3 都市伝説カルタ
「私はあんまり調べられなかったんですけど、代わりにこんなものを持ってきました」
じゃーん、と言いながら、机の上に何かを置く香織。それが机の上に出た瞬間、霊斗先輩が、びく、と反応した。
どうしたんだろう。
気にはなったが、それより今は目の前のものが何か、だ。
何だろう、トランプ、かな?
………本人に聞くのが一番いいだろう。
「ねぇ香織。これ、何?」
「【都市伝説カルタ】だよ」
カルタらしい。
それも都市伝説の。
都市伝説って、そんなに種類があるのかな。「ん」とかどうするんだろう。
ま、見てみれば分かるか。よく見れば包装がしてある。香織もまだ開けてないらしい。
「開けてみてよ、香織。」
「そうだね。」
カルタを手に取ろうとした香織の手を、誰かの手が横から掴んだ。
「ど、どうしたんですか、霊斗先輩!!」
阻んだのは、霊斗先輩だった。
香織が驚いて手を引っ込める。霊斗先輩も手を離した。
「そのカルタ、誰からもらった?」
霊斗先輩が、焦ったように言う。
さっきから、どうしたのだろう。様子がおかしい。
「もらったんじゃないですよ、買ったんです」
「どっちでもいい、誰から買ったんだ?」
「誰って……そんなの分かりませんけど、帰り道に露天商がいたんで、珍しいなーと思って覗いてたら、これがあったから。だから、ちょうどいいと思って買ったんです」
「駄目だ。それを開けちゃ駄目だ!!」
「おい!!ちょっと落ちつけ霊斗!!どうしたんだ!!お前らしくも無い!!」
堂間部長が慌てて止める。本当にどうしたというのだろう。
「もー、大丈夫ですって。こう見えても私霊感強いんですよ?このカルタからは、特に何も感じないし、大丈夫です、って」
「あ、ちょっと」
霊斗先輩があんなに必死になっていたのがどうしても気になって、私は香織を止めようとした。
が、それよりも早く香織は包装を解き、カルタを取り出した。
思わず身構えるが、やはり何も起こらない。
爆弾でも仕掛けられているのでは、と思ったが、勘繰り過ぎだったみたいだ。
きっと霊斗先輩の勘違いか何かだろう。
霊斗先輩は、それを確認すると、それまで部長の腕を振り解こうとしていたのが嘘のように、途端に大人しくなった。
………諦めたようなその表情が、やっぱりちょっとだけ気になった。
「あれ!!何よコレ!!不良品じゃない!!」
カルタを取り出し、開いて確認していた香織が、素っ頓狂な声を出した。
「ん、どうしたの?香織さん」
と、坂本先輩が聞く。
「あ、坂本先輩、ちょっと見て下さいよコレ!!」
「どれどれ、あーこれは酷いね」
「ですよねー」
「どうしたんだ?」
もう安全と判断したのだろう。霊斗君を放すと、部長が二人に近付いた。
「見て下さい、コレ。読み札を入れ忘れてるんです!!」
私も部長の後ろから覗き込んでみる。
確かにそこには、おどろおどろしい絵札しか入っていなかった。