。その方が面白いと思うし」

そう言って、斉藤先輩は、鞄の中にカードをしまいこんだ。


ついに、私の順番が回ってきた。

カルタを一枚選ぶだけなのだが、締めという事で、何故か少し緊張する。


私は、一枚を選んで捲った。

「【都市伝説の起源】?」

声に出して読んでも、やっぱり分からない。

どういう事なの?

そのカードには、白い背景に黒い文字で、ただそれだけが書かれていた。

右上に、「と」と書かれているかと思ったが、それさえ無い。

このカードはなんなのだろうか。


「トランプで言う、ババみたいなものじゃないの?」

と香織。


「あら、でも、カルタにそんな特殊な札あったかしら」

と斉藤先輩。


私は困って、霊斗先輩に聞くが、「分からない」とにべもなく返された。


「えっと、………もう一回」

部長の目を見ながら、言ってみる。


「駄目だ!!……ちょうどいい。さっき話した何とかいう本について、もっと詳しく調べて来い!!」



結局私は、【都市伝説の起源】というよく分からないカードになってしまった。



「お前たち!!!!何をしている!!!!」

私は飛び上がりそうな程びっくりした。

いや、実際に飛び上がったかもしれない。


勢いよく開いたドアを見ると、生活指導の大竹が仁王立ちしていた。


「何って、部活ですよ、先生」

部長が代表して答える。

時計を見るが、まだ5時くらいだ。怒られるような時間じゃない。


「生徒は全員帰れと、さっき放送しただろう!!」


そう言われ、部長が坂本先輩に目配せする。それを受けた坂本先輩が、放送を確認する。

「………切れてるな」


坂本先輩の言葉に頷くと、部長は大竹に向かって答えた。

「すみません、放送が切れてたみたいです。今すぐ帰ります」


「そうしろ!!次に回ってくる時に残っていたら、停学だからな!!」


次の部屋の確認にいくのだろうか、部屋を出ようとする先生に、私は慌てて尋ねた。

「先生!!何で帰らなきゃならないんですか?」


「お前たちが知る必要はない!!」

にべもなくそう言うと、大竹はドアを閉めて行ってしまった。



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