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漫才シリーズ

漫才「伝説のおにぎり」

作者: まさかす

ボ=ボケ

ツ=ツッコミ

二人「みなさんこんにちはー」


ボ「早速ですが」

ツ「その前にちょっと良いかな?」

ボ「何です?」

ツ「寒くない?」

ボ「私は別に寒くないですが、寒いんですか?」

ツ「いや、君が寒くないなら良いんだけどね」

ボ「そうですか。では話を戻しますね」

ツ「はい、どうぞ」

ボ「『伝説の牛乳』って知ってます?」

ツ「伝説の牛乳? 聞いた事無いですけど、北海道辺りの名物か何かですか?」

ボ「飲んでみたいですか?」

ツ「気にはなるけど、わざわざそれを飲む為に北海道まで行く気はないなぁ」

ボ「実はここにあるんです」

ツ「って、最初からずっと右手に持っていたその牛乳瓶がその伝説の牛乳とかいう奴なの? つうか何でそんな物を持ち歩いてるの?」

ボ「さあどうぞ」

ツ「いやどうぞって……」

ボ「遠慮なさらずに」

ツ「っていうかその瓶の中、どうみても液体じゃなく変な固形物だし」

ボ「水を入れれば元に戻りますよ。さあさあ遠慮なさらずに」

ツ「遠慮じゃねーよ! そんなの牛乳じゃねぇよ! つうか水を入れて液体に戻したら何かが活性し始めそうで怖いよ! そもそもどんな伝説だよ!」

ボ「よろしい。では教えて差し上げましょう」

ツ「何で上から目線なんだよ……」

ボ「それは今から50年程前の事、とある神社の境内にいつのまにか置かれたコレは、いつ誰が何の為に置いたのか不明なままにいつのまにか崇めたてまつられたが故に、いまだ誰も飲んだ事が無いという不思議な伝説です」

ツ「不思議でも何でも無いよ! それただのゴミだよ! 間違いないよ!」

ボ「まあ、飲み物だけでは何ですから、一緒にこちらは如何です?」

ツ「つうか今度は何? って、それもずっと持ち歩いてるの?」

ボ「ささどうぞ」

ツ「いやいや、まずはその灰色の角ばった少し大きめのゴルフボールみたいなのが何なのかを教えてよ」

ボ「これは『伝説のおにぎり』です」

ツ「ほー、因みに聞くけどどんな伝説?」

ボ「よろしい。では教えて差し上げましょう」

ツ「だから何で上から目線なんだよ……」

ボ「それは今から100年程前の事、とある神社の境内にいつのまにか置かれたコレは、いつ誰が何の為に置いたのか不明なままにいつのまにか崇めたてまつられたが故に、いまだ誰も食べた事が無いという不思議な伝説です」

ツ「それもただのゴミだよ! うん、間違いない!」

ボ「しかしここで新たな伝説が1つ誕生するんですよ?」

ツ「伝説が誕生する? どういう事?」

ボ「伝説の食べ物と飲み物を最初に口にした人間という伝説です」

ツ「口にした段階で病院直行だよ! でもってそんな訳の分からない物を口にした愚かな男として何千何万というネット民に嗤われるのがオチだよ!」

ボ「ではこれらを口に入れる気はないと?」

ツ「ないよ!」

ボ「伝説の人になりたくはないと?」

ツ「アホな奴としてネットに永遠に残るだけだよ! それはそれで伝説かもしれないけどね!」

ボ「そうですかぁ。残念ですが仕方ありません。では今度は――――」

ツ「もういいよ! どうせまた誰も食べた事が無いとか何とかなんでしょ! そんなの全部ゴミだよ!」

ボ「いえ、今度は飲食関係ではありません」

ツ「は?」

ボ「何だと思いますか?」

ツ「飲食ではない……う~ん、思い付かないな」

ボ「でしょうね」

ツ「そんな持ったいぶらずに教えてよ」

ボ「私達ですよ」

ツ「私達?」

ボ「今日伝説を生むんですよ」

ツ「どういう事?」

ボ「コンビ名を『伝説』にしましょう」

ツ「えらく自信過剰なコンビ名だな」

ボ「『伝説が生まれた!』って言われますよ?」

ツ「干されたら『伝説が消えた!』って言われそうだけどね」

ボ「仮にそうだとしても、数十年後辺りに『あの伝説は今!』みたいなタイトルでブレイクするかもしれませんよ?」

ツ「そんな売れ方望んで無いよ!」

ボ「それも嫌ですか? 案外保守的ですねぇ」

ツ「どっちがだよ! 今から保険を掛けておこうって方が保守的だよ!」

ボ「良い案だと思ったんですけどねぇ」

ツ「それよりもさ」

ボ「はい」

ツ「最初にちゃんと質問しなかった僕も悪いけどさ」

ボ「何でしょうか」

ツ「何で君、裸なの?」

ボ「裸? 誰の事ですか?」

ツ「君だよ。ずっとブリーフ1枚でさ。本当に寒くないの?」

ボ「ブリーフ1枚?」

ツ「うん」

ボ「あれ? ひょっとして見えていないんですか?」

ツ「何が?」

ボ「今私が着てる服」

ツ「服? いやいや、君は最初からブリーフ姿だけど」

ボ「あなたには見えてないのですか……」

ツ「ブリーフ姿の君しか見えてません」

ボ「本当に、見えませんか?」

ツ「本当に、見えないです」

ボ「そうですか……それは残念ですね……」

ツ「残念? 何がです?」

ボ「私が着ているこのスーツ、実は『伝説の漫才師』と言われた人が来ていたという『伝説のスーツ』なんです」

ツ「伝説の漫才師が着ていた伝説のスーツ? 伝説の漫才師は良いとしてさ、スーツが伝説になる意味が良く分からないけど……しかしそんな物どうやって手に入れたんですか? といっても、私には見えてませんけど」

ボ「師匠から頂きました」

ツ「ああ、私と会う随分と前の話ですね」

ボ「ええ。で、頂いたその際に聞いた話なんですけどね、このスーツはその時の持ち主が次世代を託したいと思う者に代々引き継いでいくという由緒あるスーツなんだそうです」

ツ「へぇ。じゃあ君は師匠から将来を期待されているという事ですね。スゴイじゃないですか」

ボ「その時にもう1つ聞いた話があるのですが……聞きたいですか?」

ツ「は? まあ、折角ですから聞きたいです」

ボ「……いや、やっぱり止めておきましょう」

ツ「は? 何故です? そんな勿体振らずに教えて下さいよ」

ボ「本当に聞きたいですか? ショックを受けるかもしれませんよ?」

ツ「ショック? まあ、別に構わないので仰って下さい」

ボ「分かりました……」

ツ「お願いします」

ボ「実はですね」

ツ「はい」

ボ「このスーツが見えない人は『面白くない人』だけらしいんですよ」

ツ「……」

ボ「ショックですか?」

ツ「ショック? いやショックというか……」

ボ「だってあなたはこのスーツが見えないんですよね?」

ツ「全く見えないです」

ボ「それはつまりあなたが『面白くない人』という事になる訳です」

ツ「なるほど……そういう事なら、そうなりますかね……」

ボ「それは漫才師としては致命的ですよね?」

ツ「まあ、そうなりますね……」

ボ「苦楽を共にしてきた相方にこんな結果が待っていたとは、非常に残念です」

ツ「だったらさ」

ボ「何でしょう」

ツ「そのスーツが見える人は『面白い人』って事?」

ボ「仰る通りです」

ツ「って、『裸の王様』かよ!」


2020年12月27日 初版

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